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2013年8月23日 (金)

別れの夜明け

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:池田充男、作曲:伊藤雪彦、唄:石原裕次郎・八代亜紀


 (男)おまえは死ぬほど つくしてくれた
 (女)あなたは誰より 愛してくれた
 (男)過去を許して ささやかな
    明日(あす)を見つけた 恋なのに
(男女)なんで なんで なんで世間は
    切り離す


 (女)あなたに男の 強さを知った
 (男)おまえに女の いとしさ知った
 (女)熱い両手に ささえられ
    生きるたしかな 歓びを
(男女)肌で 肌で 肌で感じて
    きたものを


 (男)おまえも最後の グラスを乾した
 (女)あなたもせつない 吐息をついた
 (男)愛は燃えても 運命(さだめ)には
    しょせん勝てない 哀しさよ
(男女)なみだ なみだ なみだ分けあう
    夜明け前

《蛇足》 昭和49年(1974)リリース。
 石原裕次郎のデュエット曲で最大のヒットは牧村旬子と組んだ『銀座の恋の物語』ですが、それに続くのが浅丘ルリ子と歌った『夕陽の丘』とこの『別れの夜明け』でしょうか。
 八代亜紀とはこのあと、『夜のめぐり逢い』『ふたりの港町』『わかれ川』『なみだの宿』をデュエットしています。

 ポリティカル・コレクトネスが下火になったと思ったら、ジェンダー・フリーが出てきましたが、これも右寄りの風に吹かれて静かになりました。この2つのムーブメントは、あまり過激にならないうちに、ほどよく社会貢献をしたところで落ち着いたのは、大衆歌謡のためにはよかったかなと思います。

 運動が過激になっていたら、この歌の男が女を「おまえ」と呼び、女は男を「あなた」と呼んだり、女は男につくし、男は女を愛するといったあたりは、槍玉にあげられたかもしれません。テレサ・テン『愛人』の「私は待つ身の女でいいの」とか、都はるみ『大阪しぐれ』の「つくし足りない私が悪い」なども突っ込まれていたかも。
 演歌はジェンダー・フリーとは相性が悪いようです。

(二木紘三)

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コメント

「別れの朝」の大人バージョンのような曲ですが私には別れの朝のストーリーの方が感じ良く聞こえます。両方とも私には無縁な格好良い別れですが。

投稿: 海道 | 2013年8月24日 (土) 16時46分

 新しい曲が発表されるや、コメントがそれっとばかりに投稿されるのに、この曲は、まだお一人だけ。
私も社会人になって2年目くらいに出た曲でしたから、メロディは知っていましたが、歌詞にリアリティーがないというか、しらじらしい言葉の羅列のように思い、カラオケで歌ったことがありません。
「死ぬほどつくしてくれる女」は、たぶん絶滅したでしょうし、「なみだ なみだ なみだわけあう」は、臭ってくるほどクサイですね。「死ぬほどの愛があれば、世間に負けたりはしないでしょう」と思ったりもします。
 この歌の出る何年か前に「恋の奴隷」という恐ろしく時代錯誤的な歌が出ました。「あなた好みの女になりたい」と奥村チヨが悩ましげに歌うのには、大丈夫かなと心配しました。ウーマンリブ運動が盛んで、中ピ連の榎美沙子なんて人がいて、各地のミスコンテストが次々廃止されていたご時勢でした。
「男につくす女」を求め続けるのは、ニホンオオカミの存在をいまだに信じて、山中を彷徨する狩人に似ています。私も後ろの方からついて行く狩人の一人ですが・・。

投稿: 方解石 | 2013年10月28日 (月) 12時02分

 名解説「蛇足」の「おまえ」「あなた」の歌詞とジェンダーフリーの関係、おもしろいですね。
「蛇足」にしぼった話で恐縮ですが、一言、お許しください。
 たしかに男中心の歌詞は、今後、だんだん少なくなるかもしれませんね。女性の権利拡張の流れは続くでしょうから。
 しかし歌謡曲「浪速恋しぐれ」(桂春団次伝)に「芸のためなら女も泣かす それがどうした 文句があるか」とあります。
そのとおり、戦後女性が強くなったとかいいますが、男に「それがどうした 文句があるか」といえるほどの自信がなくなっただけのことではないかと思います。
 女の人は、春団次のような信念を持った男にはついてくるのではないかと、私の貧しい経験から、思いますが、いかがでしょうか。問題は男の側にありです。

投稿: 紅孔雀 | 2013年10月29日 (火) 00時08分

蛇足の「あなた」「おまえ」について私も考えさせられました。私は結婚以来、40年以上、何の抵抗も感じず、妻を「おまえ」と呼んできました。
 ある時、知人から「おまえ」という呼び方は見下すようだ、奥さんは平気か」と言われました。
 その時私は「おまえとは御前のことだから、丁寧語だ」と笑い飛ばしましたが、少し気になり妻にどう思ってきたか聞いてみました。おまえ、あなたが普通の言葉と思っていたので気にもしなかったとのことでした。
 こんなこともあり、「おまえ」という呼び方には関心を持ってきましたが、趣味の川柳で、名だたる人の句に「世の中でおまえとよぶはお前だけ」を見つけ、これまでのもやもやはふっとびました。
 いつまでも妻は「おまえ」でいてもらいたいと思います。

投稿: 伊勢の茜雲 | 2019年7月 9日 (火) 11時07分

「ジェンダーフリー」
の主張を聞いていると、男女の中性化をめざしているのかと思ってしまいます。
男女の間には、厳然とした違いがあります。(どちらが、上か下かではなく)。
 だからこそ、ひかれあい、求め合うのでしょう。
その違いの一断面を「演歌」という切り口で表現すれば、
『あなた、おまえ』となるんだろうと思います。
そんな「演歌」が好きか嫌いかは、また別のはなし。

投稿: MAEDA | 2019年7月12日 (金) 14時23分

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