むらさき小唄
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1 流す涙が お芝居ならば 2 好いちゃいけない 好かれちゃならぬ 3 嘘か真(まこと)か 偽むらさきか |
《蛇足》 昭和10年(1935)公開の松竹映画『雪之丞変化』(衣笠貞之助監督)の主題歌。長谷川一夫(当時の芸名は林長二郎…写真)が、主役の雪之丞と彼を助ける侠盗・闇太郎、母親の3役を務めました。
原作は三上於菟吉(みかみ・おときち)が昭和9年(1934)から1年間、『朝日新聞』に連載した同名の小説。時代小説の傑作で、これまで何度も映画化・テレビドラマ化されています。
昭和23年(1948)に小畑実が歌った『小判鮫の唄』、昭和32年(1957)に美空ひばりが歌った『雪之丞変化』も、雪之丞映画の主題歌です。
最初の雪之丞映画の主題歌である『むらさき小唄』は、昭和10年5月に、東海林太郎(しょうじ・たろう)の歌でレコード発売されました。
東海林太郎といえば、マイクの前で直立不動で歌ったことで有名でした。このころの歌手は、岡本敦郎、藤山一郎、霧島昇、淡谷のり子、高峰三枝子など、たいていの歌手は、東海林太郎ほどではありませんが、体をあまり動かさずに歌うのが普通でした。
それは、歌手は歌自体を聞かせるのが仕事であり、体をあまり動かすと、声が揺れるから、という考えがあったからだといわれます。
その歌唱法も、歌謡曲の歌手でありながら、音楽学校で教えるようなクラシックの発声法で歌う歌手が多く、のちの演歌歌手たちのように小節を使う歌手は少なかったようです。
実際、藤山一郎、淡谷のり子など、音楽学校で正規の音楽教育を受けた歌手が大勢いました。
その後、大衆歌謡の世界では、リズムに合わせて体を大きく動かしたり、踊ったりしながら歌う歌手が増えてきました。
今は、人気歌手やアイドルグループの公演では、広い舞台いっぱいに踊ったり、走り回ったり、ときにはバック転しながら歌うのが普通になっています。
歌を独立したエンターテインメントとしてでなく、ショーの構成要素の1つとする考え方に変わってきたのでしょう。
(二木紘三)
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コメント
いやいや二木先生、決してひがみではありません。先生のグチ?をきいて溜飲を下げているのは私だけではありますまい。
あのころの歌手はほんとに「原始的とさえいえる制作条件」で歌っていましたね。スタンドマイクが1本あるだけですから、動き回りたくても動けなかったでしょう。田舎に行けばアコーデオンだけの伴奏ということも多かったのではないでしょうか。
でも私はあのころの歌手たちを、素人とは天と地ほどの隔たりがある名人だと思っていましたし、今でもそう思います。音楽学校を出ていない人でも素人には近づけない個性、特徴があったと思います。
このごろの歌手には、素人より下手な人がたくさんいると思うのですが、素人が上手になったのかそれとも年寄りのひがみでしょうか。
投稿: 周坊 | 2008年4月29日 (火) 13時10分
東海林太郎は母方の祖母が大好きな歌い手でした。歌の明星から流れる歌声に耳を傾けていた姿を思い出します。
真剣勝負であるから舞台で直立不動で歌うと聞いたことが有ります。
最近はカラオケの影響でしょうか、誰も歌が上手くなりました。歌でストレスが解消すれば殺伐とした世の中も穏やかになることでしょう。
二木先生何時も有難うございます。
投稿: タケ坊 | 2008年4月29日 (火) 19時17分
二木先生、いつも楽しく拝見拝聴しております。
私はデイ・ケア・サービスに勤務しておりますが、先生のブログを以前からご存じの、ウチのお客様(独学でキーボードを弾かれる素敵なダンディです。)から
「二木先生のところに投稿されるのは男性が多いので、一度されたら如何です。」
と勧められまして、(一応女性ですので)思い切ってさせていただきます。
認知のお年寄りもいらっしゃいますが、皆さん懐かしい歌には良く反応されます。
音楽は人間の生活に無くてはならないもの、唄って笑って、毎日を楽しく過ごして行く為に皆様のお手伝いをして参りたいと常に思っております。
『雪之丞変化』懐かしい~~~♪
映画も観ました!長谷川一夫さんの綺麗だった事!余りの美しさに嫉妬されて顔に傷を付けられた事件を覚えています。
美空ひばりさんもありましたね、顔に硫酸を掛けられたのでしたっけ。
「美しさは罪」なら私も危ないわあ(笑)
なんてバカな話をしては今日もデイサービスで笑っています。
投稿: オーリー | 2008年5月 6日 (火) 01時33分
「雪之丞変化」の映画のあらすじが、美空ひばりさんの主演した映画だけ、主人公の設定が女性になっています。主題歌も女性の立場で歌詞ができています。(1.娘ざかりは誰でも着たい 花の振袖 涙で捨てて、、、)原作は主人公は男性です。 ひばりさんなら、最初から男役でよかったのではと思いますが、、、どうしてでしょうか?
