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2007年3月 9日 (金)

懐かしのボレロ

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:藤浦 洸、作曲:服部良一、唄:藤山一郎

1 南の国 唄の国
  太鼓を打て 拍子をとれ 楽しき今宵
  南の星 十字星 いとしの瞳に似て
  輝けるは愛のひかり 今宵もあの空に
  高くひびけ 想い出の
  懐かしのボレロよ

2 想いをこめ 高らかに
  太鼓を打て 拍子をとれ 楽しき今宵
  南の花 紅い薔薇 優しき人の胸に
  愛のしるし高く香る 情けを風にのせ
  遠く送る 想い出の
  懐かしのボレロよ

《蛇足》 昭和14年(1939)リリース。服部良一の戦前における大きな仕事の1つです。

 ボレロはスペインの風土から生まれた4分の3拍子の舞曲。フラメンコもそうですが、スペインの舞曲は一般に、奔放なジプシー音楽の影響を受けて、官能性の高いのが特徴です。

 ボレロの曲形式を使った作品は数多くありますが、官能性の度合いは作曲家によってかなり違います。
 たとえばショパンは、何曲もボレロを作っていますが、いずれも官能性はあまり感じられず、明るく楽しい曲調になっています。『ボレロ イ短調 Op.19』
などは、ポーランドの民族舞曲であるポロネーズといってもおかしくない感じです。

 この対極にあるのが、ラヴェルの『ボレロ』です。
 私は、これほどエロティックな曲をほかに知りません。聴くたびに、Orgasmusに向かって徐々に高まっていく女性の官能の波を思い浮かべてしまいます。
 ラヴェルは、オランダの医学者T・H・ファン・デ・フェルデ
(Theodor Hendrik van de Velde)のあの「Orgasmusの特性曲線」を発想源にしたのではないか、などとあらぬ想像をしたこともありました。

 ちなみに、T・H・ファン・デ・フェルデが『完全なる結婚』を発表したのは1926年、ラヴェルの『ボレロ』の初演は、その2年後の1928年11月22日、場所はパリのオペラ座でした。
 ですから、時間的には、ラヴェルが「Orgasmusの特性曲線」を知っていても不思議はありません。『完全なる結婚』で詳述された男女の性感の差異が、当時の多くの知識人にショックを与えたということもありますし……。

 不謹慎だと憤慨するまじめな音楽ファンもいるでしょうが、私と同じように感じている人は少なくないようです。
 たとえば、1970~80年代のセックスシンボル、ボー・デレクが主演したアメリカ映画『テン』
(1979)では、その場面で、ラヴェルの『ボレロ』が延々と流れていました。

(二木紘三)

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コメント

昭和の作曲家のなかで、服部さん古賀さんは東西の横綱でしょうか、また作風も早慶ってとこですかね。
私は服部さんのほうが好きですかね。この曲も好きですし・・・・・
世界の音楽ではジプシー音楽が好きです。
あの哀愁おびたメロディーがたまりません

投稿: トシ1210 | 2007年8月24日 (金) 22時20分

今、一枚のSP盤を懐かしく眺めています。
A面は、この曲「懐かしのボレロ」、B面は、藤浦 洸作詞・竹岡信行作曲・唄、渡邊はま子の「長崎の蝶々さん」
2曲とも昭和初期の三拍子揃った名曲だと思っています。
「懐かしのボレロ」は、兄が好きな曲で子どもの頃から得意としていて、社会人になってからも頻繁に歌っていたようです。
また、「長崎の蝶々さん」は、妹が小学生の頃に日本舞踊を習い、夏祭りなどのステージで踊っていたのを想い出します。
SP盤を眺めながら、過ぎ去った日々を懐かしく想い出している今日この頃です。

投稿: 一章 | 2016年1月 7日 (木) 20時45分

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