夢路より(夢見る人)
(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo
作詞・作曲:スティーブン・フォスター、日本語詞:津川主一
1 夢路よりかえりて 星の光仰げや 2 海辺より聴こゆる 歌の調べ聴かずや Beautiful Dreamer 1.Beautiful dreamer, wake unto me,
2.Beautiful dreamer, out on the sea |
《蛇足》 1862年に作曲され、フォスターが亡くなった1864年に楽譜が出版されました。
フォスターの作品は、イングランド、スコットランド、アイルランド音楽の伝統を引くパーラー・ソングと、黒人の生活をテーマとしたプランテーション・ソングに大別されます。
パーラー・ソングは、家庭の居間やホテルのサロンなどで歌われた優雅で上品な曲で、『夢路より』はその代表的な作品です。
一方、プランテーション・ソングは、南部の大農場で働く黒人たちの生活や心情をテーマとした曲で、『故郷の人々』『オールド・ブラック・ジョー』などがそれに当たります。
プランテーション・ソングは、第二次大戦後、公民権運動が盛り上がった頃、歌詞が差別的であるとともに、奴隷制時代を肯定的に描いているとして忌避されましたが、その内容を読むと、フォスターが黒人の生活に強い関心をもっていたことがわかります。
日本人がフォスターの曲を愛することは、アメリカ人以上かもしれません。
アメリカではフォスターがほとんど忘れられていた時期がありましたが、日本では明治21年(1888)に『故郷の人々』が『明治唱歌第二集』に大和田建樹作詞『あはれの少女』として登場して以来、「敵性音楽」として排除された太平洋戦争中を除き、一貫して小、中、高校の音楽教育に使われてきました。
それほどに愛され、評価されたフォスターですが、その生活は惨めでした。著作権の概念がほとんどなかった時代だったので、ヒット曲をいくら作っても、ほとんど印税がもらえなかったのです。
晩年は酒におぼれ、1864年、37歳のとき、ニューヨーク・マンハッタンの安ホテルで倒れ、その3日後1月13日に病院で亡くなりました。そのとき、彼のポケットには38セントしかなかったそうです。
その亡骸は、生地ピッツバーグのアレゲーニー墓地に埋葬されました。また、ピッツバーグ大学の構内には、フォスター記念館があります。
(二木紘三)
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コメント
フォスターが37歳で亡くなっていたと知って胸が締め付けられます。1月のNYは寒かったことでしょう。殆んど行き倒れに近かったのでしょうか。歳末で雪が降り積もっている今夜、家の無い人が苦しんでいるのではないかと気になります。
投稿: Bianca | 2009年12月31日 (木) 20時39分
大好きな曲です。
また 綺麗さで トップを争う曲の様に
思います。
私は どーも 悪夢より帰りてが多い(笑)
ありがとうございます。
投稿: 二宮 博 | 2010年1月 6日 (水) 19時15分
優しさが織り込んできた!
投稿: 桒山雅妃 | 2010年2月 5日 (金) 22時01分
とても美しい曲ですね。
英文の歌詞の二番の途中に"Mermaids are chaunting"とありますが、これは"chanting"の誤記ではないでしょうか? うちの薄っぺらい英和辞典にはそちらの単語しか見あたりません。
投稿: 九鬼 隆訓 | 2010年2月22日 (月) 22時39分
九鬼隆訓様
chauntはchantの古語で、大きな辞書には載っています。ローレライの伝説を歌っているので、わざと古い言葉を使ったのでしょう。(二木紘三)
投稿: 管理人 | 2010年2月22日 (月) 22時59分
そうですか。勉強になりました。ありがとうございました。
投稿: 九鬼 隆訓 | 2010年2月22日 (月) 23時10分
昔この曲を教わった頃は、フォスターの惨めな生活、若くしての孤独な死のことなど、何も知りませんでした。
「夢路より」が最後の作品となったようで、この夢のように美しい曲が生まれた状況を思うと、今までのようにただウットリとして聴いてはいられなくなりました。
聴く度に深く慰められるのですが、同時に心が痛みます。
投稿: nobara | 2010年4月26日 (月) 00時15分
この曲は昔から知っていましたが、こちらで聴いてから大好きになりました。
本当にとても美しい曲ですね。
フォスターの曲は全部好きですが、この「夢路より」が一番好きです。
投稿: あきこ | 2011年3月 2日 (水) 13時20分
来たる2/3日福岡市の百地大ホールでギターアンサンブルで弾く曲です とても綺麗な曲です、晩年は安ホテルでなくなりましたが偉大なフォスターの曲を奏でる喜びが、、、無料です聞きに来てください
投稿: 山口海南男 | 2012年11月23日 (金) 19時42分
メロディの美しさはもう賛美歌なみですね。
この「夢見る人」掲載されるとしたら高校の教科書でしょうか。
私の高校では音楽は「選択科目」の中の一つで、私のクラスは「美術、用器画」を強制的に選択させられて、悲しい想いをしました。
音楽室から♪あまつみつかい〜の…♪などとコーラスが流れてくると、悔しかったです。 「夢見る人」はラジオやテレビにてよく聴く機会がありましたのでウットリと聴き惚れていました。 晩年不幸だったフォスターの為にも彼が残して行った多くの名曲を歌い継いでいきたいですね。
投稿: かせい | 2013年11月19日 (火) 00時53分
フォスターの歌は、メロディが美しいゆえに好きな歌が多いですが、中でも、「夢路より(夢見る人)」や「やさしいアニー」などがお気に入りです。日本語歌詞による歌もさることながら、ロジェ・ワーグナー合唱団やバリトン歌手のトーマス・ハンプソンさんによる原語(英語)の歌も、CDで好んで聴いております。
その昔、中学生時代に、学校からフォスターの伝記映画を見に行ったことを思い出します。タイトルなどはとうに失念してしまいましたが、短い人生において、あまり幸せな終末ではなかったなあと記憶しています。しかし、残された数々の名曲は、永遠の命を得て、多くの人々に愛され続けるものと思います。
投稿: yasushi | 2017年4月27日 (木) 17時17分
高校生のころに「百万人の英語」だったと思いますが、この曲が出ていたのを覚えています。放送でメロディーを聞きました。「草競馬」など数多の名曲を書いたフォスターが夭折し、不幸だったと知ると、こんなきれいな曲を書いたのにと思います。
投稿: 江尻陽一 | 2017年4月29日 (土) 00時20分
江尻陽一様
一年半以上のカメレスで失礼いたします。
私もラジオの「百万人の英語」で聞きました。
テキストの付録に、この曲が入った赤い色のソノシートがついていたような記憶があります。
タイトルは「夢路より」でした。
私も高校生でした。「百万人の英語」のジェームス・B・ハリス先生、懐かしいですね。
投稿: いぶさん | 2018年11月14日 (水) 00時01分
名曲揃いのフォスターの作品の中に、”静かに眠れる麗しの君”( Sweetly She Sleeps My Alice Fair)という地味な曲があります。
これを知ったのは、1966年にミッチ・ミラー合唱団の来日公演があり、メンバーの一人として来たボブ・マグラスなる歌手が、何故か不二家のCM曲をテレビで歌い日本で人気が出ました。その勢いでフォスターの曲を歌ったLPアルバムが企画され、同曲が挿入されたのでした。
私も初めて聞いた曲でしたが、哀愁感にあふれた歌詞とメロディの佳曲で忘れ難いものでした…。
投稿: ジーン | 2023年12月18日 (月) 16時57分