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2008年7月21日 (月)

夜霧のしのび逢い

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:ピエール・バルー、作曲:ジョー・ヴァン・ウェッター
日本語詞:岩谷時子

雨に濡れながら 夜ごとに心求めあう街角
切なくひと夜の夢結ぶ はかない恋よ
降り注ぐ雨 手のひらに 唇をつけて吸おうよ
静かにほほえみ浮かべては 交わそう 愛を
胸の乾きいやして また別れる街角
名も知らずに抱き合う あすのない街角

雨は恋を運んでくる 貧しい女の胸にも
口づけはいつも ほろ苦い涙の雨よ
ほろ苦い涙の雨よ

       La Plage (La Playa)

Quand sur la plage tous les plaisirs de l'été
Avec leurs joies venaient à moi de tous côtés
L'amour offrait l'éternité
A cette image de la plage ensoleillée

C'est bien dommage mais les amours de l'été
Bien trop souvent craignent les vents en liberté
Mon coeur cherchant sa vérité
Vient faire naufrage sur la plage désertée.

Le sable et l'océan
Tout est en place
De tous nos jeux pourtant
Je perds la trace
Un peu comme le temps
La vague efface
L'empreinte des beaux jours
De notre amour.

Mais sur la plage le soleil revient déjà
Passe le temps le coeur content reprends ses droits
A l'horizon s'offre pour moi
Mieux qu'un mirage une plage retrouvée
Mieux qu'un mirage c'est la plage ensoleillée.

《蛇足》 原曲『La Playa』は、ベルギーのバンド「ロス・マヤス」のリーダー、ジョー・ヴァン・ウェッターが1964年に作曲したもの。playaはスペイン語で浜辺の意。一般的にはプラジャ、地域によりプライアとかプラシャと発音されます。

 1964年、『La Playa』は20歳のフランス人ギタリスト、クロード・チアリの演奏により録音され、世界的な大ヒットとなりました。そのレコードは、1966年にフランスのACCディスク大賞を受賞しています。
 なお、チアリは、のちに日本に帰化して智有蔵上人
(ちあり・くろうど)と改名し、テレビのテーマ曲を作曲するなど、旺盛な音楽活動を展開しました。

 歌詞は何種類かありますが、上のフランス語版は、俳優でシンガー・ソングライターのピエール・バルーの作詞になるものです。
 バルーは、俳優としては、『男と女』などクロード・ルルーシュ作品の常連であり、また音楽家としては、ブラジル音楽のボサノヴァをフランスに広めた人物として知られています。

 1963年制作のギリシア映画『The Red Lanterns』が、1965年に『夜霧のしのび逢い』という題名で日本で公開される際、元の主題曲に替えて、クロード・チアリの『La Playa』がサウンドトラックに収録されました。
 『The Red Lanterns』の主題曲として『La Playa』が使われたのは、日本だけです。

 映画は、公娼制度が廃止される前後のギリシアの港町を舞台に、娼婦たちのさまざまな恋や生活を描いたモノクロ作品。この切ない内容に、クロード・チアリの哀愁に満ちた演奏がぴったり合い、多くの日本人に感動を与えました。そのため、たいていの人が『La Playa』を、『夜霧のしのび逢い』というタイトルで記憶しているはずです。

 映画は、受賞こそ逃しましたが、1964年のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。

(二木紘三)

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コメント

 またまた出ました、二木先生の名演奏! 『夜霧のしのび逢い』の演奏はこうでなくっちゃ! このような美しい演奏が、パソコンで本当に可能なのだろうか?と思わず我が耳を疑ってしまうほどの見事さです。(実際こうして聴いているんですから、本当なんですよね。)
 名画『夜霧のしのび逢い』。かねてより噂では聞いておりましたが、残念ながらまだ観ておりません。いつか機会があれば是非と思います。
    誰も皆傷負いて行く夜霧街  (拙句)
 夜霧の中しのび逢うロマンチックなお二人さんも。孤独をかみしめながら足早に歩き去る人たちも…。夜霧の街を行き交うすべての人が幸せでありますように。

投稿: 大場光太郎 | 2008年7月21日 (月) 17時58分

真夜中に聞いております。一段と心にしみますね。ロマンチックなメロディーにすっかり若かりし頃にかえりました。
映画好きだったのに〔夜霧の偲びあい〕を観なかったようです。〔男と女〕は観ました。

投稿: おキヨ | 2008年7月22日 (火) 01時37分

おはよう御座います。
若い頃恋愛中に「俺ら映画みたいやなぁ」と
言う面白い人が居ましたが。。。。
こういう映画みたいな恋をしてみたいもんですよね。
こんな音楽が鳴ってくれたら
まさに切なさが極まりませんか?

