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2023年6月25日 (日)

おもいで(布施明)

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


作詞:水島 哲、作曲:平尾昌晃、唄:布施 明

1 貴女(あなた)と歩いた あの道に
  夜霧がつめたく 流れてた
  何にもいわずに うつむいて
  涙にぬれてた あの人よ
  さよなら初恋 もう二度とは
  かえらぬ貴女の おもいでを
  淋しくせつなく 今日もまた
  呼んでみたのさ 霧の中

2 貴女のやさしい ほほえみも
  夜霧の向こうに 消えたのさ
  星降るなぎさの くちづけも
  今では悲しく 散った夢
  さよなら初恋 もう一度
  かえらぬ貴女と 知りながら
  あの日の言葉が 忘られず
  呼んでみたのさ 霧の中
  呼んでみたのさ 霧の中

《蛇足》 昭和41年(1966)3月1日、キングレコードより発売。
 B面は『悲しき旅路』。

 布施明は、声よし、唄よし(正統的歌唱)、顔よしと3拍子そろっており、とくに女性に人気がありました。
 『霧の摩周湖』と『シクラメンのかほり』が代表作ということになりましょうか。

 この歌には夜霧、霧が出てきますが、これはアカシア、白樺、リンドウ、鈴蘭、雨、湖などと並んで、昭和歌謡の必須のアイテムですね。とくに夜霧や霧が歌詞に入っていると、俄然ロマンチックになります。

 そこでタイトルや歌詞に夜霧、霧が入っている曲を、私のサイトからいくつか拾い出してみました(順不同)

緑の地平線(霧の都の夜は更けて)
夜霧のブルース(青い夜霧に灯影が赤い)
港が見える丘(霧の夜でした)
哀愁の街に霧が降る(泪色した霧がきょうも降る)
夜霧の第二国道浮かぶ夜霧のああ第二国道)
泣かないで(霧が流れるビルの影)
東京の灯よいつまでも(雨の外苑夜霧の日比谷)
俺は待ってるぜ(霧が流れてむせぶよな波止場)
霧笛が俺を呼んでいる(霧の波止場に帰って来たが) 
長崎の女(君と別れた霧の夜)
赤坂の夜は更けて(夜霧が流れる一つ木あたり) 
霧の中の少女(あわれ少女よ霧の中の少女) 
夜霧よ今夜も有難う(しのび会う恋をつつむ夜霧よ)

 ざっと見た限りでは、夜霧や霧がよく出てくるのは、昭和20年代、30年代に発表された曲がほとんど。
 どういうわけか、戦前の曲や、戦後でも昭和40年代後半以降に作られた曲には、夜霧、霧はほとんど使われていないようです。
 また、どの時代でも、抒情歌とされるジャンルの歌には、夜霧、霧を使った歌詞はほとんど見つかりません。NHKのラジオ歌謡で、あまりヒットしなかった曲には、夜霧、霧を使ったものがあるかもしれません。

 私が子ども時代(昭和20年代)を過ごした信州の田舎では、秋になると、朝霧がよく出ました。
 東京に来てから、霧を"経験"したのは1度だけ。昭和39年の秋、旧中野刑務所の横を彼女と歩いているとき、急に濃い霧が湧き出し、刑務所の壁も見えなくなって、ロマンチックな雰囲気になりました。
後年、彼女にその話をしたところ、彼女は全然覚えていませんでした。
 まあ、記憶しておくほどのことでもありませんが……。

(二木紘三)

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コメント

懐かしい歌のUP有難うございます。外人を射止めたのだから良いマスクなんでしょうが人好き好き何でしょうが私の好みはべつです。これはひがみではありません、ただのヤッカミです。

投稿: 海道 | 2023年6月26日 (月) 14時49分

 私が婚約時代流行っていました。平尾昌晃らしいポップっぽいロマンティックな曲で、また布施明が良かったですね。横須賀線で彼女とそのすぐ上の兄と私の3人で乗っていましたが、何故かこの曲を3人で歌って帰った記憶が思い出されます。

投稿: 吟二 | 2023年6月26日 (月) 15時56分

(追伸)
このことを家内に覚えているか聞いたところ、当然のことながらうちもまったく記憶がありませんでした。

投稿: 吟二 | 2023年6月26日 (月) 16時01分

 布施明さんが唄われている♪おもいで は、
平尾昌章さんが先に唄われたと、ラジオだったかテレビで知りました。
「売れなかったから布施明さんに唄ってもらった」と言ってました。

