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2020年11月20日 (金)

谷間に三つの鐘が鳴る

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞・作曲:ジャン・ヴィヤール、英語詞:ベルト・ライスフェルト、日本語詞:不詳

1 谷間の奥深く 忘れられし村に
  朝靄の中 産声が聞こえる
  新しい命の 誕生を祝って
  人びとはみな 祈りを捧げる

   鐘は鳴る鳴るよ こだまと響き
   かわいい赤ちゃんの 門出を告げる
   山から山へと 谷から谷へと
   元気に育てと 願いを込めて
   鐘は今鳴る

2 谷間の奥深く 忘れられし村に
  陽の光浴びて 歌声が聞こえる
  新しい夫婦の 誕生を祝って
  人びとはみな 酒を酌み交わす

   鐘は鳴る鳴るよ こだまと響き
   若い二人の 門出を告げる
   山から山へと 谷から谷へと
   永久(とわ)に幸あれと 願いを込めて
   鐘は今鳴る

3 谷間の奥深く 忘れられし村に
  青い月の空 讃美歌が聞こえる
  今燃え尽きた 命を惜しんで
  人びとはみな 祈りを捧げる

   鐘は鳴る鳴るよ こだまと響き
   長い人生に 別れを告げる
   山から山へと 谷から谷へと
   天にも届けと 願いを込めて
   鐘は今鳴る

   The Three Bells

1. There's a village, hidden deep in the valley
    Among the pine trees, half forlorn
    And there, on a sunny morning
    Little Jimmy Brown was born

All the chapel bells were ringing
In the little valley town
And the song that they were singing
Was for baby Jimmy Brown
Then the little congregation
Prayed for guidance from above
"Lead us not into temptation
Bless this hour of meditation
Guide him with eternal love."

2. There's a village, hidden deep in the valley
    Beneath the mountains high above
    And there, twenty years thereafter
    Jimmy was to meet his love

All the chapel bells were ringing
'Twas a great day in his life
'Cause the song that they were singing
Was for Jimmy and his wife
Then the little congregation
Prayed for guidance from above
"Lead us not into temptation
Bless, oh Lord, this celebration
May their lives be filled with love."

3. From the village, hidden deep in the valley
    One rainy morning dark and gray
    A soul winged its way to Heaven
    Jimmy Brown had passed away

Just a lonely bell was ringing
In the little valley town
'Twas farewell that it was singing
To our dear old Jimmy Brown
And the little congregation
Prayed for guidance from above
"Lead us not into temptation
May his soul find the salvation
Of thy great eternal love."

  Les Trois Cloches

1. Village au fond de la vallée,
    Comme égaré, presque ignoré
    Voici dans la nuit étoilée
    Qu’un nouveau né nous est donné
    Jean François Nicot il se nomme
    Il est joufflu, tendre et rosé
    A l’église beau petite homme,
    Demain tu seras baptisé.

Une cloche sonne, sonne,
Sa voix d’écho en écho,
Dit au monde qui s’étonne :
C’est pour Jean-François Nicot.
C’est pour accueillir une âme,
Une fleur qui s’ouvre au jour
A peine à peine une flamme,
Encore faible qui réclame
Protection, tendresse, amour”

2. Village au fond de la vallée,
    Loin des chemins, loin des humains,
    Voici qu’après dix-neuf années,
    Coeur en émoi, le Jean-François
    Prend pour femme la douce Elise,
    Blanche comme fleur de pommier.
    Devant Dieu dans la vieille église
    Ce jour ils se sont mariés

Toutes les cloches sonnent, sonnent,
Leurs voix d’écho en écho
Merveilleusement couronnent
La noce à François Nicot
“Un seul coeur une seule âme”,
Dit le prêtre” et pour toujours
Soyez une pure flamme
Qui s’élève et qui proclame
La grandeur de votre amour”.

3. Village au fond de la vallée,
    Des jours, des nuits, le temps a fuit
    Voici qu’en la nuit étoilée
    Un coeur s’endort, François est mort,
    Car toute chair est comme l’herbe ,
    Elle est comme la fleur des champs,
    Epis, fruits murs, bouquets et gerbes,
    Hélas tout va se desséchant…

Une cloche sonne, sonne,
Elle chante dans le vent
Obsédente et monotone,
Elle redit aux vivants
“Ne tremblez pas coeurs fidèles
Dieu vous fera signe un jour,
Vous trouverez sous son aile,
vec la vie éternelle,
L’éternité de l’amour”.

