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菩提樹

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:ヴィルヘルム・ミューラー、作曲:フランツ・シューベルト
日本語詞:近藤朔風

1 泉に添いて 茂る菩提樹
  したいゆきては うまし夢見つ
  幹には彫(え)りぬ ゆかし言葉
  うれし悲しに 訪(と)いしその蔭
  訪いしその蔭

2 今日も過(よぎ)りぬ 暗き小夜中(さよなか)
  真闇(まやみ)に立ちて まなこ閉ずれば
  枝はそよぎて 語るごとし
  「来よいとし友 ここに幸あり
  ここに幸あり」

3 面(おも)をかすめて 吹く風寒く
  笠は飛べども 捨てて急ぎぬ
  はるか離(さか)りて たたずまえば
  なおもきこゆる 「ここに幸あり
  ここに幸あり」

   Der Lindenbaum

1.  Am Brunnen vor dem Tore
    da steht ein Lindenbaum;
    ich träumt' in seinem Schatten
    so manchen süssen Traum.

2.  Ich schnitt in seine Rinde
    so manches liebe Wort;
    es zog in Freud' und Leide
    zu ihm mich immer fort.

3.  Ich musst' auch heute wandern
    vorbei in tiefer Nacht,
    da hab' ich noch im Dunkel
    die Augen zugemacht.

4.  Und seine Zweige rauschten,
    als riefen sie mir zu:
    komm her zu mir, Geselle,
    hier find'st du deine Ruh' !

5.  Die kalten Winde bliesen
    mir grad' in's Angesicht,
    der Hut flog mir vom Kopfe,
    ich wendete mich nicht.

6.  Nun bin ich manche Stunde
    entfernt von jenem Ort,
    und immer hör' ich's rauschen:
    du fändest Ruhe dort !

《蛇足》 24編から成る歌曲集『冬の旅』の5番目の作品。ドイツの抒情詩人ミューラーが1823年に発表した詩集を読んで感激したシューベルトが作曲したもの。

 原詩は6聯から成り立っていますが、近藤朔風は、2聯を1聯にまとめて訳しています。
 原詩集は、恋に破れて村を出た男の放浪の旅を描いたものです。『菩提樹』を除いて、訳詞がほとんど見あたりませんが、傷心したことがある人は、機会があったら、他の詩も一度読んでみたらいかがでしょうか。心に静かにしみ込んでくるものがあります。

 菩提樹は、この木の下で釈迦が悟りを開いたと伝えられたことからついた名前で、日本には、12世紀に栄西禅師が中国からもたらしたといわれています。シナノキ科の落葉高木ですが、インドのもの、栄西が中国からもってきたもの、ヨーロッパのものは、少しずつ違うようです。

 ヨーロッパでリンデlindeと呼ばれるものは、ナツボダイジュとフユボダイジュ、およびその雑種のセイヨウシナノキを指すといわれています (上の写真)
 ヨーロッパでは、昔は、木材は楽器、木彫材などに、樹皮は繊維として紐の材料などに利用されていましたが、今では、重要な街路樹・公園樹の1つとなっています。

(二木紘三)

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コメント

近藤朔風くんから百数十年、2005年発表の斎藤晴彦超訳が面白い。

 菩提樹といえば おしゃか様だよ
 その木の下で 死んでいったよ
 猿 鳥 蛇 虫 象も来たよ
 人に混じって 空も泣いたよ

 菩提樹といえば 音楽室だよ
 校舎の隅の 暗い部屋だよ
 アップライトピアノが 黒く光る
 見上げると窓も 黒く光る

 女の先生 眼鏡かけた
 うたえ うたえと命令する

 泉に沿いて 繁る菩提樹
 なんのことやら 繁る菩提樹
 泉に沿いて それがどうした
 淡き夢見ても 眠いばかり
 いまわし 記憶

夕方クインテットのスコアさんの調子で、当人が吹き込んでいます。

投稿: ika-chan | 2008年8月13日 (水) 19時45分

音楽の授業で「菩提樹」を習ったのは中学生の時でした。
はなはだ怪しい発音ながら、ドイツ語歌詞もたしか一番だけ教わり、急に大人になったように感じてうれしかったものです。
美しい旋律と近藤朔風の格調高い日本語詞、この歌詞が歌い継がれる事を私は願っています。

