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時の過ぎゆくままに

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞・作曲:Herman Hupfeld, 唄:Dooley Wilson ほか

      As Time Goes By

This day and age we're living in
Gives cause for apprehension
With speed and new invention
And things like fourth dimension.
Yet we get a trifle weary
With Mr. Einstein's theory.
So we must get down to earth at times
Relax relieve the tension

And no matter what the progress
Or what may yet be proved
The simple facts of life are such
They cannot be removed.

You must remember this
A kiss is just a kiss, a sigh is just a sigh.
The fundamental things apply
As time goes by.

And when two lovers woo
They still say, "I love you."
On that you can rely
No matter what the future brings
As time goes by.

Moonlight and love songs
Never out of date.
Hearts full of passion
Jealousy and hate.
Woman needs man
And man must have his mate
That no one can deny.

It's still the same old story
A fight for love and glory
A case of do or die.
The world will always welcome lovers
As time goes by.

Oh yes, the world will always welcome lovers
As time goes by.

《蛇足》 またまた『カサブランカ』を見てしまいました。場面もセリフもあらかた覚えているのに、何度見ても飽きることがありません。

 芸術映画ではなく、いうなればメロドラマにすぎないのに、何度見ても色あせないのは、構成の巧みさもさることながら、ハンフリー・ボガートの際立った個性によるものでしょう。
 名場面や名セリフがいくつも出てきますが、それについては『カスバの女』で若干触れています。

 “As Time Goes By”は、1931年上演のブロードウェイ・ミュージカル“Everybody's Welcome”のうちの1曲として作られたものです。
 何人もの歌手がレコーディングしていますが、世界的に有名になったのは、1942年公開の映画『カサブランカ』のなかで、ドゥーリー・ウィルソン
(Dooley Wilson )が歌ってからです。

 『カサブランカ』を初めて見る人、とくに若い人には、第二次大戦のうちヨーロッパ戦線の概要を知ってから見ることをお勧めします。そのほうが、細かい部分がわかりやすくなるからです。
 それはめんどうだという人のために、少し書いておきましょう。ただし、ネタバレの部分が入っていますので、それがいやな人は読まないほうがよいでしょう。

 ヒトラー支配下のドイツは、オーストリア、チェコスロヴァキアなどを併合したのち、1939年9月1日、ポーランドに侵入、それに対してイギリス、フランスが宣戦布告して第二次大戦が始まりました。
 この時点では、アメリカはまだ参戦していません。

 ドイツ軍はデンマーク、ノルウェー、オランダ、ベルギーの占領に続いて、1940年6月14日、パリを占領、フランスの中部以北の5分の3を支配下に置きました。
 残りはペタン元帥を首班として急遽編成されたフランス政府が統治しました。この政府は、その首都があった場所から、ヴィシー政府とかヴィシー政権と呼ばれます。

 ヴィシー政府は名目上は主権国家でしたが、実際にはドイツ軍のコントロール下に置かれていました。

 アメリカが参戦するのは、日本軍による真珠湾攻撃(1941年12月7日、日本時間では8日)の翌日です。
 映画『カサブランカ』は、ドイツ軍のパリ占領からアメリカ参戦までの期間が舞台になっています。

 カサブランカのあるモロッコ北東部は当時はフランスの植民地で、ヴィシー政府の統治下にありました。
 カサブランカでアメリカ人のリック
(ハンフリー・ボガート)がドイツ軍に拘束されることなく、酒場を経営できたのは、アメリカがまだドイツの敵国になっていなかったからです。

 カサブランカの警察署長ルノーは、祖国を侵略したドイツ軍を憎んでいますが、ヴィシー政府の役人として、ドイツ軍の命令には背けません。
 ルノー署長がリックとドイツ軍のシュトラッサー少佐との間で、どっちつかずの態度をとり続けるのは、ドイツへの敵愾心と現実との乖離によるものです。

