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黒い瞳よ今いずこ

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞・作曲:堀内敬三、唄:天野喜久代

黒い瞳よ 今いずこ
君を思えば 胸はもえて
夢にうつつに 仰ぎみる
愛の珠玉の かの瞳

黒い瞳の 思い出は
心残して 別れた宵
霧のちまたに 泣き濡れた
夜の神秘の かの瞳

楽しき恋は 過去となれど
心はなおも 君を懐(おも)

黒い瞳よ 今いずこ
砕け果てたる 我が心に
求め慕うは 限りなき
恋の生命(いのち)の かの瞳

     (演奏)

《蛇足》 昭和4年(1929)3月に発表され、浅草オペラなどで歌手・女優として活躍した天野喜久代が歌いました。同時期に、やはり浅草オペラのスターだった二村(ふたむら)定一も歌いました。近年では森昌子がカバーしています。

 堀内敬三はロシア民謡『黒い目(黒い瞳)』に日本語詞をつけており、その続編のようなつもりでこの曲を作ったのではないかと思われます。
 『黒い目(黒い瞳)』には、ロマ音楽の影響がかなり表れています。この曲にもそれが多少感じられますが、途中に長調が挟まっているのが印象的です

 『黒い目(黒い瞳)』もこの曲も、黒い瞳の女性への恋心がテーマになっています。ロシアには、ほかにも黒い瞳の女性や男性を恋い慕う曲がいくつもあります。
 中高緯度地域に住むコーカソイドの間では青い目や薄茶色の目多数派なので、黒い瞳にエキゾチシズムを感じ、それが恋心につながりやすかったのでしょう。人の移動が盛んになった現代では、どこの国でも青い目も黒い目もとりたてて珍しくはなくなっていますが。

 堀内敬三といえば、"ラジオの時代"に育った者の頭にまず浮かぶのはNHK第一放送の『話の泉』。わが国で初めてのクイズ番組で、昭和21年(1946)12月3日に始まり、同39年(1964)3月31日まで約18年にわたり放送されました。『とんち教室』『私は誰でしょう』『三つの歌』などとともに、テレビが普及し始める昭和30年代半ばまで、夜の茶の間の人気番組でした。

 『話の泉』はクイズ番組というより、クイズ形式の雑学番組というほうが当たっています。堀内敬三、サトウ・ハチロー、徳川夢声、渡辺紳一郎、山本嘉次郎、大田黒元雄、春山行夫といった当時の知識人・著名人たちが蘊蓄を披露し、聴いている人たちを感心させました。
 なかでも堀内敬三の博学多識ぶりは際立っており、共演者の徳川夢声が「彼のモノ知りは非常に本格的である」と讃えたといいます。

 また、同じくNHK第一放送で昭和24年(1949)に始まった『音楽の泉』の初代進行役兼解説者として堀内敬三を記憶している人も多いでしょう。クラシック音楽の専門番組で、現在も続いています。

 なお、堀内敬三は慶應義塾大学応援歌『若き血』の作詞・作曲者であり、また音楽之友社の前身・日本音楽雑誌株式会社の創設者でもあります。

(二木紘三)

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