《蛇足》 英語版"The Three Bells"の原曲は、シャンソン"Les Trois Cloches" なので、そちらを先に見てみましょう。

 英語版も原曲も『三つの鐘』というシンプルなタイトルですが、日本語版では『谷間に三つの鐘が鳴る』となっており、どんな場所が舞台かすぐわかるようになっています。
 なお、mp3はブラウンズ版の英語詞に合わせて作りました。

 作詞・作曲は、スイス人のジャン・ヴィヤール(Jean Villard 1895–1982)。フランスを主舞台として、作詞・作曲家、シャンソン歌手、コメディアン、作家として活躍した多才な人物です。
 一時期、デュオ「ジルとジュリアン
(Gilles et Julien)としても活動したので、ジルと呼ばれることもあります。

 "Les Trois Cloches"は、1939年9月18日にスイスのラジオ・ローザンヌで放送されたのが初演。翌年、ヴィヤールと親交のあったエディット・ピアフ(『バラ色の人生』参照)が、ローザンヌのキャバレーで歌ってから、彼女の持ち歌になりました。

 彼女は、1945年から翌年にかけて、ヴォーカル・グループ「レ・コンパニオン・ドゥ・ラ・シャンソン」(Les Compagnons de la chanson 「歌仲間」の意)とともにアメリカ・ツアーを行いました。
 その折のレパートリーに"Les Trois Cloches" も入っていましたが、とりたてて評判にはなりませんでした。レコードが発売されていなかったせいもありますが、いちばんの原因はフランス語で歌ったことでしょう。
 アメリカ人は、外国の歌・映画・演劇でも英語で話し、歌うのがあたりまえと思う傾向がとくに強いので。

 1959年に英語版のレコードが発売されたことにより、アメリカにおける状況は劇的に変わりました。
 歌ったのは、ブラウン家の3兄妹、長男ジム・エド、長女マクシーン、次女ボニーから成る「ブラウンズ」。
 フランスではすでにヒットしていた"Les Trois Cloches" は、このレコード"The Three Bells" によって、英語圏全体に広まりました。

 英語版の作詞者は、オーストリア人のベルト・ライスフェルト(Bert〈本名はBerthold〉 Reisfeld 19061991)。ライスフェルトは語学が堪能で、英語でオリジナルの作詞を行ったほか、フランスやドイツのヒット曲を英語にしたり、その逆の作詞を行ったりしました。

 原曲と英語版では、多少表現は違うものの、内容は同じです。谷間の小さな村で、ジャン・フランソワ・ニコ(英語版ではジミー・ブラウン)という男の子が生まれ、やがて恋をして結婚し、老いて亡くなるという、ごく一般的な人生が描かれています。
 「三つの鐘」は、誰かの誕生・結婚・終焉の際に鳴らされる教会の鐘
であると同時に、人生の最重要な3つの節目を象徴する言葉でもあります。

 ところで、楽譜・歌集のなかには、作詞・作曲者として、マルク・エラン(Marc Herrand 1925–1995)を併記しているものがあります。これは、"Les Trois Cloches/The Three Bells" の大ヒットに、マルク・エランによるアレンジが大きな役割を果たしたことによります。
 マルク・エランは、「レ・コンパニオン・ドゥ・ラ・シャンソン」の創設者の一人であり、最初の音楽ディレクターでした。のちに、指揮者、作曲家、歌手として活躍します。

 "Les Trois Cloches/The Three Bells"を聞いて、讃美歌のようだと感じた人は多いと思います。とくに、各聯前半の詠唱風コラールが、そうした印象を強めています。
 コラールは、もともとルター派教会で全会衆によって歌われる讃美歌でしたが、現代では、それと同様の形式や類似した性格の作品も、そう呼ばれるようになっています。
 こうした曲調が、フランス人やアメリカ人の宗教心にアピールしたのでしょう。

 "Les Trois Cloches"が大ヒットしてから、その舞台は、ジュラ山地のなかの袋谷にあるボーム・レ・メシュー(Baume-le-Messieurs…上の写真)という小村だという伝説が生まれました。ジュラ山地は、フランス・スイス国境のフランス側にある山地で、ジュラ紀の語源となった場所です。

