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2007年8月 7日 (火)

懐かしのブルース

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:藤浦 洸、作曲:万城目正、唄:高峰三枝子

1 古い日記のページには
  涙のあともそのままに
  かえらぬ夢のなつかしく
  頬すり寄せるわびしさよ
  ああ なつかしのブルースは
  涙にぬれて歌う唄

2 ひとつ浮雲 夜の空
  なぜにか胸にしみじみと
  思い出遠くながれ行く
  心にも似たかなしさよ
  ああ なつかしのブルースは
  ひとりさびしく歌う唄

3 重く悲しい歌なれど
  生きて行く身のつれづれに
  夕闇遠い行く末の
  のぞみはかなくくちずさむ
  ああ なつかしのブルースは
  この世の夢を歌う唄

《蛇足》 昭和23年(1948)

 松竹は戦前、歌謡曲に基づいた映画のシリーズを制作していましたが、これはその戦後復活第一作『懐しのブルース』の主題歌。映画は佐々木康監督で、あらすじは次の通り。

 没落した実家を支え、信州富士見高原療養所で胸の病を養う妹寿子の療養費を助けるため、立松伸子(高峰三枝子)は、親に内緒でキャバレーの歌手になります。
 やがて彼女は、若い貿易商・脇村浩介(上原謙)と愛し合うようになりますが、病癒えた寿子を迎えに行った療養所で、脇村の病妻・加奈子に偶然出会います。
 帰京後、涙の瞳で脇村を難詰した伸子は、加奈子を幸福にするために、脇村に二度とキャバレーに来ないようにと言い、再びキャバレーでブルースを歌うのでした。

 万城目正は戦前から昭和30年代まで活躍した作曲家で、古賀政男と同じく、日本調歌謡曲を本領としていました。この2人に共通するのはどの曲も、前奏がすばらしいということです。ときには、メインのメロディより、前奏のほうが記憶に残ったりします。
 万城目正のヒット曲『
旅の夜風』『純情二重奏』『リンゴの唄』『あの丘越えて』『情熱のルンバ』『この世の花』などを聴くと、そのことがよくわかります。 

(二木紘三)

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コメント

若い頃からの高峰三枝子の大フアンで「懐かしのブルース」「別れのタンゴ」「情熱のルンバ」のビデオを時々観たり、MIDI喫茶で曲を聞いたりして楽しんでいます。他にも大好きな曲が沢山収録されていますので、本当に幸せを感じています。これからもよろしくお願い致します。

投稿: 生田義輝 | 2008年2月18日 (月) 17時35分

「わかって下さい」この唄のなかに、「涙で文字がにじんで
いたならわかって下さい」なんとなく古い日記・・・・・
に似ているような気がします。詩人が行き着くところは同じ
なのですね。

投稿: M.U | 2008年9月 2日 (火) 15時10分

 上原謙さんと高峰三枝子さんのコンビではJRの「フルムーンパス」のキャンペーンポスターを思い出します。温泉につかる高峰さんを美しいと感じました。昭和23年といえば、まだ生まれる前の映画なのですね。
ああ なつかしのブルースは この世の夢をうたう歌♪
↑三番の最後で救われる想いがいたしました。


投稿: 巴茶寮 | 2008年9月 2日 (火) 15時22分

富士見高原療養所が目に留まりました。田舎に居た頃聞いた
場所です。高峰三枝子は「湖畔の宿」以外にも沢山の名曲
を残しておられますが、殆どの唄好きがその事をご存知ないようです。あんな美人なお母さんなのに。

投稿: 海道 | 2008年12月 8日 (月) 09時23分

この歌ははじめて聞きました。なかなかここちよいメロディーです。私の生まれる一年前の歌ですが、戦後の日本人が、まじめにがんばっていきている様子が伝わってきます。静かな曲の調子にそれを感じるのです。高峰三枝子も上原謙も名前しか知らない私ですが、亡き父母のDNAが私の中にあって、感じるのかな。いやきっと万城目 正の曲の力のせいでしょう。つい何度もくり返し、きいてしまいます。
この歌の歌詞ですが、1番は女性の心をつづったものですが、2番、3番は老いた人の気持ちともいえるのではないでしょうか。
「ひとつ浮雲 夜の空 なぜにか 胸にしみじみと」
夜空の浮雲ーいやあ、これは私も発見した記憶がありますよ。浮雲は昼の青空だけが背景にふさわしいわけじゃない、夜空もまたいい。でも気づく人は少ないかも。異国の夜空で見る浮雲はとてもさびしいものでした。藤浦 洸の詞もすばらしい。

投稿: 越村 南 | 2024年12月30日 (月) 11時04分

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