投稿: nobara | 2010年7月 8日 (木) 22時07分

トラップ・ファミリー・シンガーズの物語といえば、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」が有名ですが、あまり知られていませんが、これより先に同じトラップ・ファミリーを描いたドイツ映画「菩提樹」「続菩提樹」がありました。私が高校のころ、この「菩提樹」の映画が上映され、このポスターの貼ってある映画館の前を通って学校へ通ったことを覚えています。昨年、NHK衛星テレビ映画劇場で気になっていたこの2つの映画が放映され、ようやく見ることができました。「サウンド・オブ・ミュージック」も「菩提樹」も、マリア・フォン・トラップが書いた本が原作でありながら、これらの映画を見比べてみると、主人公であるマリアとトラップ大佐、とくに大佐についての印象がずいぶん違います。「菩提樹」(と「続菩提樹」)のほうが原作に忠実に描かれているようです。いずれにせよ、「続菩提樹」には、「サウンド・オブ・ミュージック」にはない、アメリカに着いてからのトラップ・ファミリーが合唱団として成功するまでの苦労が描かれていて面白い。「サウンド・オブ・ミュージック」を見たマリア本人は本当のトラップ一家とはあまりに違って描かれているので気にいらなかったと、ウィキペディア「マリア・フォン・トラップ」には書いてあります。そのほかいろいろ興味ある話が書いてあるので、関心のある向きはぜひこのウィキペディアにアクセスしてみてください。

投稿: KeiichiKoda | 2012年4月 1日 (日) 22時50分

この曲がロイベリック主演日本語題名「菩提樹」に歌われたのかでどうか?。殆どメロディーを覚えられない音痴の小生には分らずまた覚えておりません。

ふたつぎさんが述べられていらっしゃる樹木の「菩提樹」をインド原産の‘本物‘菩提樹とするなら、最終氷河期以降、欧州に「菩提樹」は自生していません。また例えばベルリンの植物園にも若木は合っても、インドで見られるような立派な個体は無かったと思います。

シナノキ仲間を菩提樹と言うのはそろそろやめたてほしいな~とひそかに希望しています。お釈迦様にも申し訳ない気がいたします。昔の連想はミステイクでも史的な意味があり、分類史でそのまま残される場合があります。しかし菩提樹の漢字の場合は日本自生仲間とインドの樹木とがあまりにもかけ離れすぎている。

夏と冬の対比的概念で言う欧州自生の大木樹種の代表としてナラとリンデ(ンを付けるとUnter den Lindenのようにドイツ語彙。nなしだと蘭語彙)があります。それぞれに微妙な開花期ずれや葉面積の大小などの理由がありますが、何より夏と冬と言う人々の心情に訴える伝統の呼び名だから生きた生活言葉になっている…。そんな塩梅で、夏楢または冬楢あるいはナツシナノキ/フユシナノキとはっきり呼ぶように、、、と孤独一人の勝手な希望ながら、念じております。

[なおKeiichiKodaさんの御触れになった1959作サウンド・オブ・ミュージックについて拙ブログでほとんど知られない戦後ドイツエピソードを]


投稿: TangoMinato | 2012年4月 5日 (木) 17時24分

TangoMinatoさんへ
この曲「菩提樹」は、映画「菩提樹」の最後の場面で歌われています。アメリカに着いたトラップ一家が期待していた芸能プロダクションが一家のスポンサーになることをためらって、なかなかOK出さず、NYの移民・入出国管理局に足止めを食っていたとき、この「菩提樹」を合唱するのです。彼らの合唱をを聴いたプロダクション社長が感動して、トラップ・ファミリー・シンガーズのスポンサーとなる契約をして入国を許されることになるところで、映画「菩提樹」は終わるのです。映画「続菩提樹」の物語は6か月の一時滞在を認められた一家がトラップ・ファミリー・シンガーズとしてアメリカ国内をバスで演奏旅行をはじめるところから始まります。

投稿: KeiichiKoda | 2012年4月 5日 (木) 20時07分

上記のドイツ映画「菩提樹」の話への追記です。YouTubeに映画「菩提樹」でこの曲「菩提樹」が歌われる場面がアップされていました。

 http://www.youtube.com/watch?v=EB68QF1NZsk&feature=related

さらに、このURLの廻りにはこの映画からの場面・歌がたくさんアップされていますので、アクセスしてみてください。

投稿: KeiichiKoda | 2012年4月 5日 (木) 21時11分

KeiichiKodaさん、YouTubeで、懐かしい映画「菩提樹」の中のこの歌を聞きました。ご紹介ありがとうございます。
50年ほど前に観たこの映画が忘れられず、ラストの「菩提樹」をもう一度聴きたいと思っていましたが、おかげさまで願いが叶いました。

投稿: nobara | 2012年4月 8日 (日) 06時51分

KeiichiKodaさん、YouTubeご紹介心から感謝申し上げます。マリアの熟年から晩年の姿は書物やほか資料に接して知っていましたが、本物トラップ白黒フィルムに初めて接しました。またドイツ映画前後編も何十年もの昔、映画館で見て以来です。ウーン古風だなー、と思いました。記憶の中では`古風`でなかったものですから…。

