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終着駅

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:千家和也、作曲:浜 圭介、唄:奥村チヨ

落葉の舞い散る 停車場(ば)
悲しい女の 吹きだまり
だから今日もひとり 明日(あす)もひとり
涙を捨てにくる

真冬に裸足(はだし)は 冷たかろう
大きな荷物は 重たかろう
なのに今日もひとり 明日もひとり
過去から 逃げてくる
一度離したら 二度とつかめない
愛という名のあたたかい 心の鍵は
最終列車が 着く度(たび)
よくにた女が 降りてくる
そして今日もひとり 明日もひとり
過去から 逃げてくる

       (間奏)

肩抱く夜風の なぐさめは
忘れる努力の 邪魔になる
だから今日もひとり 明日もひとり
過去から 逃げてくる
一度離したら 二度とつかめない
愛という名のあたたかい 心の鍵は
最終列車が 着く度に
よくにた女が 降りてくる
そして今日もひとり 明日もひとり
過去から 逃げてくる

そして今日もひとり 明日もひとり
過去から 逃げてくる

《蛇足》 昭和46年(1971)12月25日に発売。

 奥村チヨは、昭和44年(1969)の『恋の奴隷』を筆頭に、『恋狂い』『恋泥棒』と、女性の官能を赤裸々に歌った曲が続けざまにヒットしたため、そのコケティッシュな容姿と相まって、お色気歌手のイメージが定着してしまいました。
 しかし、彼女自身はそのたぐいの歌は好きではなかったし、ほんとうの自分は、世間のイメージとはまるで違うと思っていた、と語っています。

 昭和46年末、奥村チヨは1枚の楽譜をレコード会社の社員から見せられました。それを見たとたん、彼女は「ああ、私がほんとうに歌いたかった曲にやっとめぐり会えた」と感じたそうです。
 それが、作曲家としてなかなか芽の出なかった浜圭介が乾坤一擲の思いで書いた『終着駅』でした。

 その年の12月20日に発売された『終着駅』は、年が明けてから爆発的に売れ出し、最終的には100万枚を超す大ヒットとなりました。
 のちに、奥村チヨは浜圭介と結婚、芸能界から退きました。
 浜圭介は『終着駅』に続いて、『そして、神戸』『雨』『石狩挽歌』『舟唄』『雨の慕情』『哀しみ本線日本海』『すずめの涙』『心凍らせて』など、次々とヒットを飛ばすことになります。

 さて、終着駅ですが、ここで歌われているのは、東京なら新宿や上野、パリなら東駅や北駅、ローマならテルミニ駅といった大都市のターミナル駅ではないと思います。
 その逆、すなわち幹線からローカル線に2度か3度乗り換えて、もうその先に線路はないという終点の小駅でしょう。
 駅舎は廃駅と見まがうほど古くて小さく、薄暗い電灯の下で、年老いた駅員が、ほとんど降りてこない乗客を待っています。もしかしたら、無人駅かもしれません。

 駅前に狭い広場があるものの、バスもタクシーも止まっていません。広場から続く道の両側には、軒の低い家が数軒まばらに立っているだけ。初冬の冷たい風が道ばたに積もった枯葉を時おり舞い上げるという、わびしい光景です。

 この終着駅はもちろん、比喩としての終着駅であり、現実の場所を指しているわけではありません。しかし、歌っている人の脳裏には、このような光景が浮かんでいるのではないでしょうか。

 そんなわびしく暗い光景の中に、毎夜、「過去から逃れた女」が、1人か2人ずつ降りてくる。その過去は1人ひとり違うともいえるし、みんな似ているともいえます。
 降りては来たものの、乗り物はないし、あったとしても、ゆく場所がありません。女たちの多くは、ここをそれまでの人生の終点とするつもりで、過去から逃げてきたのでしょう。

 しかし、その気になれば、旅は続けられます。夜が明ければ乗り物が見つかるかもしれないし、見つからなくても、歩くことはできます。元の列車に乗って、別の方向へ向かうという手もあります。
 いずれの場合も、過去からもってきた「重い荷物」は捨てなくてはなりません。それを抱えたままでは、新しい旅は始められません。

(二木紘三)

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コメント

落葉の舞い散る停車場・・・・・・着眼点が良いですね。それと奥村チヨの歌い方がこの曲に向いてる。

投稿: M.U | 2008年9月11日 (木) 06時40分

昭和47年といえば子育てに夢中の頃で、歌は頭の上を素通りしていたようです。
いま、何度も練習してお蔭様で歌えるようになりました。嬉しい!

投稿: 高木ひろ子 | 2008年9月23日 (火) 19時18分

落葉の舞い散る停車場に降り立った女性達も今や還暦
ですが、幸せに成れたのでしょうか。先生の名解説を
よんで、ふとそう思いました。

投稿: 海道 | 2009年4月23日 (木) 18時44分

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