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2010年5月21日 (金)

あふるる涙

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo



作詞:Willhelm Müller、作曲:Franz Schubert、
日本語詞:大木惇夫

1 あふるる涙の 雪野にちらえば
  むさぼりて飲みぬ 燃ゆる悩みを
  熱き悩みを

2 千草の芽生えに なよ風そよげば
  ああ氷くだけて 雪も溶けて流れん
  雪も流るる

3 雪よ流れては いずちへ行くや
  この涙をこめ 小川に注がん
  なべて注がん

4 一日めぐりて 流れゆくまに
  涙燃えなば 君が家(や)の近きを
  それと知らんか

Wasserflut

Manche Trän' aus meinen Augen
Ist gefallen in den Schnee;
Seine kalten Flocken saugen
Durstig ein das heiße Weh.

Wenn die Gräser sprossen wollen
Weht daher ein lauer Wind,
Und das Eis zerspringt in Schollen
Und der weiche Schnee zerrinnt.

Schnee, du weißt von meinem Sehnen,
Sag', wohin doch geht dein Lauf?
Folge nach nur meinen Tränen,
Nimmt dich bald das Bächlein auf.

Wirst mit ihm die Stadt durchziehen,
Muntre Straßen ein und aus;
Fühlst du meine Tränen glühen,
Da ist meiner Liebsten Haus.

《蛇足》 シューベルトが1827年に作曲した連作歌曲集『冬の旅』のうちの1曲で、原題は"Wasserflut"。

 『冬の旅』は、1823年に作曲された『美しき水車小屋の娘』と同じく、ドイツ・ロマン派の詩人ヴィルヘルム・ミュラーの詩集に曲をつけたもの。
 ミュラーはドイツ文学史ではとくに重要な位置を占めておらず、言い方は悪いけれども、シューベルトが曲をつけたおかげで、人びとの記憶に残っているといった感があります。

 しかし、その詩は美しく、不安や憂鬱、苦悩、愛、ときには死の賛美などをテーマとするロマン派の特徴をよく表しており、心に染みこんでくるものがあります。

 『冬の旅』は失恋した若者が深夜村を出て、町から村へ、村から町へとさすらい続けるという筋書きで、全24曲から成っています。その6曲目がこの歌で、その前の5曲目が日本でも人気の高い『菩提樹』です。

 この"Wasserflut"は非常に日本語詞が多く、タイトルも訳者によって、『洪水』『増水』『あふれる涙』『雪どけの水流』などいくつもあります。
 それらのなかには、意味を訳しただけのものもありますが、上掲の歌詞は楽譜についていたもので、実際に歌えます。
 訳詞者がわかりませんでしたが、三瓶さんからの情報に基づき、JASRACのデータベースで調べたところ、大木惇夫だとわかりました。

(二木紘三)

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コメント

二木先生いつもお世話様になっており、感謝申し上げます。
さて”最近の記事”の欄で「溢るる涙」とあり、昔歌ったことがあるので、大変懐かしく思いました。
さっそく手元のシューベルト歌曲集・冬の旅ー低声用ーを見たら、日本語の訳詩は全く同じでした。
世界名歌曲全集 2 冬の旅(低声用)
発行所 音楽之友社 昭和42年11月30日 第1版発行
           目  次
        WINTERREISE
           冬 の 旅
                大木惇夫
                      訳詩
                伊藤武雄

以下24曲の曲名             最後に
原詩直訳            高橋英夫
と記載されていました。 お役にたつかどうか・・・。

投稿: 三瓶 | 2010年5月22日 (土) 19時57分

「日本語で歌う冬の旅」歌:斎藤晴彦―ピアノ:高橋悠治、というCDがあります。今年古稀を迎えた晴彦君が例のアテレコの調子で歌っており、この6番は平野甲賀訳「涙川」と題しています。
涙はとめどなく雪の表にこぼれて まるでああ砂のように 熱い悲しみのみこんだ 熱い悲しみのみこんだ
若草萌えいでると風はなまあたたかく 雪は溶けて流れて ひとしれず消えてゆく ひとしれず消えてゆく 
雪よおしえておくれ おまえはどこへ行くのか 涙のあとを追い 川がおまえをむかえにくる 川がおまえをむかえにくる 
雪溶け水川をみたし はなやかな町をさまよう 涙がさがしあてた あの人がここにいたと あの人がここにいたと             ■

