小ぎつね
(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo
作詞:ドイツ民謡、作詞・編曲:E.アンシュッツ
日本語詞:勝 承夫
1 小ぎつねコンコン 山の中 山の中 2 小ぎつねコンコン 冬の山 冬の山 3 小ぎつねコンコン 穴の中 穴の中
1. Fuchs, du hast die Gans gestohlen 2. Seine große lange Flinte 3. Liebes Füchslein lass dir raten |
2022年の年賀状用に描いたもの。歌詞との関連は、狐がテーマという点だけ。
《蛇足》 日本の唱歌だと思われていますが、原曲はドイツの童謡。ドイツ語圏では、知らない子どもはいないというほど人気のある童謡です。
教師であるとともに、詩人・作曲家でオルガニストだったエルンスト・アンシュッツ(Ernst Gebhard Salomon Anschütz 1780-1861)が、1824年にドイツの古い民謡を編曲し、歌詞をつけて発表したもの。
発表時のタイトルは『警告(Warnung)』でしたが、一般には1番の最初の1行が曲の呼び名になっています。
歌詞は、おおむね次のような内容:
こらキツネ、ガチョウを盗んだな。返せよ。返さなければ猟師に鉄砲で撃たれるぞ。
猟師はでかく長い鉄砲で、おまえを撃つぞ。おまえ赤く染まって死んでしまうぞ。
小ギツネちゃん、泥棒になるなよ。おまえにガチョウの焼き肉は必要ない。ネズミで満足しておけ。
狩猟民族と農耕民族の違いとでもいいましょうか。勝承夫(かつ・よしお)のゆったりした歌詞とは、ずいぶん雰囲気が違います。
アンシュッツは、盗みはだめだという教訓的な趣旨でこの歌詞を作ったようですが、日本では、幼い子どもを怖がらせるような歌は、あまり好まれません。
なお、アンシュッツは、同じ1824年に、クリスマス・キャロルとして広く歌われている『樅の木(O Tannenbaum)』を作っています。
勝承夫の歌詞で歌われるようになったのは、昭和22年(1947)から。最後の国定教科書の1つとして発行された『三年生の音楽』に掲載されました。
国定教科書とは、執筆・編集を文部省(当時)が行い,全国の学校で一律に使用させた教科書。最後の国定教科書は、国定ではあったものの、新憲法下の新しい学習指導要領に沿って編纂されました。
『小ぎつね』はかなり長く教科書に載ったようですが、今も音楽の授業で使われているかどうかはわかりません。
勝承夫は、『故郷の人々』『灯台守』『夜汽車』『歌の町』などのほか、膨大な数の小・中・高校・大学の校歌を作詞しています。
(二木紘三)
コメント
令和3年最後の日、「小ぎつね」の童謡を聴き、遠くなった故郷を思い出しました。70年位前でしょうか。
田んぼや段々畑、竹林の間を縫うように細い砂利道。
藁屋根家の庭の片隅に小さなニワトリ小屋。
ニワトリ小屋から毎朝 弟は卵を持ってくる。
ある日 弟は泣きながら家に。
ニワトリ小屋は きつねに襲われていた。
探しに行ったらニワトリの首がなくなっていた。
> こらキツネ、ニワトリを盗んだな。返せ。
投稿: けん(健9 | 2021年12月31日 (金) 08時00分
明けましておめでとうございます。
『小ぎつね』は、学校では習いませんでしたが(学年がずれていたからでしょうか)、よく知っている、懐かしい歌です。
歌詞3番最終行の、♪小くびをかしげて かんがえる♪の可愛らしい表現が、私の心を捉えます。
なお、「スーパー大辞林」によれば、”こくびをかしげる”とは、”不審に思ったり、不思議に思ったりしてちょっと首をかたむける”とあります。
少し逸れますが、私の愛唱歌に、これに類するフレーズが登場する歌があることを思い出しました。
『東京の花売娘』(佐々詩生 作詞、上原げんと 作曲、岡晴夫 唄 S21)
<歌詞2番>
夢を見るよに 花かご抱いて
花を召しませ 召しませ花を
小首かしげりゃ 広重えがく
月もあらたな 春の宵
あゝ東京の 花売娘
花売娘の、小首をかしげる、可愛らしい所作が浮かび上がってくるようです。
投稿: yasushi | 2022年1月 1日 (土) 16時00分
あけましておめでとうございます。
「最近の記事」で『子ぎつね』とあり、可愛いタイトルで、はて?どんな曲なんだろうと思いました。早速聴いて懐かしさが満ちてきました。小学校で習ったのか、どこで覚えたのかは定かではありません。庭の陽だまりで妹とおままごとをして遊んだことが懐かしく思い出されました。
投稿: konoha | 2022年1月 4日 (火) 20時27分
この童心にあふれた歌を聴いていますと、子供はどうして動物が好きなのだろうと不思議になってきます。色々な見方があると思いますが、動物は、いのちが、す(素)の姿で出るのが一つの理由ではと思います。人間は、特におとなは、気持ちの表現が複雑すぎたり、損得を考える知恵があったり、地位にこだわったりします。また色々規則があって、例えば往来でうんこをしたりしません。すのいのちが見えにくいと思います。動物の、すのいのちの持つ輝きが、子供の心を動かすのではと思います。
投稿: kazu | 2022年1月 4日 (火) 21時51分
「小ぎつね」この曲はてっきり日本の童謡だとばかり思っていましたので、原曲がドイツの民謡を編曲し、歌詞をつけたドイツの童謡だったこと、しかも発表時のタイトルが「警告」だったことを知り、私はそれが本当に意外でした!
幼いころに過ごした私の故郷九州の佐賀県の田舎は、山に囲まれた田畑だらけの地域でしたが、北部の地方に生息するというキツネを見かけることはさすがにありませんでした。
ただ、ここで発表時のタイトル「警告」の歌詞を見ながら、私は幼いころの悲しい体験を想い出しました。キツネはいませんでしたが、それでも私の地域ではイタチが時々出没しました。
私が小学生のころ、私が世話係で毎日可愛がりながら我が家の軒先の小屋で飼っていた二羽のうさぎが、ある日の夜イタチに襲われて、二羽とも小屋の中で亡くなっていたことがありました。早朝にそれを発見した時のショックは今も忘れられません。
しかし、ドイツでは「警告」だったというこの曲が、勝承夫氏の朗らかでほのぼのとした日本語の詩によって、みんなに愛され親しまれる童謡になったことは本当に幸いで、私はそのことを嬉しく思います。
「小ぎつね」私はこの唄を学校で習ったという記憶はありませんが、ここで見た1番から3番までの歌詞を、私はすべて覚えていたので、もしかしたら小学低学年の時に学校で習っていたのかも知れません。
投稿: 芳勝 | 2022年1月23日 (日) 16時21分