ざんげの値打ちもない
(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo
作詞:阿久悠、作曲:村井邦彦、唄:北原ミレイ
1 あれは二月の寒い夜 2 あれは五月の雨の夜 3 あれは八月暑い夜 4 そうしてこうして暗い夜 |
《蛇足》 昭和45年(1970)の大ヒット曲。昭和40年代に何曲か出た怨み節(怨み歌)の1つです。
怨み節は、失恋演歌・捨てられ演歌の一種ですが、一般の失恋演歌・捨てられ演歌が、捨てられて辛い、悲しい、あなたが恋しいという気持ちを素直に歌うのに対して、怨み節は、思うに任せない状況のなかで悲しみ、苦しんできた自分を一歩引いたところから見ている、といった感じの歌詞が特徴です。
この歌のほか、『新宿の女』(藤圭子・昭和44年)、『圭子の夢は夜ひらく』(同・昭和45年)、『酔いどれ女の流れ歌』(森本和子・昭和45年)、『怨み節』(梶芽衣子・昭和47年)などが怨み節とされています。
発表当時、この歌は、中学生の女の子が自ら求めて「初体験」をしたという設定が衝撃的だったわけですが、現在では、そんなケースは珍しくもなんともなくなっています。
子どもたちはどうして大人への時間を無理に加速させようとするのでしょうか。大人の世界なんて、想像力と感性が水気を失って硬直化していく過程にすぎません。あわてなくても、そんなものはすぐ、かつ必ずやってくるのに……。
伊藤様と「懺悔ばかりの男ですが。」様からのお知らせにより、3番のあとに"幻の4番"があったことがわかりました(下記)。この聯が入ることにより、歌詞がさらに強いストーリー性を帯びてきます。
あれは何月風の夜
とうに二十歳も過ぎた頃
鉄の格子の空を見て
月の姿がさみしくて
愛と云うのじゃないけれど
私は誰かがほしかった
(二木紘三)
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コメント
拝啓 先生のホームページには毎日アクセスしてメロデイを楽しませて頂いています。
先生の曲のなかで小生が聞きたい曲(30曲位)を抽出し連続して聞きたいのですが方法教えて頂けたら幸甚です。 宜しくお願いします。
投稿: 皆川健一 | 2008年5月17日 (土) 17時36分
皆川健一様
各ジャンル別索引の末尾に「連続演奏」がありますが、これと同じ方法を使えばできます。
この「連続演奏」はメタファイルという方法を使っています。簡単に言うと、好きな曲のURLを好きな順序で並べたテキストファイルを作り、それをWindow Media用のメタファイルに変換すればよいのです(ほかにRealMedia用、QuickTime用のメタファイルもあります)。そのメタファイルをクリックすれば、自動的に演奏が始まります。
メタファイルについては、ここで説明すると長くなるので、ネット上に多数ある情報をご覧ください。
ほかにもちろん音源が必要ですが、当ブログの音源は@niftyのサーバー内にあり、私以外は使うことができません。cacheを利用するなどして、ご自分のパソコンに取り込んでください。
なお、音源には著作権がありますから、ご自分のパソコンで楽しむだけにして、HPのBGMにしたり、頒布・販売等をしないようにしてください。(二木紘三)
投稿: 管理人 | 2008年5月18日 (日) 00時22分
先生のお言葉「子どもたちはどうして大人への時間を無理に加速させようとするのでしょうか。大人の世界なんて、想像力と感性が水気を失って硬直化していく過程にすぎません」は重いお言葉と思いました。これは資本主義の縮図のような気がします。人間そのものを情報化してしまわないと利益の対象にならず、結果常に新しい情報新しい情報に差し替えてゆかねばならなず、これにTVの出現以来、メディアの猛烈な技術革新が拍車をかけ、受身の国民性とあいまって感受性の豊かな若い方が激しく傾斜せざるを得ないのではないでしょうか。又、大人の幼児化には暗澹たる思いに駆られます。有り難うございました。
投稿: 矢谷弘幸 | 2008年5月19日 (月) 11時14分
この歌が流行っていた昭和45年11月、東京市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監室において、総監を監禁し、極東軍事裁判があったその同じ建物のバルコニーから、憲法改正のために自衛隊の決起を呼びかけた事件が起こりました しかし、自衛隊からの同調者も決起者もなく、首謀者の盾の会会長三島由紀夫は割腹自殺をしました。世に言う三島事件ですが、
