2020年1月18日 (土)

旅人の唄

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:野口雨情、作曲:中山晋平、唄:佐藤千夜子

1 山は高いし 野はただ広し
  一人とぼとぼ 旅路の長さ

2 乾く暇なく 涙は落ちて
  恋しきものは 故郷(こきょう)の空よ

3 今日も夕日の 落ちゆく先は
  どこの国やら 果てさえ知れず

4 水の流れよ 浮き寝の鳥よ
  遠い故郷の 恋しき空よ

5 明日(あす)も夕日の 落ちゆく先は
  どこの国かよ 果てさえ知れず

《蛇足》 大正12年(1923)発表。歌詞は、翌年1月13日に黒潮社から発行された野口雨情の新民謡集『極楽とんぼ』に、『船頭小唄』などとともに収録されています。

 わが国近代劇の始祖・島村抱月主宰の劇団「文芸協会」は、大正2年(1913)に解散しました。その直後、同劇団の若手俳優たちが「舞台協会」という劇団を結成、大正12年に「文芸協会」の最大の当たり狂言、トルストイの『復活』を上演することになりました。
 その舞台の劇中歌として作られたのが、この『旅人の唄』です。

 作曲は、「文芸協会」の『復活』で松井須磨子が歌って大流行した『カチューシャの唄』の作曲者・中山晋平。この歌も大ヒットし、とくに女学生たちに愛唱されたそうです。

 レコード化は昭和3年(1928)年で、佐藤千夜子が歌って日本ビクターから12月に発売されました。

 大正から昭和初期にかけて、この歌のようにさすらいをテーマとした作品がいくつも作られました。
 『浮草の旅(鳥取春陽)、『さすらいの唄(松井須磨子)、『流浪の旅』(寺井金春/東海林太郎)、『国境の町(東海林太郎)など。
 こうした歌が作られた背景には、中国やシベリア、さらには南方へと勢力を伸ばしていった日本の帝国主義と、国内における個人的または社会的な閉塞状況との重なりがあると思われます。

 さすらい、流浪、放浪、漂泊、彷徨――これらの言葉のもつ一種の寂寞感、うらぶれ感が若者たちの胸にロマンチックに響きます。しかし、その実態は悲惨の連続。
 「青年よ、荒野を目指せ」といった言葉が流行ったときもありましたが、その荒野は、精神世界の未開拓分野と考えたほうがいいかもしれません。

(二木紘三)

| コメント (0)

«古いオルガン