愛のメロディ
(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo
唄:M.マゴマエフ、日本語詞:矢沢 保
1 ああこのメロディは ふたりのメロディ МЕЛОДИЯ Ты – моя мелодия, |
《蛇足》 1973年発表。日本語詞の題名は『愛のメロディ』ですが、原題はシンプルに『メロディ(Мелодия)』だけ。
作曲者は、『心さわぐ青春の歌』などで歌声運動/喫茶世代にはおなじみのアレクサンドラ・ニコライエヴナ・パフムートワ(Александра Николаевна Пахмутова)。1929年11月9日生まれで、クラシック系からポピュラーソング、映画音楽、童謡まで、幅広い分野で実績をあげてきました。
作詞者は、彼女の夫で、詩人・作詞家のニコライ・ニコラエヴィッチ・ドブロヌラヴォフ(Николай Николаевич Добронравов)。1928年11月22日生まれ。
2人は子どもは作らないと決めて1956年に結婚、以後数多くの作品を協働で作ってきました。そのなかには、かなりの数の体制翼賛的な作品が入っています。
これはしかし、しかたのないことでしょう。生まれたときからソヴィエト体制のなかで育ってきた2人には、それに疑問をもつ余地はほとんどなかっただろうし、疑問をもったとしても、体制に逆らうことは音楽活動ができなくなることを意味していましたから。
ところで、この曲の制作には、その前年、すなわち1972年に行われたミュンヘン・オリンピックが間接的に影響しています。パレスチナ武装組織「黒い九月」がイスラエルのアスリート11名を殺害したテロ事件により我々の記憶に強烈に刻まれているオリンピックです。
パフムートワとドブロヌラヴォフは、このオリンピックに派遣される選手団を讃え、激励する曲を委嘱されました。人気歌手で作詞・作曲もするムスリム・マゴマエフ(Муслиму Магомаеву)がそれを歌うことになりましたが、彼は、こういう曲調の歌は自分には合わない、といって抵抗しました。
実際、彼が歌ってきたのは、ロマンチックな曲が過半だったようです。
吹き込みの期限が迫っていたので、2人は一生懸命彼を説得し、歌ってくれたら、お返しとして彼に合う愛の歌を全力で作るといって、ついに承諾させました。こうしてできたのが、『愛のメロディ』というわけです。
しかし、曲作りは難航しました。流麗でロマンチックな歌曲ですが、メロディが個性的というか、癖があるのです。1小節分以上伸ばすところがあるかと思うと、短く刻むところもあり、無音の小節があったりします。パフムートワ自身、これに合う歌詞がはたしてできるだろうかと懸念したそうです。
ドブロヌラヴォフは、1年近く苦吟したのち、7聯からなる詞を作り上げました。それが、去っていった恋人に呼びかける上の歌詞です。
日本ではほとんど忘れられていますが、コーラス・グループのなかには歌っているところもあるようです。
余談ですが、ミュンヘン・オリンピックでの金メダル獲得数は、1位がソ連で50個、2位アメリカ33個、3位東ドイツ20個、4位は西ドイツと日本で13個。前回のメキシコ・オリンピックでも、ソ連と東ドイツの強さが話題になりましたが、ミュンヘンではさらに驚くべき強さを示しました。
みんな怪しみましたが、結局両国とも国家ぐるみでドーピングをしていたわけですね。
(二木紘三)
コメント
初めて聴くメロディです。なぜだか昔観た「死刑台のエレベーター」のジャンヌ・モローが雨の中を彷徨う映像を思い出しました。『蛇足』に「・・・かなりの数の体制翼賛的な作品・・・」とありますが、この中でこの曲が生まれたのは驚きです。曲を聴いていてトランペットが使われているのかなと思いました。「死刑台のエレベーター」のテーマ曲のトランペットと重なりました。いいメロディですね。歌も聴いてみたくyouTubeをみましたがありませんでした。どのくらい歌い辛いのか聴いてみたいですね。
投稿: konoha | 2018年10月18日 (木) 19時17分
きれいなメロディですが、こんな横文字は苦手です。
у が無いので違うのかな?
https://www.youtube.com/watch?v=3ItEIc-Xpfw
投稿: なち | 2018年10月18日 (木) 22時19分
なちさま
ありがとうございます。早速https://・・・を開いてみたのですが、ヒットしませんでした。残念でしたが、ありがとうございました。再度なんとか試みてみます。
投稿: konoha | 2018年10月18日 (木) 22時38分
なちさま
おはようございます。再度検索しました。大文字と小文字の打ち違いでした。ムスリム・マゴマエフの歌はとてもドラマチックで映画音楽にもなりますね。フランス的な曲ですね。ジャンヌ.モローの社長夫人フロランスが、エレベーターに閉じ込められてしまった不倫関係にあったジュリアンを心配して、雨のパリの街を彷徨う姿にムスリム・マゴマエフの歌声が見事に重なります。なちさまご紹介ありがとうございます。
動画の中の建物の内部があのソ連時代の雰囲気ですね。あの中でフランス風の曲が流れていくのに不思議な思いがしました。
投稿: konoha | 2018年10月19日 (金) 06時33分
初めて聞く曲ですが、歌詞を読みながら、じっくりと聞いているうちに心にじんわりと沁みこんでくる切ないような感情に襲われます。確かに、歌うには難しい曲ですが、メロデイーは《流麗でロマンチック》ですね。
なち様のお陰で、YouTubeでも じっくり聞くことが出来ました。ありがとうございました。
作曲者が、あの「心さわぐ青春の歌」と同一人物というのも、なんだか分かるような気がいたします。
「心さわぐ青春の歌」は、私たちの青春時代の応援歌みたいなもので、このサイトでもUPされている「エルベ川」とともに、名古屋のうたごえ喫茶「コーラス」で、思い切り青春を謳歌した懐かしい歌です。
毎週、グリーンエコー(混声合唱団:当時≒150人)の練習を終えて帰る途中、仲間の団員5~6人で連れもって道場荒らしよろしく 歌声喫茶「コーラス」の簡易ステージに立ち、片っ端から混声4部で歌いまくり、若者達の度肝を抜き、意気揚々と引き揚げたものです。
「愛のメロデイー」は、1973年の発表ですから、その当時の歌集には当然なかったでしょうし、もしあったとしても、歌いこなすのは容易ではなかったと思いますね。
今日は、これから六甲山荘に上ります。山頂の気温はおそらく14~15℃くらいでしょうが、青春歌謡を歌いまくりながら・・・。
投稿: あこがれ | 2018年10月20日 (土) 11時20分