オーストリア海軍大尉ゲオルグと地元ザルツブルグ生粋っ子のマリアが結婚したのは1927年。トラップ家族がイタリアからアメリカに逃げたのはアンシュルス(独による墺太利併合1938年)直後ですから、ブロードウィイのミュージカル脚本は現実と大きく異なっています。映画サウンド・オブ・ミュージックのゲオルグとマリア、長女ローズマリー(長女はこれでなく架空名だったかも)と地元青年との二つのラブストーリーも創作ロマンですね。マリア自身によると、資産家ゲオルグとの生涯は愛とほど遠く、日常の実質に徹したものだったそうです。戦後間もなく夫を亡くした彼女は`肝っ玉母さん`だったと言う印象を受けます。

余談ながら、トラップ家が去った後のザルツブルグの屋敷はハインリッヒ・ヒムラーのSS(親衛隊)のオーストリア本部に成ります。彼の部下のゲシュタポ長官ラインハルト・ハイドリッヒが地下グループに暗殺された時、この本部を核にして犯人とシンパ捜索が行われた筈。ナチ高官一人の暗殺の報復として、約三千名のオーストリア人が惨殺されました。トラップ家の屋敷は罪なきオーストリア人のための`菩提`寺になって良いのではないでしょうか。

投稿: TangoMinato | 2012年4月 9日 (月) 23時57分

TangomMinatoさん、nobaraさん

昔録画したビデオを整理していたら、2006年にNHKBSで放映された番組「サウンド・オブ・ミュージック――マリアが語る一家の物語」のビデオが出てきましたので、もう一度見てみました。なお、ここで「マリア」とは、トラップ家の二女マリアで、この番組の時92歳でした。これを見ると、TangoMinatoさんもご指摘ですが、映画「サウンドオブミュージック」は映画用のお話しに仕立て上げるために重要な事実を無視していることがわかります(映画はトラップファミリーをモデルにした物語であって、この家族を忠実に描くことを目的にしたものではないことはむろんなのですが。。。)でも以下の事実は気になります!
・マリアがトラップ大佐と結婚し、10年(1927-1938年)ぐらいザルツブルグの豪邸?で暮らしたのに、映画では新婚旅行から帰ったらすぐにザルツブルグ音楽祭に参加し、そのままオーストリアから脱出したように描かれています。
・トラップ一家は、ザルツブルグ音楽祭で優勝し有名になり、トラップファミリー聖歌隊としてヨーロッパ各地を演奏旅行し、有名だったにもかかわらずその事実が無視されています。
・オーストリアを脱出したとき映画では長女が最年長で17歳とされていますが、実際には長男(ルーペルト)が27歳、長女(アガーテ)が25歳、二女のマリアが24歳・・・と続く。さらには大佐とマリアとの間に生まれた二人の子供(ローズマリー9歳、エレオノール7歳)がいて、オーストリアからアメリカへ向かったときの子供の数は7プラス2の9人だった!そのほかに音楽を指導したフランツ・バスナー神父がいたので、アメリカではこの12人がいつも行動を共にしたのです。
・トラップファミリーを描いた映画としては、上で書きましたようにドイツ映画「菩提樹」「続菩提樹」(原題はトラップファミリー物語I,II)というのがあり、こちらのほうがトラップ家をより忠実に描いていますが、それでも事実とは違うところがたくさんあります。一つは「サウンドオブミュージック」同様、子供の年齢と数ですね。子供たちはみな10代のように見えますが、実際は上で述べた通りです。アメリカへ着いた時、マリアとトラップ大佐の間に生まれた赤ん坊を抱いていますが、実際には上で書いたように、9歳と7歳の子供が二人いるのです。

投稿: KeiichiKoda | 2013年6月18日 (火) 15時52分

KeiichiKodaさん、マリアの子どもたちについてより詳しい事実経緯、ありがとうございます。ドイツ映画トラップファミリー前・後編に主演したルート・ロイヴェリックは、さきごろ聴いたラジオトピックによりますと、とても健在だそうです。ウィリヘルム・ミューラーによる旅24詩篇中の5番目"Der Lindenbaum"とそのシューベルト旋律とは、彼女の女優人生に深く刻み込まれているのではないでしょうか。

