« 故郷 | トップページ | 冬の夜 »

2007年8月21日 (火)

冬景色

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


文部省唱歌

1 さ霧(ぎり)消ゆる湊江(みなとえ)
  舟に白し 朝の霜
  ただ水鳥の声はして
  いまだ覚めず 岸の家

2 烏啼(な)きて木に高く
  人は畑(はた)に麦を踏む
  げに小春日ののどけしや
  かえり咲きの花も見ゆ

3 嵐吹きて雲は落ち
  時雨(しぐれ)降りて日は暮れぬ
  若(も)し燈火(ともしび)の漏れ来ずば
  それと分かじ 野辺の里

《蛇足》 大正2年(1913)に小学校の音楽教科書『尋常小学唱歌(五)』に掲載されました。

 初冬の田園風景を簡潔に歌った叙景歌の傑作です。近年は、この歌や『朧月夜』『紅葉』のようなすばらしい叙景歌が作られることはほとんどなくなったようです。
 叙景歌というジャンル自体が好まれなくなったのでしょうか。

 1番は漁村、2番と3番は農村の光景を歌っています。

Fuyugeshiki_2  上の絵は、2015年の年賀状用に描いたものです。

(二木紘三)

« 故郷 | トップページ | 冬の夜 »

コメント

すばらしい叙景歌です。歌詞を口ずさみ情景が浮かんでまいりますね。
初冬の水辺の風景から小春日の田園風景そして野辺の里の風景へと懐かしい情景がメロディーで描かれますね。繰り返し拝聴しました。波路。

投稿: 波路 | 2008年2月21日 (木) 20時37分

この歌を聴くと小学校の音楽の先生を思い出します。皆が片手でオルガンを弾けるようになるまで、熱心に教えてくれたのです。戦災で焼け野原になった市街地では、この歌の良さがわからなかったのですが、大人になると,初冬の田舎の風景が思われて、心が穏やかになれます。あの年配の女の先生もきっとこの歌が大好きだったのでしょう。今日は小春日和です。

投稿: ハコベの花 | 2008年12月 4日 (木) 13時28分

冬景色の歌詞に絵を付けて、玄関に飾っておきましたら、40歳代の営業マンが「これは何ですか」とたずねました。私は冬景色を知らない人がいる事に驚いてしまいました。全く聴いたことがないそうです。歌の断絶があるとは感じてはいましたが、理由がよくわかりません。テレビ時代になってから日本の音楽から日本の文化が消えてしまったような気がします。ラジオ歌謡があったように、日本の美しい歌をテレビで流す事は出来ないのでしょうか。これらの歌が消えていくのは残念でしかたありません。

投稿: ハコベの花 | 2011年12月30日 (金) 22時30分

現在「歌声広場」という企画を主催しています。
歌が上手い、苦手 は関係なく、みんなで声を合わせて歌おう!というものです。
昔、「歌声喫茶」というものが流行った頃があったそうですが、残念ながらリアルタイムとして私は経験しておりません。でも日本のすばらしい昔の歌がだんだん忘れ去られていく、前述の「ハコベの花」様のコメントのように、伝えていかなくてはならないと思います。
歌詞カード作成のために度々このブログを拝見しています。言葉が難しいという理由で昔の歌が文部省唱歌からはずれていくのは残念ですね。この歌もとてもきれいな叙景歌です。

投稿: Swing Leaf | 2012年2月 7日 (火) 00時58分

今日千葉に大雪?が降り東京の知人からメールあねをもらい綺麗だね、この歌詞を思いだしました、(二)人はた畑に麦を踏む、福岡の田園風景で中学のころ見ましたが輸入に頼る現今見えないさびしさです。

投稿: 灸太郎 | 2013年1月14日 (月) 19時47分

二木先生の描かれた絵が素晴らしいですね。
海と山と丘がある絵は故郷を思い起こさせます。
木にカラスが停まっていたり村人が畑で働いていたりすると面白いかな、とも思いました。

『みかんの花咲く丘』にある先生の絵も好きです。

投稿: yoko | 2016年2月26日 (金) 08時35分

現在、地区の公民館やコミュニティ施設で、リタイヤした人たちが抒情歌や童謡を歌う会がたくさんあり、みな賑わっています。今若い人もいずれは同じことをするでしょう。
私たち高齢者は、このような歌で難しい古文を楽しく身につけることが出来ました。昔の歌は古文で難しいからといって避けていたら今の若い人の日本の古文を読み解く能力が衰えることを心配します。古文には日本語の美しいリズムがあると感じます。
日本人の教養と情緒をいつまでも伝えるには、このような抒情歌や童謡はとても有効で便利な手段と思います。文科省には是非再考していただきたいと思います。

