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2010年1月25日 (月)

春一番

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞・作曲:穂口雄右、唄:キャンディーズ

1 雪がとけて川になって 流れて行きます
  つくしの子が恥ずかしげに 顔を出します
  もうすぐ春ですねえ
  ちょっと気取ってみませんか
  風が吹いて暖かさを 運んできました
  どこかの子が隣の子を 迎えにきました
  もうすぐ春ですねえ
  彼を誘ってみませんか
  泣いてばかりいたって 幸せはこないから
  重いコートぬいで 出かけませんか
  もうすぐ春ですねえ 恋をしてみませんか

2 日だまりには雀たちが 楽しそうです
  雪をはねて猫柳が 顔を出します
  もうすぐ春ですねえ
  ちょっと気取ってみませんか
  おしゃれをして男の子が 出かけて行きます
  水をけってカエルの子が 泳いで行きます
  もうすぐ春ですねえ
  彼を誘ってみませんか
  別れ話したのは 去年のことでしたね
  ひとつ大人になって 忘れませんか
  もうすぐ春ですねえ 恋をしてみませんか

  雪がとけて川になって 流れて行きます
  つくしの子が恥ずかしげに 顔を出します
  もうすぐ春ですねえ
  ちょっと気取ってみませんか
  別れ話したのは 去年のことでしたね
  ひとつ大人になって 忘れませんか
  もうすぐ春ですねえ 恋をしてみませんか
  もうすぐ春ですねえ 恋をしてみませんか

《蛇足》 昭和51年(1976)3月発売。春一番が吹くころになると、いまだによく流されます。

 キャンディーズは、ラン(伊藤蘭)、スー(田中好子)、ミキ(藤村美樹)の3人から成るアイドル・コーラスグループ。

 女性タレントを3人セットにしてプロモートする芸能手法は昭和20年代後半からあり、元祖は美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの三人娘。その前に、水谷良重、黒柳徹子、横山道代が三人娘と呼ばれましたが、歌手ではありませんでした。

 その次は、昭和30年代後半に活躍した「スパーク三人娘」。伊東ゆかり、中尾ミエ、園まりの3人で、所属プロダクションの名前から「ナベプロ三人娘」とも呼ばれました。
 次がキャンディーズで、同じ時期に南沙織、小柳ルミ子、天地真理の「新三人娘」や、森昌子、桜田淳子、山口百恵の「中3トリオ」も活躍しました。

 このうち、キャンディーズ以外は、いずれのメンバーもソロ活動が主体で、ユニットで活動するのは映画やテレビ番組に出演するときだけでした。
 デビューから解散時まで常に3人で活動したのは、キャンディーズだけです。

 キャンディーズは人気絶頂期の昭和52年(1977)夏、公演中に突然解散を発表しました(実際の解散はその半年後)。そのときランが叫んだ「普通の女の子に戻りたい」は、流行語になりました。
 しかし、解散後しばらくしてから、3人とも個別に芸能活動を再開し、「普通の女の子」には戻りませんでした。スターという美酒、というより魔酒を一度味わうと、それから抜け出すのはむずかしくなってしまうのでしょうか。

 女性3人のコーラスグループとしては、このほか『山のロザリア』をヒットさせたスリー・グレイセスや、『黄色いさくらんぼ』の大ヒットを生んだスリー・キャッツなどがありますが、いずれもアイドル性で勝負するタイプとは異なるグループです。

 ところで、春一番が吹き、日照時間が長くなり、草木が芽吹き、花が咲く時期になると、なぜ気分が浮き立ってくるのでしょうか。これは、待ちこがれていた春がやっと来たという喜びに加えて、性腺刺激ホルモンがかなり影響しているようです。

 額のすぐ裏側にある松果体(しょうかたい)が光量の増加を感知すると、その情報が視床下部(ししょうかぶ)に送られ、それを受けて、性腺刺激ホルモンの放出を促すホルモンが分泌されます。すると、脳下垂体で性腺刺激ホルモンが放出され、その刺激によって、性腺(精巣や卵巣)から産生される性ホルモンが増加します。
 性ホルモンは、いってみれば発情ホルモンですから、これがウキウキする気分、異性を求める気分につながるわけです。

 ただ、冬から春へという日照や気温の変化の激しい時期には、ホルモン分泌が不安定になりがちです。ホルモン・バランスが崩れると、楽しかるべき春なのに、なんとなく憂鬱になったり、気が重くなったりすることがあります。これがいわゆる春愁(しゅんしゅう)というやつです。
 女性のホルモン・システムのほうが季節変化の影響を受けやすいので、春愁を味わうのは女性のほうが多いといわれます。

 私は、性ホルモンにあまり左右されない歳になりましたが、それでも春一番が吹く季節になると、心が躍ります。
 それは青春期における沸き立つような気分の昂揚とは質的に違うような気がしますが、格別残念とは思いません。そういう感覚の記憶が残っているだけで十分です。

(二木紘三)

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コメント

これだけキュートで愛くるしい三人娘はその後出ていないのではと思います。男達が狂わされたのも、うなずけます。(年下の男の子も)歌にも品がありました。

投稿: 海道 | 2010年1月26日 (火) 12時30分

3人娘といっても 各プロダクションが売り出すために無理やり合わせたでなく 初めからちょっと身近な女性アイドルを複数セットで売り出したもので その後のおにゃんこクラブ スピード モーニング娘につながるものでしょう。それにしても女の子てみんなアイドルの要素あるからな ある意味禁じ手の始まりだったかも

