(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo
作詞:藤田まさと、作曲:吉田 正、唄:鶴田浩二
(セリフ1) 「古い奴だとお思いでしょうが、古い奴こそ新しいものを 欲しがるもんでございます。どこに新しいものがございま しょう。生れた土地は荒れ放題、今の世の中、右も左も 真っ暗闇じゃござんせんか」
1 何から何まで 真っ暗闇よ 筋の通らぬ ことばかり 右を向いても 左を見ても 馬鹿と阿呆(あほう)の 絡み合い どこに男の 夢がある
(セリフ2) 「好いた惚れたとけだものごっこがまかり通る世の中でご ざいます。好いた惚れたはもともと「こころ」が決めるもの ……こんなことを申し上げる私もやっぱり古い人間でござ んしょうかねえ」
2 一つの心に 重なる心 それが恋なら それもよし しょせんこの世は 男と女 意地に裂かれる 恋もあり 夢に消される 意地もある
(セリフ3) 「なんだかんだとお説教じみたことを申して参りましたが そういう私も日陰育ちのひねくれ者、お天道(てんと)様 に背中を向けて歩く……馬鹿な人間でございます」
3 まっぴらご免と 大手を振って 歩きたいけど 歩けない いやだいやです お天道様よ 日陰育ちの 泣きどころ 明るすぎます おいらには
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《蛇足》 昭和45年(1970)12月にシングルリリース、翌年100万枚以上を売る大ヒットとなりました。
昔気質(かたぎ)の侠客が世情の乱れを嘆くといった設定ですね。
セリフ1の「生まれた土地は荒れ放題」と、1番を少し変えて「何から何まで真っ暗闇よ 筋の通らぬことばかり 右を向いても左を見ても 馬鹿と阿呆の絡み合い どこに日本の夢がある」とを合わせると、我が国の、とくに政界の現状そのものですね。
(二木紘三)
コメント
「膝を打つ」とはまさにこのことでしょうか。 まったく同感です。
40年前より現在のほうがよほど事態は深刻なようにも思えますが。
投稿: hnomura1 | 2012年4月28日 (土) 09時14分
鶴田浩二は「同期の桜」やこの歌のような世相を歌った曲にも味がありますが、「好きだった」「赤と黒のブルース」のようなムード歌謡も上手でしたね。だから美女にもてたのでしょうね。
投稿: 海道 | 2012年4月28日 (土) 16時23分
国民の大半が黒と思っているのに、一瞬にして白くなってしまった不思議な政治の世界、誰かが手品をしたのでしょうか。同じ侠客でも名月赤城山の国定忠治とこの歌の侠客は品格が違うように思われます。そういえば政治家にも侠客にも品格など必要がない国になっていたのですね。「奢れる者久しからず」を待つしかないのでしょうか。
投稿: ハコベの花 | 2012年5月 2日 (水) 23時00分
カラオケでは必ずセリフまで歌います。
いまだに残っているのは、歌手の魅力、今の世の中に見事に当てはまっているからでしょう。一度カラオケスナックのママさんからセリフまで歌い上げたのはあなただけですと言われました。いつの間にか私の十八番になりました。
投稿: newton | 2012年6月 5日 (火) 10時04分
この歌を最初に聞いたときの思い出です。
「今の世の中、右も左も真っ暗闇じゃござんせんか」
で始まり
その闇が「明るすぎます おいらには」
で終わるにはいくら比喩でもぶっ飛びすぎではないかと思っていました。
現在の世相をみるとこの明るさは戦後リベラリズムの行き着いた先、と同時に人間の心の中には闇を作ることもできるのだなと改めて思えました。
ノンポリ・リベラリズムの右のほうで過ごしてきた身にはアメリカ以外の外圧にさらされ始めた「戦後リベラリズム」の中核にあった人たちや論壇がどう変わるのか変われないのかそちらのほうが興味を引きます。