投稿: 吟二 | 2016年3月 3日 (木) 17時29分

内陸の生まれ、育ちだったので、1番のような海辺の光景は幼い頃の記憶にありませんが、2番、3番はまさに私の生まれ、育ったところの光景そのものです。
麦踏み、手伝わされましたなあ。子どもで体重が軽いというので、土を入れた袋を背負わされました。重くていやだったけれど、両親や姉と話をしたり、歌ったりしたのが、今では楽しい思い出です。
麦踏みは、霜柱で浮き上がった麦を土につけるためと説明されましたが、それ以外に麦の成長を促す効果もあるということを、大人になってから知りました。

投稿: はるいち | 2016年8月29日 (月) 11時10分

麦踏といえば小学校で麦踏の歌を教えられました。
 伸びた麦の芽トントントン
 僕らは麦踏踏んでいく 〈麦の芽踏んでいく〉かも。
 踏めばこの芽が麦の芽が 〈この根〉かも。
 しっかり根を張る 葉を伸ばす
なにぶん70年近く前なので、歌詞が間違っているかもしれません。でも、歌っていると楽しくなるので時々歌います。1番しかわかりません。正確に覚えておられる方がありましたらお教えください。

投稿: ハコベの花 | 2016年8月29日 (月) 14時48分

 ラジオ体操へ行くため、早朝まだ明けやらぬ道を急ぎ、山手線の高架橋を渡っている時、ふっと「冬景色」を口ずさんでしまいました。歌詞は一番だけ覚えていますが、冬になるとなんとなくこの歌を口ずさんでいます。

 うっすら朝もやの中、川岸に繋がっている舟、川風の香り、ぼうっと街灯の灯りがもやに浮かんでいる。そして日常が始まる。いつもこんな景色を思いながら一番の歌詞を口ずさんでいます。考えてみますとこんな景色を実際にみたという記憶がないのです。幼いとき見た川は日本橋川か隅田川で、ましてや冬の早朝の川などは幼子には縁がありません。

 記憶の底の映画かTVの映像か、はたまた何処かで見たことのある絵か分かりませんが、好きな景色ですね。歌の情景は湊なんですよね。「さ霧」を検索してみますと季語は秋なのですが、初冬の空気を感じます。それゆえなのか早朝歩きながら口ずさむと清廉な気持ちになります。

投稿: konoha | 2018年12月13日 (木) 07時32分

21016年8月ご投稿の
「はるいち」様、「ハコベの花」様、

正にリアルタイムの体験をしておられるのですね。
私は、九州・小倉市での幼少時、小学校時、絵本や、音楽の時間で、見たり、聞いたりしたものと思います。
 しかし、60歳定年から、茨城県で有機農業をしている私は、何年か前から、圃場に「小麦」を障壁作物として、植えています。
 幼き頃の記憶と、今の有機農業の害虫防御の考えが一致しました。記憶に忠実に、厳冬には、実際に、ポケットに手を突っ込みながら、「麦踏み」を実践しています。
 勿論、この唄も知っている第1次ベビーブーム世代です。
本日ご投稿のkonoha様も、皆さん、お笑い下さい。

投稿: 竹永尚義 | 2018年12月13日 (木) 16時14分

日本の冬の歌の代表でしょうね。麦畑が無くなったので、麦踏を見たことが無い人がほとんどでしょう。
でもこの歌を聴いてその風景が想像できない人が多くなったのは悲しいですね。想像力を養う前に現実が想像を超す社会になって仕舞ったのは残念です。
月も星も変わらないのに地球の上の騒々しさは留まる事がありません。歌も、ひなる歌、がなる歌が多くなって情緒が全く消えてしまいました。この先、人の心からも情が消えてガサツな社会になって行くのだろうと想像しています。欲だけで生きているいる人が世界規模でうごめいていますね。政治家が博打場を作ってお金儲けを企んでいる社会、情けないと思いませんか。ゆっくり麦踏をして見たくなりました。

投稿: ハコベの花 | 2020年1月10日 (金) 13時24分

とても素敵なコメントと思います。現実が自然をを超え、情緒をむしばむ時代になりました。
空では星こそほとんど見えない状態ですが、月の美しさ、青空など心がいやされます。
最近の音楽は心に沁みる様ないい歌が無くなり残念です。
この歌を時々口ずさむと小学校当時を思いだします。
小学校唱歌、文部省唱歌、童謡など素晴らしい歌が沢山ありますね。

投稿: 栗さん | 2020年1月10日 (金) 15時50分

美智子上皇后様が大好きな曲だそうです。作者は不詳ですが国語学者の金田一春彦博士はこれは「花」を作詞した武島羽衣の作詞に違いないと推定しておられます。作曲は鳥取の音楽家である鈴木恵一先生が名曲を多く作曲している岡野貞一であると推定しておられます。1番の歌詞の「いまだ覚めず、岸の家」と3番の「もし灯の漏れ来ずばそれとわかじ野辺の里」の詩がいいです。早朝の冬の景色の情景がなんともいえません。曲も、一連の岡野貞一の「故郷」などの曲想に似ています。

投稿: 二松五男 | 2021年1月 7日 (木) 12時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 故郷 | トップページ | 冬の夜 »