投稿: 坂本啓子 | 2009年5月 5日 (火) 07時01分
むらさき小唄
このブログを見つけた時は、奇声あげ、感激致しました。 めったに聞く事の出来なくなった…むらさき小唄:小判鮫の唄:勘太郎月夜唄と 名優長谷川一夫丈主演の映画主題歌で懐かしく嬉しく感謝::感激を致して居ります。 戦前生まれですと最近のテンポの速い曲は、どうもなじめなく歌う事を忘れてました。
メロディーのみが、嬉しいですね!!色々と想像も出来て…映画の名場面が走馬灯の…様に(^^♪脳裏に…浮かび!!若返えられます♪♪
投稿: usagi(^^♪ | 2010年3月14日 (日) 16時43分
むらさきこうたの歌詞を教えて下さい
投稿: 清家 | 2015年8月28日 (金) 11時39分
「むらさき小唄」東海林太郎さんが大好きだった生前の母が、いつもこの唄を口遊んでいたせいか、幼かった私もいつしか耳に馴染んだこの唄を母と一緒に口遊んでいたという憶えがあります!
「雪之丞変化」私が五歳のころですが、母と一緒に行った映画館で、大川橋蔵主演のこの映画を観たことがあります。しかし、その映画の途中で私は退屈して寝てしまい、母に起こされた時にはすでにこの映画は終わっていたので、その内容等は最近までほとんど知りませんでした。
なので、『・・・だまされて家財を失い憤死した父の仇を討つ息子が、雪之丞という女形俳優に化けて芝居一座の花形となり、ついに仇討ちに成功するという物語・・・』だということも、『・・・雪之丞がいつもっかぶっている頭巾の色が紫だった・・・』なので「むらさき小唄」という曲名がついたという事などを私が知ったのはつい数年前のことです。
「むらさき小唄」これは母の遺伝子なのか、私も幼い頃から懐メロ番組で観ていた、直立不動で歌う東海林太郎さんは好きな歌手でした。特に大好きだった「名月赤城山」や「国境の町」の精悍な歌声とはやや異なるような、優しい歌声のこの唄が無性に聴きたくなり、最近はYouTube視聴することが多くなってきたように感じます。是非一度機会を設けて『雪之丞変化・長谷川一夫編』を視聴したいとも思っています。
投稿: 芳勝 | 2023年2月 4日 (土) 15時40分
大衆演劇は卑しいもので、クラシックはハイカラで上等なものという世間の評価は違いますね。私の女性の友人は原語でクラシックを歌うコーラスを数十年もやっていて、ニューヨークのカーネギ―ホールで歌ったとか、年末の「第九」を歌うコーラスは数百人を動員するなどと言い、ご自分が自腹で払った券を他の人にタダで上げるから来てと私に言いますが、私は流行歌の方が好きなので、やんわりとお断りしています。
「むらさき小唄」は、やはり東海林太郎がいいですね。何故でしょうかね。彼は真面目そうな感じですが、案外発展家だったそうですね。それもまた人間ですよね。”男心に男が惚れて~”馬鹿な私でございます。
投稿: 吟二 | 2023年2月 6日 (月) 00時33分