« おさななじみ | トップページ | 海 »

2010年6月24日 (木)

俺はお前に弱いんだ

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:石巻宗一郎、作曲:バッキー白片、唄:石原裕次郎

   「遅くならないうちに
   今日はこのまま帰ろうね…」

1 つれないそぶり したけれど
  俺の胸は 燃えている
  好きだと云えぬ なぜ云えぬ
  古い傷あと あるからさ
  ただそれだけ

   「またここまで来てしまったね
   じゃ、おやすみ…」

2 いつも別れる さよならと
  暗い露地の 曲り角
  やさしく抱いて なぜやれぬ
  うぶなお前を みつめたら
  ただ泣けるぜ

   「しょうがない娘(こ)だな
   あまえてばっかりいて…」

3 今日もあしたも あえるのに
  無理を云って 困らせる
  叱ってやれぬ なぜだろう
  俺はお前に 弱いんだ
  ただそれだけ

《蛇足》 昭和39年(1964)にシングル販売。売上枚数175万枚は、裕次郎の歌のなかでは7位。

 この年、彼は『赤いハンカチ』『夕陽の丘』『鉄火場破り』『殺人者を消せ』『敗れざるもの』『黒い海峡』と、6本の作品に主演しています。
 『赤いハンカチ』は昭和37年
(1962)のヒット曲、『夕陽の丘』は昭和38年(1963)のヒット曲をそれぞれ映画化したものです。
 『俺はお前に弱いんだ』は、かなりストーリー性のある歌ですが、映画化はされませんでした。

 石原裕次郎は100本近い映画に出ており、そのうちのかなりの数が興行的に成功しています。
 しかし、作品的には恵まれませんでした。これは日活という会社の制作方針もあったでしょうが、国際的映画賞の対象になった作品や、日本映画史に残るとされる名作はほとんどありません。

 デビュー作『太陽の季節』は、日本映画史というより、もっと広くサブカルチャーの歴史に刻まれる作品ですが、主演は裕次郎ではなく、長門裕之でした。

 にもかかわらず、昭和30~40年代、多くの若者が彼の映画に殺到しました。彼らは作品を見にいくというよりも、裕次郎を見にいったのです。その意味で、石原裕次郎の最高の作品は、彼自身だったといってよいでしょう。

 俳優としてよりも、むしろ歌手としての成功のほうが大きかったといえるかもしれません。トップクラスの歌手も顔負けするほど多くのヒットを放ちました。
 最大のヒット曲は「銀恋」と略称される『銀座の恋の物語』ですが、私の好みからいえば、1位が『赤いハンカチ』、2位が最晩年に歌った『北の旅人』、3位が『夜霧よ今夜もありがとう』です。

 作曲のバッキー白片は、わが国におけるハワイアン音楽の草分けのひとり。ハワイ生まれの日系二世で、ハワイ大学医学部在学中にハワイアン音楽に傾倒、戦前に来日し、ハワイアン音楽の普及に努めました。のちに日本女性と結婚して帰化。

 戦争中は他の洋楽プレイヤーたちと同じく逼塞を余儀なくされましたが、戦後活動を再開、『小さな竹の橋の下で』『南国の夜』などをヒットさせました。
 平成6年
(1994)、82歳のときに死去。

(二木紘三)

« おさななじみ | トップページ | 海 »

コメント

アレンジが見事ですね。私の1位は「粋な別れ」です。

投稿: 海道 | 2010年6月26日 (土) 14時28分

私の時代の不世出の大スターといえば私見では、長島茂雄、美空ひばり、それに石原裕次郎がビッグスリーです。
記録、正統性、演技などの尺度を超えた、存在そのものが大スターの資格ではないでしょうか。
石原裕次郎の私の1位は「二人の世界」です。バックの鶴岡雅義のギターもよかった。
予断と偏見で言わせていただきました。

投稿: 周坊 | 2010年7月 6日 (火) 17時21分

二木先生の言われるとおりストーリー性があるのに映画化されなかったなんて、もったいなかったですね。

歌詞の内容だけではストーリーが広がらなかったのでしょうか。3番の歌いだし前の台詞「しょうがない子だな。甘えてばかりいて…」は、少し苦笑いといとしさをこめて、優しく笑いながら台詞に入るところが難しいと思います。

投稿: 吟二 | 2010年7月 6日 (火) 23時08分

懐かしい曲ですね~!。

大学4年生の時、
京都のダンスパーティーで、彼女と踊った曲!!!。
2年後、金沢の駅で、悲しい別れが待っていました。

今も、元気やら?。
しみじみ思いだしました。

投稿: 寂心 | 2010年11月 2日 (火) 18時18分

カラオケで唄うと受けます。
「セリフ」があるからでしょう。
「キザ!」とか「よくやるよ!」と言った野次も
 飛びました。
 唄の物語は、マヒナの「泣かないで」と似ていますが
 「俺は・・・」の方が男性的でやや暗く
  ドラマチック、
 「泣かないで」は日常のデートを優しいムードで
 包んでいるという感じです。
 どちらも好きな唄です。
 たしか、和田弘さんはバッキーさんの弟子だったと
 聞いていますが・・・・