そのころ、私は東京品川区の電気関係の会社に勤めていましたが、二十歳の私には、とっても衝撃的な出来事で強烈に覚えています。暗くスネたようなこの歌が、三島事件とダブって、この歌を聴くと、反射的に三島事件の起きたその頃の事をを思い出します。
それから数年後に、その建物や割腹自殺した東部方面総監室やバルコニーなどを見る機会がありました。
投稿: 田中 | 2008年8月 6日 (水) 22時50分
たしか、寺山修司さんがこの詞を非常にほめていたとの記憶があります。同年に森山加代子さんの白い蝶のサンバがヒットした時、こんな詞がヒットするなら俺はもう作詞はしないと怒っていたそうです。タイプの違う二つの詞が阿久悠さんだとは思わなかったみたいで、やはり阿久悠氏はすごい。
投稿: 中村和己 | 2008年8月24日 (日) 21時09分
夏にNHKがやる恒例の“懐かしの~”という公開番組で、この曲がとりあげられていました。その中で、この曲には3番と4番の間に“幻の4番”があったということが披露されていました。内容は、この曲の主人公が鉄格子の中にいるというようなものでした。北原ミレイさんがその“幻の4番”を含めて熱唱されていました。聴いてみるとなるほど3番からすんなり繋がっていくのですね。当時は刺激的だということでNGだったのでしょうか。北原さんもその4番を歌うのは初めてだということでした。そのことが披露されたのがNHKの番組ということで、時代がずいぶん変わったんだなぁと感じました。
投稿: 伊藤 | 2008年9月14日 (日) 06時41分
上記の伊藤様がおっしゃるようにNHKで放送され拝見いたしました。私の常宿の北九州のホテルテトラ北九州の美人で感性高いスタッフに宿のブログでアップしてもらいました。先生宜しければホテルテトラ北九州2017年2月ざんげの値打ちもない。で検索願います。
投稿: 懺悔ばかりの男ですが。 | 2018年5月14日 (月) 14時23分
「懺悔の値打ちもない」北原ミレイがテレビで歌っているこの曲を初めて聴いたのが高一の時で、彼女の声とこの独特な歌詞に、今までにはない衝撃を感じたことを憶えています!
この唄は今でも好きでよく聴きますが、最近は昔からファンだったシンガーソングライター山崎ハコがカバーした「懺悔の値打ちもない」をよくYouTubeで視聴しています。彼女は蛇足に追記されている幻の4番も入れて5番まで歌いますが、本家北原ミレイとはまた違い、寂しさ 切なさ、悲しさ、が見事に感情表現されています。
この唄に出てくる主人公とは生い立ちは違えど、似たような切なさ、寂しさ、悲しさ、を持つ唄に、小説家五木寛之が作詞した歌で「織江の唄」があり、この唄も山崎ハコが歌いますが、この曲と何故か私は「懺悔の値打ちもない」の主人公と重なる部分を感じます。この唄は好きな彼がいるのに、お金が欲しくて中学を卒業して小倉に働きに行く事をえらんだ。そして働きに行く前に処女をあげるために会いに来た。そんな切ない唄です。
この唄は、五木寛之が脚本を書き映画になった「青春の門」の主題歌で、織江の少女期を当時新人だった大竹しのぶが演じました。そしてこの唄の歌詞はすべて九州弁で書かれています。
「織江の唄」
遠賀川、土手の向こうにボタ山の 三つ並んで見えとらす
信ちゃん 信介しゃん うちはあんたに逢いとうて
カラス峠ば超えて来た そやけん逢うてくれんね信介しゃん
すぐに田川に帰るけん 織江も大人になりました
上記の唄を、ギターの弾き語りで山崎ハコが感情込めて歌い上げますが、その都度私は彼女の切なく語りかけるようなその素晴らしい歌唱力に吸い込まれます。
そしてこの「織江の唄」と「懺悔の値打ちもない」の曲から、若い時に悲しみを背負ったそれぞれの二人の主人公をどうしても重ねあわせてしまいます。
投稿: 芳勝 | 2019年4月21日 (日) 00時04分
何度聞いても哀しい歌ですね。
田舎から出て行った初心な娘が世間の荒波に翻弄され、結果として犯罪者となったものかと想像をめぐらしています。
捨てばちになった女性が時を経て、まともな気持ちを取り返して終わったことに安堵するなんて・・・・。
一人納得している茜雲
投稿: 伊勢の茜雲 | 2019年7月 5日 (金) 13時19分