投稿: 大坂一義 | 2010年5月23日 (日) 19時40分

シューベルトの「冬の旅」の中の一曲「あふるる涙」このサイトで初めて聴きました。何か心魅かれるいい曲ですね。中学か高校の音楽の時間に「冬の旅」「木の葉は散りて 風は寒く  わが行く旅の 道は通し・・」と歌ったことを思い出しています。この歌詞の曲が何番なのかも分かりません。「あふるる涙」の楽譜、音符の下に歌詞の書いたものがあれば、歌ってみたいものです。

投稿: 上原 | 2010年9月 1日 (水) 22時22分

最初にある三瓶さまの投稿より古い昭和28年音楽の友社発行の同じような曲集が家にありました。内容はまったく同じようです。今月ヤフオクでHermann Prey歌唱の「冬の旅」のCDを180円で落札購入しました。それは60年前の高校のときに「あふるる涙」を音楽の授業で習い、さらに処分してしまったレコードがあったので、安いからちょっと聞いてみようと思ったからでした。聞いたらドイツ語なのではっきりしませんが、どうも歌い手が違う感じです。また最初に示されている日本語歌詞は高校で習った歌詞と違います。あやふやですが、それは「あふるる涙の雪に落つれば、冷たい粉雪溶けて消えぬうぅー、熱き思いに」のようでした。ネットで探しましたが見つかりませんでした。訳詩はいろいろあるようですね。

投稿: 吊るし雲 | 2013年11月13日 (水) 09時51分

手元の本には 三瓶さんが書かれておられるように
大木惇夫 伊藤武雄 共訳 となっています。
                      

投稿: なち | 2013年11月13日 (水) 11時06分

あふるる涙、あばよ、アフトン川の流れ、、
知らない三つのメロディーが黒い縦線を青に変えつつ確実に秒を追って流れてゆく。嗚呼、音が返ってきました。この部分と、ブルーのサークル/Utamonogatari/Soundcloudを含むグラフィックが綺麗に整い、鮮やかな衣替えを試されていらっしゃる。おみごと!作業量の点もあり、今後どうされるか不明ながら、とまれ、いたく感謝申し上げます。
[追記]’あばよ’歌詞の達者ぶりに感銘、かつ共感をおぼえます。

投稿: minatoya | 2014年3月 8日 (土) 10時53分

『冬の旅』は失恋した若者が深夜村を出て、町から村へ、村から町へとさすらい続けるという筋書きで、全24曲から成っています。その6曲目がこの歌で、その前の5曲目が日本でも人気の高い『菩提樹』です。
~二木先生の蛇足より~
古希目前のりんごは記憶力減退著しきも昔のことは鮮明に甦ります。何回もコメントした「15歳の私にシューベルトの冬の旅云々」の党員教師の件です。さすがにシューベルトで釣ったのは高校生の折でした。先生の蛇足を読むにつけても「シューベルトの冬の旅」で洗脳するとはロマンチックでもあり可笑しくもあります。中学時代はもっと直接的な
「○○党と○○リカを倒さなければならない。平等な社会の実現のために騙されるな」などで洗脳されたことを思い出しました。
古希目前の私なのに扉一枚向こうが未だ十代に思えます。かくも人生は短いということでしょうか。