投稿: 霧笛 | 2011年6月18日 (土) 21時24分

この歌は最初は「三島敏夫」が歌ったものです。彼がバッキーのバンドから離れた後に裕次郎が歌いました。
これはほとんど知られていません。私のレコードがそれを証明しています。
彼のほうが切なく、廃退的で好きです。

投稿: 小田継雄 | 2012年6月22日 (金) 14時57分

歌詞3番“今日もあしたもあえるのに無理を云って困らせる”女性が、特に妙齢の美女ならば、男としては素人・水商売の如何を問わずスネる美女に困ってみたいものです?!(所詮はショボイ年金暮らしの妄想です)
二木先生の好みが①『赤いハンカチ』②『北の旅人』③『夜霧よ今夜もありがとう』ならば、当方の場合は①『赤いハンカチ』②『夕陽の丘』③『俺はお前に弱いんだ』がベスト3になります。

投稿: 焼酎百代 | 2014年11月10日 (月) 21時36分

この歌を聴くと涙のスイッチが入ります。
今は亡き主人が好きな歌でした。
容貌も(裕次郎似)と言われ、甘い低音でカラオケで「100点」が自慢でした。半世紀近くも前の遠距離恋愛は侭ならず。「今日もあしたもあえるのに」のフレーズに又泣けるのでした。沢山の「ありがとう」を残して銀河の人となり早6年。久々に聴いて又涙が込み上げました。
二木さまありがとう。

投稿: りんごちゃん | 2015年1月23日 (金) 09時24分

不摂生と交通事故後遺症で病院通いしている戦争末期世代が大口叩けた義理でないですが、昨今の政治家財界人評論家作家スポーツ選手芸能人は、昭和20~50年代あたりに比べると超々小粒になってきた感がある今日この頃です。
例えば、政界:池田、佐藤、田中、三木、福田…、評論家:大宅壮一…、作家:松本清張、柴田錬三郎…、プロ球界:稲尾、金田、野村、長嶋…、芸能界:鶴田、勝新、裕次郎…大川恵子、香川京子(両人とも個人的に好みの女優)…、財界:東芝・土光敏夫、日立・倉田主税…、東映・大川博、東宝・藤本真澄、大映・永田雅一、松竹・城戸四郎、日活・堀久作、新東宝・大蔵貢…、各企業と経営者がたちどころに結びついたものでした(単なる懐旧談でした)。

投稿: 焼酎 | 2018年5月10日 (木) 13時08分

焼酎様

交通事故の後遺症で病院通いをされておられるとのこと、ざぞ難儀されてる事と思います。どうかくれぐれもお大事になさって下さい!
ご投稿での、各界の錚々たる著名人の中に、財界:東芝・土光敏夫の名があり、30代の頃を懐かしく想い出しました。
実はその頃、仕事上で困難になりそうな時、土光敏夫の本に共鳴し、夢中で読みながら、自分を奮い立たせては、頑張った時がありました。特に、土光敏夫名言集には、メンタル面で、随分と私は救われました。

「俺はお前に弱いんだ」、この歌は、私が幼い頃、今は亡き長男が、レコードをよくかけていました。

因みに、裕ちゃんの歌では、「こぼれ花」「夜霧の慕情」「二人の世界」が、私の好きなベストスリーです。

投稿: 芳勝 | 2018年5月11日 (金) 23時21分

芳勝様  交通事故後遺症へのお気遣い誠に有難うございます。
本曲はバッキー白片作曲ですが、「こぼれ花」(歌詞2番:ちょうど去年の今頃は泣くなと言えばなお泣いた(名調子!)…)、「赤いハンカチ」、「夕陽の丘」…は萩原四郎作詞・上原賢六作曲の名コンビの傑作でした。故土光敏夫の著書は読んだことはないんですが、昔読んだ週刊誌に「メザシの土光、質素な生活…」という記事が載っていた記憶があります。
↓uttchanさん提供「こぼれ花」「泣かせるぜ」メドレー…
http://www.dailymotion.com/video/x4muiyl

投稿: 焼酎 | 2018年5月12日 (土) 08時37分

土光敏夫さんが経団連の会長をやられて、行政改革に力を入れていらっしゃった頃は、まだ日本に儒教的な道徳心があった時代でした。経済界の最高権力者が朝食にに目刺しを食べ、一汁一菜のような求道的な生活態度をされ、率先垂範されるトップの清廉な生き方に国民は感動しました。

でも現代は、節約をしてけちけちと暮らす今までの生活態度は、お金のスムースな流れをを阻むあまり良くない生活態度と言われます。もっとみんな消費をした方が経済が活発になって景気や給料も良くなると言われます。何か180度違っちゃいましたね。

この前の焼酎さんのコメントに触発されて、本来の「俺はお前に弱いんだ」の評論と関係ない記事になりまして、申し訳ありません。

ところで、「俺はお前に弱いんだ」は、セリフの部分が命ですね。裕次郎の甘く胸に響くような声で囁かれたら、女性は忘れられなくなるでしょうね。男の私でも、つい興奮してしまいました。  5/12 吟二

投稿: 吟二 | 2018年5月12日 (土) 22時47分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« おさななじみ | トップページ | 海 »