投稿: タンゴK | 2012年9月16日 (日) 10時38分
かつてやたらと人を「明るい人」と「暗い人」に分けたがる風潮が支配していた時代がありました。暗い人は生きる権利がないかのように言う人もいました。私はそんな思考が大嫌いで、そんなにいつもいつも明るく振舞えるはずはない、そんな人は余程無理をしているか、そうでなければ何も考えていないかのどちらかだ、と思っておりました。
そんな時、この歌を聴いたり歌ったりすると、むしろ救われる思いがしたものです。
鶴田浩二が歌うと、セリフ3の「馬鹿な人間・・・」の前に、失笑が入るところが好きでした。
投稿: 川口雄二 | 2014年8月23日 (土) 19時43分
吉田正は本曲の任侠歌謡を始め、都会派歌謡、ムード歌謡、股旅歌謡、企業イメージ歌謡、青春歌謡、恋愛歌謡…何でもござれの天才的作曲家でした。茨城の工業専修学校卒業後、タービン製造会社に就職という異色の経歴ですが(歌謡界では)、応召前に作曲の基礎を学んでいたそうです。
作曲家小林亜星氏が今年某スポーツ紙のインタビューで、「流行歌の世界が全くダメ。紅白もみんな昔の歌を歌っている…演歌なんて何も新しいものがない…作曲家、作詞家がいけない…何とか船とか何とか道中とかまだ作っている…いろんな経験と音楽的成熟が必要で、そういう人がいなくなった…」と語っていました。
投稿: 焼酎百代 | 2016年7月30日 (土) 17時59分
私も焼酎百代さんのコメントに大賛成です。
吉田正さんに限らずその時代前後の作曲・作詞には素晴らしい名曲が数多くあり、聴く者に喜怒哀楽への多くの想い出を誘ってくれたと思います。
私も後期高齢者、今現在の歌謡曲にはあまりピンときません。
何とか、以前の流行歌時代が再現できないものでしょうか。
時の流れといえばそれまでですが、何か寂しいものが感じられる今日この頃です。
コメントありがとうございました。
投稿: 一章 | 2016年7月31日 (日) 00時32分
松方弘樹逝去 合掌
東映は時代劇の斜陽化後は本曲の映画化「傷だらけの人生」、「網走番外地」、「兄弟仁義」…任侠路線に転換後、飯干晃一「仁義なき戦い」シリーズが大ヒットし、松方弘樹は金子信雄親分の山守組若衆頭の役でした。
「仁義なき戦い」シリーズの後は松方弘樹はTVドラマが中心でしたが、父親の近衛十四郎(素浪人月影兵庫、素浪人花山大吉シリーズ)に比べると線が細い感じがあり(個人的感想)、それはともかく鶴田浩二・菅原文太・高倉健に続き東映任侠スターが冥途に旅立ったのは寂しい限りです。
投稿: 焼酎百代 | 2017年1月25日 (水) 17時01分
鶴田浩二がマイクをハンカチでくるんで耳に手を当てて歌う姿は、手が脂性で従軍時に耳を傷めたのが原因だったと言われているようです(Wikipedia)。
片岡千恵蔵、市川右太衛門、月形龍之介、進藤英太郎、山形勲、大友柳太朗、近衛十四郎(松方弘樹の父)、大川橋蔵、東千代之介、中村錦之助、大川恵子、桜町弘子、長谷川裕見子(長谷川一夫の姪、船越英一郎の母)、鶴田浩二、菅原文太、高倉健、松方弘樹・・・東映全盛期の俳優女優の爪の垢でも、昨今のTV時代劇に出てくる俳優やタレントに煎じて飲んでもらいたいところです。昔話で失礼しました。
(BGM涙を抱いた渡り鳥)http://www.youtube.com/watch?v=98uiNElReFs
(BGMお月さん今晩は)http://www.youtube.com/watch?v=cCOU2ICb5KQ
投稿: 焼酎 | 2017年10月12日 (木) 18時09分
「傷だらけの人生」が流行ったのは私が十代の頃でしたが、あの当時、夜学帰りの巷にこの歌が流れると間奏に入る鶴田浩二の呟くようなセリフにしびれ、ただ聴き惚れていたことを想いだします!