投稿: りんご | 2016年7月19日 (火) 20時42分

高校の音楽の教科書には載っていましたが、習わなかった曲の一つです。
 
 君ゆえ あふるる 切なき涙
 炎と燃ゆるを 雪に融かさん
 雪に融かさん

 緑の草萌え そよ風吹けば
 氷もなずみて 雪に融けなん
 雪に融けなん

という歌詞だったと思います。

音譜を拾いながら、友だちと歌っていました。
SPレコードで「冬の旅」を聞く機会はありましたので、バリトンの歌声も懐かしく思い出します。

投稿: solong | 2016年12月17日 (土) 22時04分

冬の旅  第6曲

「あふるる涙」

溢れ湧く涙が私の眼から
雪の上にしたたり落ちる
つめたい雪片が、むさぼるように
熱い悲しみを飲みこんでゆく

若草がもえ出ようとする頃には
なま温かい春風が吹きわたり
氷はわれて小さなかけらとなり
淡雪は消えてしまうだろう

雪よ、お前は私の願いを知っていよう
とけて流れて、一体どこへ行くのだ
私の涙に従って行くなら
まもなく小川に行きつくだろう

小川とともに町なかを流れて
にぎやかな通りを出入りするときに
私の涙が熱くたぎるのを感じたなら
そこに私の恋人の家があるのだ


寂しい曲調です。ネット化の時代を見ることなく亡くなった恩師が連想されます。
彼の世から現在の日々をを見たらどう思うだろう。
冬の旅をいともやすやすとユーチューブで鑑賞できるなんて??!!
二木先生同様に敬愛するM様のblogによれば
トリノ冬季オリンピックでこの歌を歌ったパバロッテイが口パクとは~人生いろいろの感です。

投稿: りんご | 2019年1月14日 (月) 13時43分

 昨日から あふれでる涙 が続いている

  何をみても 何にであっても 涙である

  心を刺激する 私的なできごとも 二三はあるが
  主たる涙の要因は 稀勢の里関の出来事である

  きつい 辛い 年月だっただろう
   弱音も吐かず 頑張りとおされた 

  素晴らしい 無二の方だったと考える

  その方に対し 横綱の権威を失墜させたという評論
  をのせている新聞社 S があった
  アメリカのFOXのように 時の権力 政権に阿り
  自分たちの都合のよいように 大衆 思想
    を誘導する 糞くらえだ

  引退発表後 錦木 の不戦勝の勝ち名乗り 直後 
   本人不在の 国技館内で
    稀勢の里 との 呼び声がきかれ
    ありがとう の感謝の大声が 聞けたとのこと
  
  皆さんの 遣る瀬無さ 感謝の気持ち
    いろんな感情の入り混じった
  日本人の 素晴らしい心の現れだったと
    記憶にのこした 涙が流れてとまらない

 
  それに比べ 虚偽 虚偽 隠蔽の 
  糞まみれの  政府 官僚 
   いつまで 国民は黙っていろのだろう

  涙 と 怒り に溢れた 日が続く

投稿: 能勢の赤ひげ | 2019年1月17日 (木) 13時47分

この「あふるる涙」も、シューベルトの他の歌曲「アヴェ・マリア」、「シューベルトのセレナーデ」などとともに、聴いていて、上品な美しさが感じられ、心が洗われるように思います。

私が思い起こす日本語の歌詞は、♪涙は散りて たちまち霜に(真白き雪に?)…♪で始まるものです。
子供の頃に、兄が口遊んでいるのを聴いて憶えたか、学校で習ったのかは、全く思い出せません。歌詞の全文、訳詩者名を知りたくて、ネット検索を試みましたが、叶いませんでした。
どなたか、ご存じの方、ご教示くだされば嬉しく存じます。