 きっと何処かに書いてある筈と思って探していたら歌が聴けました。
昭和36年のようです。
https://www.youtube.com/watch?v=OLotu5GNMBE

投稿: なち | 2023年6月26日 (月) 21時16分

この曲はとても好きです。でも2番の歌詞を聴くと、今でも若い時の失恋の傷が痛みます。
それは、
“あの日の言葉が忘られず”
というくだりです。
正直なところ、若い時に交際した少女の心変わり(?)には、苦しみました。
想い起せば、大学1回生のクラスの親しかった友人も、失恋で苦しんでいました。

投稿: Yoshi | 2023年6月26日 (月) 22時06分

二木オーケストラ演奏で、この歌を聴いてみましたら、知らない歌でした。
この歌が出た昭和41年といえば、私が社会人になって5年目。与えられた仕事をこなすのに精一杯で、新しい歌謡曲を楽しむ余裕などなかったのだと思います。

《蛇足》には、この歌のように夜霧、霧が出てくる歌が10数曲挙げられており、”ざっと見た限りでは、夜霧や霧がよく出てくるのは、昭和20年代、30年代に発表された曲がほとんど。 ”と、二木先生は述べておられます。
これらの年代の歌謡曲が好きな私にとって、なるほどと頷くとともに、他にもいろいろあったはずと、日頃聴いたり、口遊んだりする歌謡曲の中から、10曲挙げてみました。
①『泪の乾杯』(東辰三 作詞・作曲、竹山逸郎 唄 S22)
 ♪今宵また行く 霧の中 沖に出船の 沖に出船の…♪(歌詞3番)
②『緑の牧場』(松坂直美 作詞、 江口夜詩 作曲、津村謙 唄 S23)
 ♪朝だ霧が晴れたよ 緑の牧場…♪(歌詞1番)
③『港ヨコハマ花売娘』(矢野亮 作詞、上原げんと 作曲、岡晴夫 唄 S24 
 ♪ミルク色した 波止場の霧に むせび泣いてる 出船の汽笛…♪(歌詞3番)
④『白い船のいる港』(東辰三 作詞・作曲、平野愛子 唄 S25) 
 ♪霧の港 白い船 今朝は もう見えぬ…♪(歌詞3番)
⑤『東京の椿姫』(東条寿三郎 作詞、渡久地政信 作曲、津村謙 唄 S26)
 ♪夜霧の町に つつまれて…♪(歌詞2番)
⑥『赤いランプの終列車』(大倉芳郎 作詞、江口夜詩 作曲、春日八郎 唄 S27)
 ♪白い夜霧の 灯りにぬれて…♪(歌詞1番)
⑦『ひばりのマドロスさん』(石本美由起 作詞、上原げんと 作曲、美空ひばり 唄 S29)
 ♪白い夜霧の 流れる波止場…♪(歌詞1番)
⑧『高原の宿』(高橋掬太郎 作詞、林伊佐緒 作曲・唄 S30)
 ♪風にもだえて 夜霧にぬれて 丘のりんどう 何なげく…♪(歌詞2番)
⑨『ハンドル人生』(高野公男 作詞、船村徹 作曲、若原一郎 唄 S30)
 ♪淋しかったら 口笛で 霧の東京を とぶんだよ♪(歌詞3番)
⑩『大阪の人』(佐伯孝夫 作詞、吉田正 作曲、三浦洸一 唄 S33)
 ♪霧が流れる 御堂筋 君待てど君は来ず…♪(歌詞1番)
これらのほかに、『月よりの使者』(S24)、『水色のワルツ』(S25)、『上海帰りのリル』(S26)などにもあり、夜霧、霧が出てくる歌が多いことに驚かされます。

投稿: yasushi | 2023年6月28日 (水) 15時39分

 霧の付く歌で私の一番好きな歌を一つ追加します。
山百合の花 
  西沢爽:作詞  米山正夫:作曲      歌: 岡本敦郎

霧が降る山影の 小さな駅に
あの夜咲いてた さみしいはなよ
いとしのわが子に 別れて帰る
母の姿か 山百合の花

唯一人信濃路の  山ふところに
母の名を呼ぶ  涙の小鳩
いとしさあふれて ほほすりよせりゃ
ほほにむせぶよ 山百合の花

流れ雲はるばると 都の空に
運べ切ない 心の花を
悲しいさだめに 泣いてる母の
夢に映せよ 山百合の花

投稿: 北団地 | 2023年6月28日 (水) 20時11分

「おもいで」ここでメロディを聴きながら私が今懐かしく想い出すのは、当時私は小学六年生でしたが『・・・呼んでみたのさ 霧の中・・・』と、この最後のフレーズをよく口遊んでいたことです!