セリフ3
「なんだかんだと お説教じみたことを申して参りましたが
そうゆう私も日陰育ちのひねくれ者、お天道(てんと)様に
背中を向けて歩く・・・馬鹿な人間でございます」
俳優多しと言えど、この語りかけるように呟く名セリフは、静かな凄みと哀愁を漂わせた名優鶴田浩二じゃないと出せない魅力だと思います。
焼酎様がUPして頂いたBGMに出てくる近衛十四郎ですが、幼い頃に時代劇好きな母と一緒に映画を観ていた頃は、役柄的におっかないという印象がありましたが、その後テレビでの素浪人「月影兵庫」や「花山大吉」では演じるキャラが面白く、たちまち大ファンになりました。
おからが大好きすぎる「花山大吉」が酒屋の亭主と言い合う場面、また品川隆二演じるどもり口調の「焼津の半次」との掛け合いも面白くいつも大笑いでした。このシーンは何度観ても飽きません。このバカタレが~は最高でした。
映画ポスターで観る近衛十四郎と長男で新人の松方弘樹、当時の人気映画、新吾十番勝負の大川橋蔵や若き日の里見浩太郎・幼い頃からファンだった大友柳太郎、それに加え東映3人娘の大川恵子・桜町弘子・丘さとみは可憐でした。
また当時のポスターには「総天然色」と載っており、その時代を懐かしく想いださせてくれました。
投稿: 芳勝 | 2018年7月20日 (金) 00時47分
鶴田浩二はWikipediaなどによれば、生い立ち、若い頃の映画撮影所での傍若無人な振る舞い、雑誌人気投票1位、裏社会との交友・・・毀誉褒貶相半ばだったようですが、「傷だらけの人生」は歌も映画も鶴田浩二の代表作でした。
本曲から話が外れて申し訳ありませんが、芳勝様のコメントの通り、「素浪人月影兵庫/花山大吉」と「焼津の半次」の掛け合い、好物おから、このバカタレが・・・ヘタな喜劇ドラマよりも味があったものです。
投稿: 焼酎 | 2018年7月20日 (金) 07時00分
この歌の語り手(主人公)のような時代遅れの侠客を、残侠というそうです。美空ひばりの歌で『残侠子守唄』というのがあります。
『傷だらけの人生』の決めセリフは
「なんだかんだとお説教じみたことを申して参りましたが、そういう私も日陰育ちのひねくれ者、お天道(てんと)様に背中を向けて歩く……馬鹿な人間でございます」ですが、
美空ひばりの『残侠子守唄』(たかたかし作詞 弦哲也作曲)にもきわめて似たセリフがあります。
「どこもかしこも、すっかり狂ってしまったようでございます。と、申しましても、夜毎 酒に溺れる私も、決してまともじゃございません」
と自分を「ひねくれ者」「馬鹿」「まともじゃございません」と卑下するセリフが似すぎています。
なぜでしょうね?数日、考えました。
自分のことをバカ、半端者という言葉を入れておかないと、歌を聞いた人から「えらそうに説教めいたことを言っちゃって」「あんた、何様?」という反撃を喰うことが予想されます。「いいえ、私はけちな野郎にすぎませんよ」と滑稽味をおびた予防線をはっておくのは賢明です。
関西弁でいう「ええカッコするな」というどす黒い心理が人間、大衆にはある。
ゆえに「なんだかんだとお説教じみたことを申して参りましたが」「私も・・馬鹿な人間でございます」というセリフは、聞く人に優越感を与え、反発をさけています。うーむ、流行歌の作詞家は大衆心理に精通しているなあと感じ入ったしだいです。
人生を長く生きた人が、今の時勢を嘆くのを聞くと「あなたもその時代の風潮に賛同し、その一員として(たとえ微小な存在だったとしても)時代を作ってきたんじゃないの」と言いたくなる。たとえば「豊かな生活こそ幸せ」「高収入こそ幸せ」というテーゼに賛同して半世紀を過ごしてきて、今になって自分を棚に上げて、「最近のご時勢は真っ暗闇だ」と言ってみても、どうかな~と思います。