 この伝説が生まれたのは、ベルナール・レショという人物がエッセイに、「ジャン・ヴィヤールはフランスとスイスを行き来する途中で、この村に立ち寄ったことがあるはずだ」と書いたことがきっかけのようです。この影響で、美しい教会のある小村は、人気の観光地になりました。
 しかし、ジャン・ヴィヤールは「ボーム・レ・メシューという村には行ったことがなく、"Les Trois Cloches"は、
レマン湖ジュネーブ湖)のほとりでたまたま発想したものだ」と語っています。

 大ヒット曲が生まれると、「舞台はここだ」論争が生まれるのは、どの国でも変わらないようです。

(二木紘三)

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コメント

二木 先生 へ

今の私の心に沁みこむような The Three Bells を UPして下さり、ありがとうございます。

③ 谷間の奥深く 忘れられし村に
  青い月の空 讃美歌が聞こえる
  今燃え尽きた 命を惜しんで
  人びとはみな 祈りを捧げる
 
  鐘は鳴る鳴るよ こだまと響き
  長い人生に  別れを告げる
  山から山へと 谷から谷へと
  天にも届けと 願いを込めて
  鐘は鳴る

病床に伏す最愛の妻(智代 ともよ)の やつれた寝顔を見ながら、残された貴重な日々をどう過ごせばよいのか・・思い悩みながら、静かに時の過ぎ行くのを恐れと不安の中で感じながら、時よ停まってくれ!と、祈り続けています。

もういっぱい泣きました。涙も枯れ果てるほどに泣きました。
今はもうすべてを神様にゆだねて、愛する人の人生最後の鐘がなるのを、静かに待つしか、することは何もありません。

谷間に三つの鐘がなる・・・こんなにも心に響きわたるしらべ、心のひだまで泌み通るような思いで聞いています。
今、私達の教会ではクリスマスセレブレーションの練習に大勢の兄弟姉妹たちが明け暮れていますが、私の生涯かけて愛し続けた愛しい妻に聞かせてやれるだろうか・・・? 

どんなに愛し合っても、いつかは別れていかねばならないさだめ とはいうものの、
未練が残って仕方がない。
二木先生はじめ、電話やメールでも励まし慰めてくださった方々のお心遣いは病床の妻の心にも深く残っていることでしょう。ありがとうございました。

大好きなブラウンズの歌が、個人的な感傷の場となりました。お許しください。

投稿: あこがれ | 2020年11月21日 (土) 12時03分

もう20年くらい前のことになりました。
山陰のある市での、30人くらい親戚の結婚式で、新婦方の挨拶を頼まれたいたのです。

新郎の来賓の方のスピーチは教科書のように、定番の内容を滔々と述べられ、それはお見事なことでした。

次なる私のテーマは、頼まれてはいたものの、この種の練習もしていなく、これは恥さらしになると、たじろいでいました。妻も下書き練習しているはずはないのに、どうするのかと、ヒヤヒヤしていたそうでした。

この結婚式にはすでに二歳くらいの子供がいて、いまここで式を催すことなっていたのでした。

記憶も薄れているのですが、概ね次のように話しました。
------------------------------
もう20数年前になりますが、ヨーロッパである一つの曲が生まれました。しかし受けいれらずにいましたが、忘れられたくらい経ったくらいから、アメリカでにわかにヒットしました。
------------------------------
曲の内容は、(蛇足に同じですから省略して)「三つ目は、結婚式の話しですから話しませんので」として話しましたが、お分かりとおもいます。

節目の説明を物語り風にして、はなしましたが、結婚式のスピーチとは違う、やがて何の話かと、私話やすこしざわめきが出ていたのは、感じていました。

この挨拶の最後は次のように結びました。
------------------------------
この曲名は「谷間に三つの鐘が鳴る」で、ラジオなどで耳にされることがありましたら、思い出してください

今日この地で、一日に2度の鐘が鳴った日です。おめでとうございます。御両家の幸あることをお祈りします。
-----------------------------
で、マイクを離れたのでした。

ややして、拍手が響きました。

投稿: 崇 | 2020年11月21日 (土) 14時47分

ザ・ブラウンズ(The Browns)が歌う「谷間に三つの鐘が鳴る」(The Three Bells)は、私の大の愛唱歌です。

心待ちにしていたこの歌が、ついに、”うた物語”に登場!感激の至りです。
思い返せば、これまで、「いとしのクレメンタイン」での投稿('16-1-9)で、ザ・ブラウンズが歌う「谷間に三つの鐘が鳴る」のことにも触れ、また、”交流掲示板”でも、「谷間に三つの鐘が鳴る」([1517] ’20-3-17)として投稿させて頂きました。

