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なつかしの歌声

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:西條八十、作曲:古賀政男、唄:藤山一郎・二葉あき子

(男)
 銀座の街 きょうも暮れて
 赤き灯(ひ)燃ゆ 恋し東京
 恋し東京
 あの窓あの小道 やさしの柳
 あこがれは悲しき 乙女の涙
 風よ運べよ いとしの君へ

(女)
 歎きの途(みち) ひとり行けば
 みどりの樹に 鳥はうたう
 鳥はうたう
 やさしく寄り添いし 姿よいずこ
 おもい出の窓辺に わすれな草が
 風に泣いてる 昨日も今日も

(男女)
 夕焼け空 君とながめ
 うたいし歌 たのしメロディー
 たのしメロディー
 うたえば涙ぐみ こころはむせぶ
 落葉ちる朝(あした)に 雪ふる宵に
 呼ぶよこの歌 返らぬ涙

《蛇足》 昭和15年(1940)2月21日公開の東宝映画『春よいづこ』(渡辺邦男監督)の挿入として作られ、同年4月にコロムビアからレコードが発売されました。
 主題歌は同じ作詞者・作曲者・歌手による映画と同名の『春よいづこ』でしたが、レコードは『なつかしの歌声』のほうがよく売れました。

 『春よいづこ』が歌詞・曲ともセンチメンタルなのに対して、『なつかしの歌声』は、歌詞は感傷的なものの、曲はハイテンポで明るいのが特徴です。そのへんが好まれたのかもしれません。
  『なつかしの歌声』は、前奏・間奏・後奏とも長い曲ですが、レコードでは間奏と後奏が少し端折られています。

 『春よいづこ』は川口松太郎の小説を映画化したもの。この小説は、昭和12年(1937)公開のフランス映画『美しき青春』(J.B.レヴィ、M.エプスタン共同監督)の翻案作品です。
 映画では主人公を藤山一郎、その恋人を宝塚少女歌劇団で娘役のトップスターから映画界に転じていた霧立
のぼるが務めました。粗筋はごく簡単にいうと次のとおり。

 ある村の老医師の息子は大好きな音楽の道に進むか、父の希望に従って医療の分野に進むかで悩んでいます。そんな息子に老父は自分が末期ガンであると告げて、医院の跡を継いでほしいと説得します。
 息子は思い悩んだあげく、ある晩『春よいづこ』と題する作品を創ったあと、父の要望に従うことを決意します。
 映画は、
早春の氷雨の降る道を彼を支え続けた恋人と相合い傘で歩いていくシーンで終わります。

 『美しき青春』は原題が"Helene(エレーヌ)"であることからもわかるように、主人公は女性です。エレーヌとその恋人はともに医科大学で学んでいますが、恋人は医学と音楽の二者択一で悩んだ末に自殺してしまいます。
 彼の子を産んだエレーヌはさらに勉強を続け、学位を得ます。そして、妻に去られて研究への意欲を失っていた恩師と結ばれ、医学の道を進む
……というストーリーです。

 『春よいづこ』と『美しき青春』は、音楽と医学の狭間で悩むという点が共通しているだけで、あとはかなり違いますね。

(上の写真は昭和8年〈1933〉の銀座通り)。

(二木紘三)

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コメント

 ブログに取り上げて頂きありがとうございます。
 助手席に亡妻を伴って富士山麓の山小屋への帰りの高速道路、眠気覚ましに何度でも繰り返し歌ったのが「国境の町」とこの「なつかしの歌声」でした。明るいセンチメンタリズムが好きでした。勤めていた頃、たまにカラオケに誘われたりすると、私の数少ない持ち歌ぐらいはどこのアルバムにも必ずあるのに、なぜかこの歌はいつも入っていないのでした。映画は日本のもフランスのも観ていませんが、DVDはおそらくないでしょうね。

投稿: dorule | 2013年3月 4日 (月) 21時20分

なんと懐かしい歌を取り入れてくださり感謝。戦時中軍需工場へ動員されていた時、友人がハーモニカで聞かせてくれて初めて耳にした曲です。戦後になって古賀政男がアメリカから帰り、コロムビアへ復帰した時の「誰か故郷を思わざる」に続くヒット曲と知りました。暗い世代によくもこんな明るく、楽しい曲が・・と思いました。まさに「アメリカ土産」ですね。晩年二葉あき子が「初恋の人だった」と言う藤山一郎と弾むような声で楽しそうに唄っているのが印象的です。                     85歳のオールドフアン

投稿: オールドフアン | 2013年3月 5日 (火) 16時45分

戦後生まれの私にとっては、昭和40年代のテレビ番組でのかすかな記憶しかありませんでしたが、特徴的な伴奏やメロディーだけは良い曲と思っていたものです。
何年か前に大川栄策のライブで聞かされて、改めて古賀政男・西條八十コンビの素晴らしさに感じ入ったものです。
大川栄策は古賀り直弟子だけに、「あこがれは悲しき乙女の涙」の部分でオトメの半音の所が忠実に歌われていて、原曲藤山一郎等々より、良い印象をもちました。

投稿: 山ちゃん | 2017年6月17日 (土) 22時17分

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