投稿: 越村 南 | 2018年10月13日 (土) 16時58分
越村南さん、今晩は。南さんがコメントを書かれてから1年半経ちましたが、今日たまたま拝見しまして感心しました。鋭い心理分析だと思います。全く同感です。人間ってずるいところがありますから、その時代に合った善人の科白を言っていたのに、時代が変わると、或いは自分の利害得失が絡むと、前に言ったことと正反対の、その時代に合った善人のようなことを言いますよね。すみません、心が痛いです。
投稿: 吟二 | 2021年4月15日 (木) 22時09分
吟二さま、おそれいります。そんなことをいったことがあったかなあという気持ちで、自分の意見を再読しました。いやあ、ほめすぎです、恥ずかしい、恐縮です。
最近のコロナ禍の騒ぎですが、これこそ「右も左も真っ暗闇じゃあございませんか」ですね。コロナ禍はワアワア騒ぐものではなく、これから2,3年ほどじっと耐えて、なおかつ「日本人の生き方はこのままでいいのか」と問い直されているような気がします。
ベトナムでも、外国と取引のある会社の若い人は大変で、職業を変えた人もいます。日本語が上手で、努力もしてきたのに・・ほんとうにかわいそうです。私も今は無職の年金生活者です。気楽に生きることにしました。
吟二さまの「カスマプゲ」や「釜山港へ帰れ」などのご意見をよみ、「日韓の架け橋」あるいは「日中の架け橋」であろうとする心意気にうたれました。私もまったく同感です。
少数ですが、私の知り合いの中国人、台湾人や朝鮮人、韓国人、さらには多くのベトナム人は、みんな本当にいい人ばかりです。それは自信をもって言えます。
投稿: 越村 南 | 2021年4月16日 (金) 10時16分
この歌が流行ったのは1970年ですか。もう53年も前なんですね。あの頃は東映の任侠物が大ブームでした。日本人はヤクザでも「侠客」は大好きなんですね。むかし警視庁のトップの方(名前忘れました)も言っていた動画を見ました。清水次郎長、国定忠治、大前田栄五郎、吉良の仁吉、桶屋の鬼吉、その他たくさんいらっしゃった(つい敬語になっちゃた)と思います。「てめえら、かたぎの方に手を出すんじゃねえぞ」「弱気を助け、強きをくじく」。自分たちは基本的にはばくちで生業を立てていたり、次郎長は港湾事業を手広くやるなど、素人さんには悪いことをしないのが侠客というイメージですね。
それに比べると現代のヤクザは品格がガタ落ちですね。浪曲を聞いて育ち、今でも歌える世代にとっては残念!
ハッハッハ、こういう私も何にも知らねえひねくれ者、お天道様に隠れて歩く田舎もんでござんす。
投稿: 吟二 | 2023年2月 1日 (水) 21時43分
台詞3の「お天道様に背中を向けて歩く、馬鹿な人間でございます」。鶴田はこの「馬鹿な」の前に、自嘲気味に小さく笑うんですよね。ここに私はしびれます。カラオケでも真似して歌うんです。
おんなじように、東海林太郎の「すみだ川」のセリフ2で「何時も観音様をお参りするたびに」というくだりがありますが、浅丘ルリ子は「お参りするたんびに」と東京弁で言うんです。このセリフは田中絹代も島倉千代子も「たびに」と言っていたと思いますが、ルリ子は「たんびに」と言うんです。ここにまた私はしびれます。
ッ八ッ八、あっしも馬鹿な人間でございます。
投稿: 吟二 | 2023年4月29日 (土) 22時52分