現在に至るも、聴くのも、口遊むのも原語(英語)ということもあり、日本語歌詞(訳詞)のことは、うろ覚えですが、歌詞1番では、次のようなフレーズがあったように記憶します。(NET検索しましたが、該当する日本語訳詞は見つからず)
  ♪谷間の奥深く 樹々に囲まれた
    平和な村で ジミー・ブラウンは生まれた
    (ボン ボン ボン)
    教会の鐘が 村中に響く
    ・・・・・・・
    おめでとう ジミー・ブラウン
    ・・・・・・・
    神のみ恵が 小さきみどりごの上にあれと♪

この歌詞(英語)にありますように、鄙びた小さい村に生まれ、村人に愛され、年頃になって結婚し(、子供を育て)、歳老いて平穏な死を迎える、という人生が、平凡ながらも、理想の一つの形なのだろうと思うのです。

投稿: yasushi | 2020年11月22日 (日) 10時18分

「谷間に三つの鐘が鳴る」(The Three Bells)は、大好きな歌です。

これまでは、ザ・ブラウンズが歌うボーカルで聴いておりましたが、このたびの二木オーケストラによる器楽演奏で聴きますと、これもまた素晴らしいなあ、心が洗われるように、しみじみと心に沁みるなあ、と繰り返し聴いている次第です。

そして、二木先生の名解説(《蛇足》)を拝読しましたら、勉強になりました。
「 "Les Trois Cloches/The Three Bells"を聞いて、讃美歌のようだと感じた人は多いと思います。とくに、各聯前半の詠唱風コラールが、そうした印象を強めています。 」との記述がありますが、各聯前半部分のスタイルが”詠唱風コラール”と呼ばれることは、知りませんでした。

この詠唱風コラールの部分は、抑揚が少なく、単調なメロディですが、各聯の後半部分(主旋律の部分)を引きたてるべく、イントロ部分として、大事な役割を果たしているのだろうと想像します。
シャンソン”Les Trois Cloches”では、 詠唱風コラールの部分が8行あるのに対して、ザ・ブラウンズの英語版歌曲”The Three Bells” では、約半分(前半部分)の4行となっています。

英語版歌曲”The Three Bells” では、すべて、このように歌われているのだろうかと、YouTubeで調べましたら、シャンソン”Les Trois Cloches”の場合と同様、全8行の詠唱風コラールで歌っている、英語版歌曲”The Three Bells”があることに気づきました。
歌詞1番で言えば、次の第5行~第8行が挿入された形です。
So his parents took him to the chapel
When he was only one day old
And the priest blessed the little fellow
Welcomed Jimmy to the fold
例えば、イギリスのバンド”Brian Poole & The Tremeloes” や、アメリカのグループ”Andrew Sisters”は、このような、長い詠唱風コラール部分(8行)の歌い方をしており、ザ・ブラウンズが歌う”The Three Bells”とは多少風情が異なっています。このようなスタイルの歌声も、面白いなあ、聴きごたえがあるなあと感じているところです。

投稿: yasushi | 2020年11月25日 (水) 16時45分

 「谷間に三つの鐘が鳴る」一度聞いたら忘れられないすばらしい題名です。いやあこの題名をつけた日本人の翻訳者に賞を送りたい気持ちです。もし題名が「三つの鐘」なら洋楽にあまり興味のない私はこの歌のことなど忘れていたでしょう。
 メロデイーは地味というか荘重ですが、歌詞は赤ん坊の生まれた時や結婚の時、そして人生の終わりの時には、鐘を鳴らして、みんなで集まろうといった内容です。
 71歳の私にも素直にわかるものです。特に家族、親族の団結の強いベトナムに住んでいれば・・。日本にいた頃は家族関係などわずらわしいものだと思っていたのですが、いやそうじゃない、やっぱり家族関係っていいなあ、大切にしていかなくてはいけない原点だと素直な気持になっています。親族のお祝いや災害、不幸には心から参加して気持ちを味わいたいという心持です。毎朝5時半から出発し7時に帰宅する早朝散歩を4ヶ月続けて、私はそんな素直さを少しづつ取り戻しています。


投稿: 越村 南 | 2020年11月27日 (金) 19時45分

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