投稿: alude2500 | 2010年1月26日 (火) 22時54分

二木先生のコメントにありましたが、春になると気分が浮き浮きしてくるのは、私も何らかの物質が脳に刺激を与えているんじゃあないかと思っていました。

以前、ラッシュアワーの上野駅乗換え通路で、背広を着てバレーダンサーのように踊りながら歩いているおじさんを見ました。毎年春になると頭が変だと思われる人がしばしば現れますよね。

3人娘は、その後それぞれ幸せになっているようでうれしいです。

投稿: いっちゃん | 2010年1月29日 (金) 20時33分

「春一番」という言葉はこの歌で一般にひろく知られたので明るいイメージがありますが、語源には次のような悲しい事実があります。1859(安政6)年旧暦2月13日、長崎県五島沖に出漁した長崎県壱岐郷ノ浦の漁師53人は、春の強い突風に遭い全員水死しました。このときから郷ノ浦の元居では、春の初めの強い南風を「春一」または「春一番」と呼び、この風が吹くまでは漁師は出漁するのを恐れたと言われています。
気象庁天気相談所では「春一番」を次のように決めています。「立春から春分までの間で、日本海で低気圧が発達し、初めて南寄りの強風が吹き気温が上昇する現象」

投稿: みやこびと | 2010年1月31日 (日) 00時07分

庶民的で「普通の女の子」三人を合わせて発足したキャンディーズなだけにアイドルとして親しみを持て、曲も素朴でいて俗悪でない温度感が感じられます。
小生は「微笑み返し」に特にはまっています。

投稿: 真鍋清 | 2010年3月 4日 (木) 04時26分

「春一番」は、「はえの風」と呼び、私の育った村(長崎県壱岐郷ノ浦の対岸)では灰色イメージとなっています。関東大震災の年の春先のことです。農家の人たちは漁師部落の網元が仕立てた船(当時は帆掛け舟)で直線距離で5里ほどの対岸の諏訪神社に参詣に出かるのが慣わしとなっています。この、お諏訪様参りは田植えが始まる農繁期まえのかたときの娯楽です。その年は、二艘の船が大勢の村の農家の参詣者をのせて漕ぎ出しました。このなかの一艘は新造船で足が軽く自慢の船との評判。若い男女がこの船に競って乗り込んだそうです。海路なかばに差し掛かったとき、突然、南からの強風にあおられ新造船は転覆、全員海に投げ出されたそうです。晴れ着で着飾った子女が次々と海面から姿を消し多くの犠牲者がでました。私の祖父、父,叔母は一命を取り留めましたが叔父(当時9歳)は水死しました。幼い娘を固く抱きしめた姿で引き上げられた水死の母子はその家に運びこまれてやっと離れてくれたという話しを聞いたことがあります。いまでも遭難者の慰霊碑が村の墓地の一角にあります。村人は遭難の様子を口にすることはありません。全国から義援金が届けられたそうですが関東大震災の発生を境にそれも途絶え今ではすっかり忘れ去られています。九州玄界灘は海難事故が多発するところです。「春一番」を心地よく耳にすることができないのは、父から受け継いだ遺伝子のせいでしょうか。

投稿: 亜浪沙 | 2010年4月27日 (火) 18時29分

「冬が来る前に」「春一番」が吹かないかと願う今日このごろです。今では温暖な地に住みながらそう思います。四季の歌が成り立たなくなっても冬はいらない。

投稿: 海道 | 2012年10月30日 (火) 16時45分

https://www.youtube.com/watch?v=spWK12T1p18
うまく貼り付けられたかどうかわかりませんが、田中好子さんの最後のメッセージがとても立派です。私もこんな風に死ねたらと思います。ご冥福をお祈りいたします。

投稿: ぽん | 2015年4月21日 (火) 16時42分

「春一番」昭和51年春に転職したばかりだった私は、当時ヒットしていたキャンディーズのこの唄に、ずいぶん元気をもらいました!

心機一転、知人の紹介で入社したこともあり、何としても少しでも上へいけるようにとの思いで、毎日休日返上でわき目もふらず懸命で働いていましたが、慣れない職場環境の中で、しんどいことも多く、悩んだり孤独感の強い日々が続いていました。ちょうどそんな頃、勤務先の通りにあったレコード屋さんから、キャンディーズが爽やかに歌う「春一番」が毎日のように流れていました。そのうちにこの曲を聴くと何だか元気になってくるようで、私は迷わずシングルレコードを買いました。その時のことが今でも懐かしく想い出されます。

もちろんキャンディズのLPレコードアルバムも持っていますが、そんな数あるヒット曲の中でも、一番をあげるとすれば、やはり精神的に一番しんどい頃の私を元気にしてくれた、想い出深いこの唄「春一番」です。

泣いてばかりいたって 幸せはこないから
重いコートぬいで 出かけませんか ♪♪♪

上記の詩は融通の利かない当時22才の私にとって、仕事がスムーズにいくための大きなヒントにもなり、力を抜いて業務に取り組むことの大切さを教えてくれました。
その後、現在の恩師の引き立てもあり、30代40代と人脈を広げることにも繋がりました。
大げさに言えば、キャンディズの「春一番」は、私が感謝したい一曲でもあります。

ランちゃん・スーちゃん・ミキちゃん・三人とも本当に可愛い素敵な人たちでした。

投稿: 芳勝 | 2019年3月 6日 (水) 00時57分

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