投稿: minatoya | 2015年2月 9日 (月) 03時43分

minatoyaさん、有難うございます。
ルート・ロイヴェリックは今でも健在なんですか?といっても、彼女の映画は菩提樹、続菩提樹以外には知らないんですが。。。
ところで、2013/6/18のコメントで、トラップ家の次女マリア(Maria Franziska von Trapp)のことを書きましたが、彼女はトラップ・ファミリー・シンガーズの中で、唯一生き残っていたメンバーだった(したがって、7人の兄弟・姉妹の中で一番長生きをした)のですが、昨年の2月、99歳で亡くなりました。彼女は、サウンド・オブ・ミュージックの中では、主人公のマリアとの混同を避けるためでしょうか(?)、ルイーザの名前で登場します。なお、トラップ大佐とマリアの間に生まれた3人の息子・娘(以前に2人と書きましたが、3人が正しいようです)は、今でも健在です。
もっと詳しく知りたい方は、彼女が亡くなったときのNY Timesの死亡記事へのリンクを示しておきますので、アクセスしてみてください。

http://www.nytimes.com/2014/02/24/arts/maria-von-trapp-sound-of-music-daughter-dies-at-99.html?_r=0

投稿: KeiichiKoda | 2015年2月 9日 (月) 20時36分

KeiichiKodaさん、
ルード・ロイヴェリックは今年1月12日にミュンヘンで亡くなりました。
91歳でした。

投稿: shizu | 2016年3月 1日 (火) 01時01分

懐かしい曲です。女子高校生の時東京の音大出の先生が人気があり、ピアノの周りを取り囲みました。授業が終わっても次の授業迄の間ピアノを弾いて下さったからです。難しい曲や、珍しい曲ばかり。その先生の推薦で映画「菩提樹」を大勢で観に行くました。マリア役の女優さんがとてもきれいな女優さんでした。あらすじは忘れていましたがテレビで「見たことのあるような映画」が放映されて、高校生の時見た映画の良さを、改めて感じたのを思い出しました。後々【サウンド・オブ・ミュージック」がたびたびTVでありましたが、そのたびに過去に見たあの「菩提樹」が思い出されて、一度も真剣に観ませんでしたが・・・・・。
当時の謎と、あの映画について知りたかったこと、ほとんどを知ることが出来ました。コメント下さった方々と、二木先生に感謝致します。103歳で亡くなられた私の先生の言葉・頭に残った疑問や知りたいことは、今知り得なかっても、頭の片隅に残しておけばいつかは、知る時が来るものだからねと。信じていてよかったです!!
早速検索して、あの一家の真実を知りたいです。
映画のことですが、「菩提樹」の主人公を演じた女優さんは、私の人生で見た映画の美人女優の5本の指に入るくらいの美人で、清楚な女優さんでした。「菩提樹と続菩提樹」が見たくなりました。

投稿: mitsuko | 2016年3月 1日 (火) 02時03分

shizu様、mitsuko様
shizu様ルード・ロイヴェリックについての情報ありがとうございました。
mitsuko様、私の場合は、「菩提樹」「続菩提樹」の映画は、2012/4/1のコメントで書きましたように、NHK衛星放送(現在のBSプレミアム)で放送されたとき、はじめて見たのです(ブルーレイ録画もとってあります)。どうしても、もう一度ご覧になりたいということであれば、これらの映画のDVDを購入するのもひとつの方法かもしれません(ご存知のようにDVDはDVD再生器をお持ちでなければ、パソコンでも見ることができます)。Amazonで調べてみたら、どちらの映画のDVDも、新品でも1000円以下、中古品なら500円以下でも購入できるようです。
サウンド・オブ・ミュージックにはない、アメリカについてからの一家が、トラップ・ファミリーズ・シンガーズとして人気が出るまでの苦労話が描かれているのが面白い。ルード・ロイヴェリックが演じるマリアが、あなたは色気(セックス・アピール)が足りないといわれて、色気を出すにはどうしたらいいか、一生懸命練習する場面があったりして笑ってしまいます。

投稿: KeiichiKoda | 2016年3月 2日 (水) 10時41分

2008年8月のika-chan様
 「・・・女の先生 眼鏡かけた うたえ うたえと命令する・・・」

思わず吹き出してしまいました。中学2年の時の音楽の太った女の先生、「声はお腹から出して身体に響かせ頭のてっぺんまでいくように」と声を出してくれました。その後、生徒達は発声練習をさせられたのですが、男子生徒はヒイヒイ出していました。

 中学の時「菩提樹」を学校から観に行きました。このとき1回しか観ていませんが、後年「サウンド・オブ・ミュージック」をTVで観ました。内容が綺麗すぎて、「菩提樹」の持っている緊迫感がなく、違うなと思いました。「野バラ」も学校から観に行きました。ウイーン少年合唱団の合唱の綺麗なこと、可愛らしかったことが思い出に残っています。 

投稿: konoha | 2017年3月 4日 (土) 13時58分

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