 とにかく、この映画に出てくる男たちが、みんなかっこいい。リックはもちろんですが、最後にリックへの友情とフランス人としての心情のほうを選択するルノー署長も、リックの酒場の太った支配人とやせたウェイターも、ピアノ弾きのサム(ドゥーリー・ウィルソン)も、出国ヴィザの密売人ウーガーテ(ピーター・ローレ)も、それぞれに男らしくて個性的です。

 とりわけ反ナチス抵抗運動の指導者、ヴィクター・ラズロ(ポール・ヘンリード)は、「男のなかの男」といった感じ。
 妻のエルザ
(イングリッド・バーグマン)がかつてリックと恋仲だったとわかっても、責めないばかりか、問いただそうともしません。さらに、2人そろって脱出するのがむずかしくなってくると、妻だけを脱出させようとします。
 男はすべからく、かくありたいものですが、そうなれる男はあまりいないでしょう。

 ラズロのパーソナリティ構築には、汎ヨーロッパ主義を唱えて「EUの父」と呼ばれるリヒャルト・クーデンホーフ・カレルギーの経歴と思想が反映されているといわれます。
 リヒャルトの母は日本人の青山ミツで、彼のミドルネームには栄次郎という日本名が入っています。

(二木紘三)

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コメント

私も何回となく映画「カサブランカ」(1942年)を観ています。あのボギー(ハンフリー・ボガード)とイングリッド・バーグマンとの洒落たセリフのやり取りは、日本人には照れくさくて言えませんが、永遠に心に残っています。
このAs Time Goes Byを唄いたくてカラオケ喫茶に通いました。DAMにフランク・シナトラ版とペリー・コモ版がありますが、私にはシナトラ版の方が唄いやすいようです。今では画面を見ないで唄えるようになりました。
思うに、バーグマンは翌年(1943年)に「誰がために鐘はなる」でもゲーリー・クーパーと共演していますが、見事に大人と生娘の演技を使いこなしていますね。
戦時中にこのような名作を続けて制作していた米国と、戦争しても勝てるわけないと思いました。勿論日本でも映画は作られていましたが(ハワイ・マレー沖海戦」「上海陸戦隊」など・・・)国策映画でした。

投稿: 正田 和之 | 2007年12月20日 (木) 09時52分

私は残念ながら映画「カサブランカ」は見たことはないのですが、ラズロのモデルがリヒャルト・グーテンホーフ・カレルギーであるのは知っていました。お母さんの光子さんはゲラン社の香水「ミツコ」にその名がとどめられているという説があります。
今ちょうど両親がモロッコ旅行をしているところです。帰国したら現在のカサブランカの様子を聞いてみたいと思います。
ところで、例の名台詞「君の瞳に乾杯!」のときのカクテルは「シャンパン・カクテル」だそうですね。

投稿: あおば | 2008年10月12日 (日) 00時29分


 アメリカ映画「カサブランカ」は、私にとっては大事な宝物
の一つです。 理由は、私が「イングリッド・バーグマン」の
大フアンだからです。

 「バーグマン」はこの当時、スウエーデンから出てきて間
もない駆け出しの女優さんだったようですが、この映画でも
大女優になる片鱗を見せている様に思いました。

 彼女が亡くなって、今年の8月ですでに28年になります。
母国のスウエーデンでも、50歳以下の人は「イングリッド・
バーグマン」の名前を知らない人は多い、と聞いています。

投稿: かっちゃん | 2010年7月14日 (水) 12時30分

過去にごく僅かな映画しか観ていない私は、「カサブランカ」を知人に薦められ、60代になってからDVDを借りて初めて観ました。
少しの言葉で多くを言い表す巧みなセリフ、ストーリー、個性豊かな登場人物、イングリッド・バーグマンの美しさ、すべてが魅力的で、この映画が大好きになりました。その時少しだけ検索はしたはずなのですが、「時の過ぎ行くままに」については、よく分からないままでした。
その頃は、まだ二木先生のブログを知りませんでしたし……今日になってこの曲名に気付いて演奏を聴き、ご解説を拝読して感激しています。
もう一度、「カサブランカ」を観たくなりました。

