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また君に恋してる

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:松井五郎、作曲:森 正明、唄:ビリー・バンバン/坂本冬美

1 朝露が招く 光を浴びて
  はじめてのように ふれる頬
  てのひらに伝う 君の寝息に
  過ぎてきた時が 報われる
  いつか風が 散らした花も
  季節巡り 色をつけるよ
  また君に恋してる いままでよりも深く
  まだ君を好きになれる 心から

2 若かっただけで 許された罪
  残った傷にも 陽がにじむ
  幸せの意味に 戸惑うときも
  ふたりは気持ちを つないでた
  いつか雨に 失くした空も
  涙ふけば 虹も架かるよ
  また君に恋してる いままでよりも深く
  まだ君を好きになれる 心から

  また君に恋してる いままでよりも深く
  まだ君を好きになれる 心から

《蛇足》 三和酒類(株)の麦焼酎「いいちこ」のCMソングとして作られたことは有名。平成19年(2007)に複数のミュージシャンによるコンペ方式で選考され、ビリー・バンバンのバックバンドでギターを担当している森正明の曲が選ばれました。
 歌詞は、安全地帯や氷室京介、工藤静香などに作品を提供している松井五郎。

 同年11月7日にビリー・バンバンの歌で発売。坂本冬美やエリック・マーティンなどがカバーしています。演歌歌手なのに、演歌っぽさを抑えた坂本冬美の歌唱に好感がもてます。

 タイトルや歌詞からすると、恋している若者がそれまでにも増して深く恋するようになったことを表現した歌とも、何かの事情で一時疎遠になった相手との恋が甦ったことを歌ったものともとれます。2番に罪とか傷といった言葉があることから考えると、後者のような気がします。

 この歌は若い男女の恋を描いたものでしょうが、私は年配の夫婦の愛の復活を描いた物語を思い出しました。それは、高校時代に読んだ『遅咲きの薔薇(Späte Rosen)』です。ドイツの作家T.シュトルムの作品で、短編というより掌編といったほうがよい短い小説です。

 私の出身高校は新制高校ですが、英語の成績が一定以上であることを条件に2年次から第一外国語としてドイツ語をとることができました。この制度は、私が卒業してから数年後、ドイツ語の先生が定年退官したためになくなりました。

 ドイツ語を始めてから1年後、やっと初級を終えたころ、古本屋で買ったレクラム文庫で読んだのが’Späte Rosen’でした。レクラム文庫は岩波が文庫を創刊するに当たって範としたことで知られます。

 1ページにつき10数回も辞書を引きながら四苦八苦して読んだのですが、授業以外で初めて独力で読んだ小説なので、とりわけ強く印象に刻まれています。
 それは簡単にいうと、こんな話です。

 20年ぶりに青春時代の友人を訪ねた「私」は、友人夫妻の間で交わされる、まるで若い恋人同士のような交流を不思議に思います。それは、たとえばこんなふうです(関泰祐訳)

 彼女がさっぱりと身繕いして、朝食に広間へ入ってくると、彼女の眼は先ず良人を求め、良人の眼に「これでいいこと?」とひそかに尋ねる。すると一瞬彼の額から深い皺が消えて、彼は差し出された手を、今はじめて与えられたもののように取るのだった。
 (中略)
 ……そういって彼はちらと細君の方を見たが、その眼差しには、つい近頃恋びとを得たばかりのような所有の歓びと情愛の力とがこもっていた。

 友人と話しているうちに、「私」はそのいきさつを知ることになります。彼は美しい少女を愛して結婚するのですが、その後ビジネスに集中するあまり、妻を顧みる時間がなくなります。

 そのあいだに、僕のそばの美しい若々しい妻は、次第に色あせていった。僕にはそれが見えなかった。彼女の愛らしい面立ちがいつしかその軟らかな青春の輪郭を失い、彼女の金髪の絹のような光沢が次第に消えてゆくのが僕の眼には入らなかった。

 やがて彼はビジネスに成功し、生活にゆとりが出てきたころ、あることをきっかけに彼女への恋が復活するのです。友人は話の締めくくりに、次のように語ります。

「こうして僕も恋の盃から飲んだのだ、深い、心からの一飲みを。余りに遅く――いや、しかし遅過ぎはしなかったのだ!」

 10数年を経て甦った恋――味わってみたいものです。

 ドイツ語は結局ものになりませんでした。語学は特別に才能のある人は別にして、それを必要とする環境にいなければ消えていくようです。今では辞書があれば何とか意味がとれる程度。

(二木紘三)