投稿: sunday | 2008年7月22日 (火) 08時23分

「夜霧のしのび逢い」その素晴らしい演奏を聴いていると、この世の醜い部分が浄化されていくようなそんな気がします。
一昨日は夕食後からその日が終わるまで聴いておりました。昨日も今日もまた明日も。

投稿: 高木ひろ子 | 2008年7月23日 (水) 21時46分

この曲が流行った後、予備知識なく、「名画座」のようなところでこの映画を観ました。タイトルからして安っぽい恋愛映画を想像しておりました。

小津安二郎の映画のように、生涯忘れられない映画の一つです。

曲の割に、映画の評価は高くなかったように思いますが、題材が娼婦のせいではないかと思われます。

映画の中で女主人公の歌う歌も、味わい深い歌でした。
原題の「red lanterns」の方が相応しい。

投稿: 時代オクレ | 2008年7月25日 (金) 23時39分

素晴らしいメロディーと演奏にうっとりと聞き惚れます。ただ、原詩が光り輝く夏の“浜辺”を背景にした歌だというのに、日本語詞だと『夜霧のしのび逢い』になるのが面白いですね。
原詩の「La vague efface l´empreinte des beaux jours de notre amour」は「私たちが愛し合った 美しい日々の跡を 波が消し去る」とでも訳したらいいのでしょうか。
この詩は『枯葉』の「別れた恋人同士の足跡を 海が砂の上から消し去る」(拙訳)や、『砂に書いたラブレター』の「潮(波)が 砂に書いたラブレターを消し去る」(拙訳)といった歌詞との共通性を感じさせます。
私はそこに、日本人とはまた違った欧米人の豊かな感性を見る思いで、これらの曲がとても好きです。
私はこの「うた物語」を引用しながら、自分のブログに小文(理屈っぽいのが難点ですが)を載せましたので、興味のある方はご覧いただければ幸いです。最後は宣伝みたいになって申し訳ありません。
http://blogs.yahoo.co.jp/yajimatakehiro2007/23539180.html

投稿: 矢嶋武弘 | 2008年7月26日 (土) 15時21分

 名曲に名映画ありですね。
 白黒画面(確か16ミリフィルム)のせいか、慕情のような美しいシーンは無かったが、ドキュメンタリータッチの記憶に残る映画だった。

 ギリシャの港町で、純真な青年ペテトは不思議な魅力をもつエレニという女性と恋し倖せなひとときを過ごしていたが、ある人からエレニは娼婦であると聞かされ失意のどん底に落ちエレニから離れていった。
 やがて公娼制度が廃止になり、エレニがアパートから一人で出てゆく時に、全てを許したペテトが戻ってきて
夕暮れの港町を二人で立ち去って行った・・・
 掃除婦とよりを戻した老人の「人生って素敵なものじゃないか」との独り言を聞きながら。

 愛する人が娼婦であると分かった時に、それでも愛せるか、などという煩悩はさておいて「夜霧のしのび逢い」は後世に残る映画音楽のひとつですね。

 

投稿: かんこどり | 2008年7月30日 (水) 16時13分

皆さんこんにちわ。
偶然めぐり合いました。いい音と
メロデイー。 クラ吹きですが
いつかはこれをを思いました。

ここにくると、将来の可能性を思わせる世界を感じさせられます。 二木さま ありがとうございます。

投稿: もこちゃ | 2008年7月30日 (水) 16時58分

いやぁー、まるで心が洗われるようでした。
なんど聴いても、そのつどメロディーが新鮮な響きを持って心に染み入って参ります。いやぁ参りました。
歌は心の走馬灯 人生絵模様 うた舞台ですね…

投稿: パンプキン | 2008年7月30日 (水) 21時07分

今、義兄が明日をも知れぬ病状で苦しんでいます。
そんな時に出会ったこの美しい曲に、分けもなく涙が止まりません。

投稿: enakako | 2008年9月18日 (木) 10時47分

この曲をスチールギターで弾くと又哀愁の雰囲気が
一段と高まります、効くのもよいですが自分で弾くのも
時にはいいものです。

投稿: KOBAYASHI.Y | 2008年9月21日 (日) 16時00分

友達からドーナツ盤のレコードを借りて、初めてこの曲を聴いたのは 何十年前になるでしょうか。
当時フランス語の歌詞を一生懸命覚えたものでした。カーン シュラプラージュって適当に歌っていました。
その後フランス語で歌っているCDとかはお目にかかったことがなく、全部クロードチアリのギター演奏で歌詞が分かりませんでした。
今夜 このサイトを知り、歌詞が分かりました。すごく嬉しいです。
今 この演奏を聞いて歌詞をなぞるように歌ってみるとほぼメロディどおりに歌えました!♪
何とか全部覚えて持ち歌にしたいです(^^)。

こんな素晴らしいサイトがあるなんて!♪
ありがとうございました。

投稿: 青谷 澄夫 | 2008年10月14日 (火) 22時14分

42年前恋に自爆し、一人観た「夜霧のしのび逢い」、主人公にだぶらせて涙したあの頃。甘くせっないボレロ調の名曲。
おもいだします。

投稿: t_u_shouta | 2008年10月15日 (水) 19時33分

44年前、19歳の12月に当時にすれば珍しかったステレオを買う事ができました。ドーナツ盤で最初に聞いた曲です。メロディーが好きなので今でもクロードチアリほかのギターで聞いておりますが、映画の内容は悲しい恋物語と記憶しております。あの頃の不安定な青春時代を思い出し、なつかしく又せつない気持ちにかられ、青春て「ほんとうに良かったなあ」と涙するほど感激します。