投稿: yasushi | 2020年7月14日 (火) 15時26分

この歌詞ではないでしょうか。
「あふるる涙」

溢れ湧く涙が私の眼から
雪の上にしたたり落ちる
つめたい雪片が、むさぼるように
熱い悲しみを飲みこんでゆく

若草がもえ出ようとする頃には
なま温かい春風が吹きわたり
氷はわれて小さなかけらとなり
淡雪は消えてしまうだろう

雪よ、お前は私の願いを知っていよう
とけて流れて、一体どこへ行くのだ
私の涙に従って行くなら
まもなく小川に行きつくだろう

小川とともに町なかを流れて
にぎやかな通りを出入りするときに
私の涙が熱くたぎるのを感じたなら
そこに私の恋人の家があるのだ

投稿: 海道 | 2020年7月14日 (火) 16時44分

海道様の、ご親切なコメント(’20-7-14)を、有難く拝読しました。

残念ですが、私が探しておりました、♪涙は散りて…♪で始まる歌詞とは異なるようです。
歌詞1~4番にわたる大作をup下さり、労を煩わせてしまいました。

これに懲りずに、これから先、♪涙は散りて…♪で始まる「あふるる涙」に出会うことがありましたら、どうか、ご教示下さいますよう、よろしくお願い致します。

投稿: yasushi | 2020年7月15日 (水) 17時02分

yasushi様が投稿された「あふるる涙」の歌詞は次のものではないでしょうか。半世紀近く前に、高校の音楽の授業で習ったのですが、当時の教科書(教育出版)には掲載されていません。従って、訳詞者が分かりません。

涙は散りて 真白き雪に
嘆きは深く 谷間に閉ざされて
術なきわれは
若草萌え出で 春風吹きて
雪は溶け 水に流れ
消えゆく悩み もの想うわれは

涙は散りて 真白き霜に
憂いは深く 野末に佇めり
術なきわれは
春の日〇〇〇〇〇 そよ風吹きて
また来る春の日 溶けゆく憂い
憧るわれは

すみません。2番の歌詞の一部が思い出せません。分かりましたら、また投稿します。

投稿: KOGURE | 2021年9月20日 (月) 14時11分

KOGURE様からのご親切な投稿、感謝に堪えません。

ご教示ありました歌詞に目を通しますと、♪術きなきわれは♪や、♪雪は溶け 水に流れ 消えゆく悩み♪”など、”そうだ、こんな歌だった”と、大変懐かしく感じております。長い間の懸案事項が解決した思いです。
それにしても、格調高い、素晴らしい訳詞だと思います。(訳詞者が不明だとしても)

KOGURE様には、この歌を高校の音楽の授業で習われた由、私(昭和12年生まれ)も、高校1、2年で音楽を選択し、そこで習った歌の幾つかは、この歳になっても時々口遊んでおり、かけがえのない宝のような存在です。

投稿: yasushi | 2021年9月20日 (月) 16時24分

yasushi様の投稿、拝見しました。ご満足いただけ、投稿した意味がありました。
私は昭和16年の生まれで、高校で音楽を選択しました。1~2年で使用した教科書がまだ手元に残っています。シューベルトの曲は、2年生で使用した教科書に、「セレナード」と「春を思う」という2曲が入っています。
前回投稿の2番の歌詞の一部が思い出せずにいました。何回か口ずさんで、それらしきものが蘇ってきたのですが、歌詞の次の行と似ているので、確信が持てません。一応、お知らせしておきます。

涙は散りて 真白き霜に
憂いは深く 野末に佇めり
術なきわれは
春の日溶け出で そよ風吹きて
また来る春の日 溶けゆく憂い
憧るわれは

投稿: KOGURE | 2021年9月25日 (土) 17時37分

KOGURE様からのご親切な、再度の投稿、有難うございます。
これで、”涙は散りて 真白き雪に…”の歌詞、1、2番とも明らかとなり、とても嬉しく存じます。

さて、お便りによれば、KOGURE様には、高校1、2年で音楽を選択され、そそとき使用された教科書が、今も、お手許に残っているとの由、高校音楽に対し並々ならぬ愛着がおありだったからだろう、と敬意を憶えます。

私も高校1、2年で音楽を選択しましたが、当時の教科書は、疾うに、実家の引越しの際に失われていました。そこで、10年ほど前に、当時の教科書の所在をネットで調べ、近隣自治体の教育委員会の図書室へ出向き、閲覧の機会を得て、昔習った歌の数々に再会できました。
KOGURE様とは、学年が割合近い(4学年位の差)ことから、ひょっとして、同じ歌を習っておられるかもと思い、教科書の目次などを、”交流掲示板”に投稿させて頂きました。よろしかったら、ご覧ください。

投稿: yasushi | 2021年9月26日 (日) 13時01分

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