布施明の歌う姿をモノクロのテレビ画面で初めて見た時に、私が即座に感じたのは、当時歌手御三家と言われていた、橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦・とはややタイプの違う、本格的歌手というイメージを持った覚えがあります。私には今でもそんな記憶が残っています。
短髪の七三横分のヘヤースタイルがとても似合っていて、もしかしたらハーフ系かもと思えるようなハンサムな顔と感情を込めて歌うその姿にはどこか新鮮さを覚えたものです。

「おもいで」「霧の摩周湖」「恋」いずれの曲も水島哲・平尾昌晃コンビによる素敵な作品ですが、当時の懐かしさもあり私は久々にyoutubeにてこの三曲を心行くまで聴いてみました。そんな中で私の胸の中に仄かに芽生えてくるのは、布施明が歌ってヒットしたこの作品の『曲風と歌唱法』を私なりに自由に思い描くとき、当時は現役の歌手でもあった平尾昌晃本人こそが、実はこれらの曲を最も歌いたかったのではなかったのか、長年が経った今、私には妙にそのように思えてしまうのです。

投稿: 芳勝 | 2023年7月 1日 (土) 14時57分

 ♪おもいで を平尾昌章さんが先に唄われたと知ったのは、
下のページよりずーっと昔です。
芳勝さんの書かれていることが載っています。
https://www.youtube.com/watch?v=xP61OVk3w_8

投稿: なち | 2023年7月 1日 (土) 19時30分

なち様

この度の貴重な動画大変有難く視聴させていただきました!

「おもいで」に纏わる平尾昌晃の複雑な胸中、そして「霧の摩周湖」が誕生したその経緯等を詳細に知ることができ、私は感激しました。
「おもいで」をはじめ当時の布施明の歌には平尾昌晃の深い思いが込められていたのですね。今回の動画でそのことが実際に解り、私はとても嬉しく思いました。心より感謝いたします。

投稿: 芳勝 | 2023年7月 1日 (土) 22時26分

霧の歌追加です

牧場の朝 このブログにあるので詳細は省略します

 ♪ただ一面に立ちこめた 牧場の朝の霧の海

夜霧の空の終着港(エアー・ターミナル)  詞:佐伯孝夫 曲: 吉田正 歌:和田弘とマヒナスターズ
 ♪白い夜霧の空の終着港

あゝ青森  詞:下條ひでと 曲:白石 十四男 歌: 平川幸夫
 ♪ 霧が今夜もあの日のように
  タイトルを五十音順に並べると多分最初に来ます

投稿: Hurry | 2023年8月 1日 (火) 22時46分

 2023年7月の芳勝さんとなちさんのやり取りを見て、私も「霧の摩周湖」が出来た秘話を教えてもらったアドレスで見ました。名曲ができる時って、いろいろなパターンがあると思いますが、このエピソードは深く私の心に刺さりました。作詞家と作曲家が互いにデータをもらって、わが家で曲想を練るということもあるでしょうが、この曲のように作詞家・作曲家・歌手が一堂に会して、酒を呑みながらその瞬間瞬間にひらめいたイメージを書き留め、歌う、そうして作り上げていくやり方もあるのですね。そういえば、「天城越え」を作った作詞家と作曲家も同じようなエピソードを話されていたし、吉幾三もそんなエピソードを語っていたと思います。
 一曲を創り上げる時、その道一線のプロたちの感性がぶつかり合う時、名曲は生まれるんだなあと思いました。やはり一流同士が集まると凡人たちとは違う世界が生まれるんですね。でも、凡人だって時々光りますからね。悲観することはないと思いますが…。

投稿: 吟二 | 2023年8月 3日 (木) 23時03分

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