投稿: 眠り草 | 2010年10月 5日 (火) 11時25分

トム・ハンクスとメグ・ライアン主演の、1993年のアメリカ映画「めぐり逢えたら」の冒頭もこの歌で始まっていますね!この「めぐり逢えたら」(原題はSleepless in Seattle)は1957年の、ケリー・グラントとデボラカー主演の名画「めぐり逢い」を下敷きにしたラブ・コメディ(あるいはパロディ?)で、映画の中にはこの曲のほかにもナットキング・コールの歌をはじめ、いくつかの名曲が流れています。パロディと書きましたが、決していいかげんな映画ではなく、アカデミー賞(歌曲賞)、ゴールデングロ―ブ賞と数々の賞に輝く名画です。邦題が原題とちがって付けられているのは、下敷きにした「めぐり逢い」との繋がりを意識したためでしょうか。

投稿: KeiichiKoda | 2013年12月 5日 (木) 18時45分

 正田和之さんはカラオケに通って覚えてしまったとのこと。えらいですねえ。私も初めて見て(前橋市でも昭和21年に上映されたと思います)以来、リフレーンが頭にこびりついて、なんとかこの曲をよく知りたいと思っていましたが、当時は調べるすべもないままに時は移り、ここでようやく宿願が叶いました。二木先生ありがとうございます。
 KeiichiKoda さんの紹介された映画「めぐり逢えたら」も見たくなりました。

投稿: dorule | 2013年12月 7日 (土) 15時17分

 この曲はジャズのスタンダードになっています。ジャズスポットでも良くリクエストされ、私も映画『カサブランカ』とともに大変好きな曲です。また映画、曲ともに後世に多くの影響を与えた作品だと思います。1982年、Bertie Higginsは『Casablanca』という曲を米国でヒットさせ、日本では郷ひろみがこの曲を『哀愁のカサブランカ』という邦題でヒットさせました。また沢田研二は『時の過ぎ行くままに』という歌をやはりヒットさせました。
 As time goes byは“時が経つにつれて”という意味ですが、この曲の歌詞では“時が流れても(時代は変わろうとも)”という意味合いで用いられています。一方Bertie Higginsの『Casablanca』の歌詞では“時が経つにつれて”であり、沢田研二の『時の過ぎ行くままに』はまさにそのままの意味合いです。英語は文法も表現法も単純で、同じ単語・熟語にも様々な意味があります。しかし単純だからこそ国際語になれたのかも知れません。
 映画『カサブランカ』では、確か映画の最初に地球儀が出て来て、簡単な時代背景が語られていたはずです。しかし、それだけでは何故北アフリカが舞台になったのか、我々日本人にはピンと来ません。ゲイーリー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒ主演の映画『モロッコ』も北アフリカが舞台ですが、こちらは第2次世界大戦勃発前に制作されています。この辺りはヨーロッパの強国の利権が交差する地であったという歴史的背景が、しばしば映画の舞台として選ばれた所以だと思います。

投稿: Yoshi | 2013年12月 9日 (月) 09時47分

「時の過ぎゆくまま」のように「映画」の中で有名になり、ジャズのスタンダード・ナンバーとなった曲はたくさんありますね。ちょっと思い出すだけでも、「オズの魔法使い」の中の「虹の彼方に」とか、「三文オペラ」の中の「マック・ザ・ナイフ」もそうです。これらの曲についても、いつか二木先生に解説していただく機会があれば嬉しいと思っています。
「時の過ぎゆくまま」といえば、現在NHKテレビで放送中のドラマ「太陽の罠」でもこの歌が重要な役割を演じていますね。

投稿: KeiichiKoda | 2013年12月10日 (火) 08時37分

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