投稿: s.fujisawa | 2009年6月24日 (水) 14時14分

せっちゃんへ
まもなく会えますね。
39年ぶりの再会です。

この曲を聞くと切ない恋心が蘇ってきます。
待ち遠しいです。

投稿: 矢野 輝 | 2009年12月10日 (木) 13時27分

この映画は大昔、札幌狸小路の映画館で見ました。
若い二人はハッピーエンドになるのに
最後の航海が終わったら結婚しようと言ってくれた船長は
航海が終わったら、もう一人のヒロインを迎えに来るはずが
帰らぬ人になったのが印象に残っています。
みんなハッピーというのではなく、みんな不幸というのでもない。
人生はそんなものか、それでいいのだろうと思いました。

クロードチアリは日本にいて良かったですね。

投稿: みやもと | 2010年2月 9日 (火) 21時21分

映画の最後でエレニのかばんを恋人の男が持ち上げるシーンが忘れられません。この映画をDVDで見たいのですが、
近くのレンタルショップは新しいものばかりです。

投稿: 江尻 陽一 | 2011年11月14日 (月) 12時07分

 哀愁を帯びた曲ですね。小生が中学生のころ、街中の映画館で上映されていました。学校では映画鑑賞を許可しない時代でした。このころでしょうか、国内では、舟木一夫の「高原のお嬢さん」が流行ッていたような気がします。

投稿: やまぎし | 2012年11月21日 (水) 09時42分

夜霧のしのび逢い の題名が分からなくて探していました。歌詞は、かなり覚えていました。歌詞から検索できて嬉しかったです。せつないメロディと訳詩がぴったり合って名曲だと思っています。古い歌なのでカラオケからなくなっているようなのがさびしいと思います。

投稿: やまもとなおみ | 2013年4月 7日 (日) 23時30分

この曲はカラオケにありますよ。時々、歌います。歌い始めると場が静まります。
確かギリシア映画でしたか?貧しい娼婦のことを描いた作品だったような気がします。

投稿: ぶっかんば | 2014年2月15日 (土) 17時33分

ハーモニカで「夜霧のしのび逢い」を演奏することになり、昔のことですがメロディーだけは記憶にありましたが、これを機会に映画を見たくなり、ネットで探したところ「VHSテープ」しか有りませんでしたが、再生装置もレンタルでき鑑賞しました。
日本語の歌は、昨年亡くなった岩谷時子さんの作詞ですが、映画の情景と重ね合わせ、苦しくて、切なくて、哀愁を帯びたクロード・チアリのギターの演奏に魅了されました。

投稿: まーくん | 2014年2月20日 (木) 16時12分

検索していて久しぶり、二木さんのうた物語に出会いました。大好きなこの曲の原曲が「La Playa」という事を初めて知り、シャンソンとばかり思っていたので嬉しい発見でした。スペイン語の歌詞もあるのではと、探しに探したのですがみつかりません。 スペイン語を習っていますが、どんな名曲でも外国語で歌うのはハードルが高く、つくづく岩谷時子さんの偉大さに感じ入っています。

投稿: M.M. | 2015年12月30日 (水) 21時51分

時々このページにたどりつき、二木先生の博識のおかげで、老化したはずの私の感覚を刺激して下さいます。有難うございます。過ぎ去った昔の出来事を思いだし、胸がときめいたり、多くの記憶の扉を束の間、ひらくことになります。思いがけない曲にめぐり合う機会はこのページでしか、体験できないことです。多趣味だった明治生まれの父の影響で名画や名曲に出会えました。なぜか現在は「会話」に節をつけて歌っているような曲ばかりのような気がします。これらの中の何曲がいつまでも人々の心の中に、残っていけるでしょうか?忘れられない詩に曲が作られて、人々の心の中で生き続ける名曲、一曲でものこってほしい。切実に願っています。

投稿: mitsuko | 2015年12月30日 (水) 23時29分

作詞家の【阿久悠さん】【岩谷時子さん】【なかにし礼さん】たち、そのほかの作詞家の皆さま、同じ時代にめぐり合って、本当に幸せでした。心に沁みいる詩のお陰で私たちの生きる力や、慰めや、癒しとなって、日本人の心の中に、いつまでも歌い続けられていくことでしょう。
本当にありがとうございました。

投稿: mitsuko | 2015年12月30日 (水) 23時47分

若かりし頃この曲が日本でヒットし、口ずさんでおりました。娼婦を題材にしたギリシャ映画のテーマになったことはおぼえておりましたが、作曲者、作詞者、そして歴史的背景など、教えていただき、二木様に大感謝。素晴らしい演奏も堪能しております。ありがとうございました。

投稿: Mariko | 2016年10月20日 (木) 07時02分

夜霧のしのびあい、映画も見ましたが50年以上前、リズムもついてない初歩の頃のエレクトーンを習ってました、 夜霧の忍びあい、よくエレクトーンで弾いてました、大好きな曲です それからロンリーワンもよく弾いてました

投稿: 箏 | 2022年1月12日 (水) 22時41分

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