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コメント

63歳の富士山麓に住む爺です。62歳の春に気分障害で役職を退き、暇を持余しパソコンで遊ぶ毎日。若い時に耳にした「白いぶらんこ」=ビリー・バンバン声に艶が増して素晴らしい。 坂本冬美の澄んだ声、焼酎の透明感のように。 グラスの中で氷と遊ぶ焼酎。
うーん!! 今夜も美味しいねって、囁きながら体に沁みていく。  記載していただいた本訳、感性の違いでしょうか? 私には、理解しにくいな。
若い時には、ツルゲーネフ、ヘルマン・ヘッセを読んでいたのが何か懐かしく思いました。
有難う御座います。

投稿: 苅田 治雄 | 2011年5月13日 (金) 17時26分

この歌は男性が作った歌だなあと思います。ロマンチックに聴こえますが、「誰のおかげでメシが食える」「三食昼寝付き」「男が遊んで何が悪い」こんな事を結婚以来何十年も言われたあげく年老いて「お前が一番」なんて言われても、「何を今更」と妻の心は夫にはありません。捨てられないから面倒みていると言ったお婆ちゃんがいました。全部とは言いませんが思い当たるご主人様いらっしゃいませんか。色あせるのは男性のほうが早いのです。この歌は男女が逆で丁度いいのではないでしょうか。

投稿: ハコベの花 | 2011年5月25日 (水) 23時19分

私は今年「古希」を迎え、妻は3歳年下の夫婦です。
結婚して(見合い)退職するまでの間大過なく四十余年過ごして来たが、妻の余りにも才覚のなさに(不器用、料理下手、気が利かない、掃除は雑・・・)何時も私は馬鹿だチョンダとブツブツ文句ばかり言っていました。
退職し数年経った頃から、妻の小さな優しさや思いやりに私は急に気が付きました。
掃除や料理など如何でも良い事だと、そうだったんです妻は「偉い」私が馬鹿でチョンで、妻はズット偉い事に気が付きました。
今私は正にこの歌詞通りの気持ちです!
文章を読み直すと余りにも稚拙で恥ずかしいが、この気持ちが分かって頂けたらと思います。
そうです、誓って言えます、40余年たって妻に又恋しています

投稿: 妻命 | 2011年6月 7日 (火) 19時28分

妻命様 奥様がお元気なうちに妻の大切さに気づかれて良かったですね。先日タクシーに乗ったら60台の運転手さんが「女房が突然亡くなってしまったので、ご飯の炊き方も、味噌汁の作り方も、どこに何があるのかもわからず、毎日途方にくれている」と話していました。どうぞ、お元気なうちに妻の家事労働の大変さを分かってあげてください。「仲良き事は美しきかな」と武者小路さんが昔書いておられましたね。お幸せにお過ごし下さいますように願っております。

投稿: ハコベの花 | 2011年6月 8日 (水) 23時50分

ハコベの花様
人によっては歯の浮く様な内容と取られかねない投稿でした、ハコベの花様は妻命の正直な気持ちを真摯に受け止めて下さり、誠に有難う御座います。

実はこんな投稿は恥ずかしくて暫く開いて見れませんでした、言葉が悪いですがヤラセの様に思われるかとも考えました。

しかし妻命の真意を理解して頂けた方が、現にいらした事は大変に嬉しい事でした!重ねて御礼申し上げます。

投稿: 妻命 | 2011年6月20日 (月) 18時28分

 今年の1/15校区福祉委員会主催『新春コンサート』(私:テナーサックス)でこの歌のアンコールがあり、オカリナ教室では女性軍の希望で9月からこの曲の練習を始めています。坂本冬美が紅白で2年連続で歌い人気のようですが、歌の内容は不倫の歌と思っていました。しかし《蛇足》で奥の深い歌だとあらためて知りました。
 2月から私も妻命さんと同じ古希を迎えましたが、3歳上の妻は「順番から言えば私が先に死ぬから今の内に料理だけは出来るように・・・」と3月から朝食と昼食の作り方の指導を受けて現在は私が作っていますが、けっこう美味しく作るので食べ過ぎてやや太り気味にて、これから秋にかけて食欲が出ないよう不味く作ろうと思っていますが・・・。
掃除は卒業し来年からは洗濯の指導とのこと、とほほ・・・・・。
 しかし私の多趣味・道楽(?)については寛大で感謝しています。

投稿: 尾谷光紀 | 2011年9月11日 (日) 23時10分

まさかこの歌とSpäte Rosenが結びつくとは夢にも思いもしませんでした。でも、さすが二木先生です、よく考えてみると、シュトルムの『遅咲きの薔薇』を私たち日本人が読むとこの歌のようにもなるのですね。
このような時代だからこそ、ただの愛妻物語ではない作品です。ここに何人かの方が書き込まれていられるように、さまざまなことを経た後、妻への思いを確かなものにする話で、今一度人生を振り返ってみるきっかけになることと思います。

投稿: N.N | 2011年9月27日 (火) 20時02分

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