2024年12月31日 (火)

田んぼの中の一軒家

(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo


イギリス民謡、日本語詞:高田三九三

1 たんぼの中のお百姓家
  たんぼの中の一軒家

2 お百姓は嫁さんとる
  たんぼの中の一軒家

3 お嫁さんは子どもを生む
  たんぼの中の一軒家

4 その子どもにばあやが来る
  たんぼの中の一軒家

5 そのばあやは子犬をかう
  たんぼの中の一軒家

6 その子犬は猫をかまう
  たんぼの中の一軒家

7 その猫はねずみを取る
  たんぼの中の一軒家

8 そのねずみはチーズを取る
  たんぼの中の一軒家

9 そのチーズはなんにもしない
  たんぼの中の一軒家

 The Farmer in the Dell

1. The farmer in the dell. 
   The farmer in the dell.
   Hi-ho, the derry-o!
   The farmer in the dell.

2. The farmer takes a wife.
   The farmer takes a wife.
   Hi-ho, the derry-o!
   The farmer takes a wife.

3. The wife takes a child.
   The wife takes a child.
   Hi-ho, the derry-o!
   The wife takes a child.

4. The child takes a nurse.
   The child takes a nurse.
   Hi-ho, the derry-o!
   The child takes a nurse.

5. The nurse takes a cow.
   The nurse takes a cow.
   Hi-ho, the derry-o!
   The nurse takes a cow.

6. The cow takes a dog.
   The cow takes a dog.
   Hi-ho, the derry-o!
   The cow takes a dog.

7. The dog takes a cat.
   The dog takes a cat.
   Hi-ho, the derry-o!
   The dog takes a cat.

8. The cat takes the mouse.
   The cat takes the mouse.
   Hi-ho, the derry-o!
   The cat takes the mouse.

9. The mouse takes the cheese.
   The mouse takes the cheese.
   Hi-ho, the derry-o!
   The mouse takes the cheese.

10. The cheese stands alone.
   The cheese stands alone.
   Hi-ho, the derry-o!
   The cheese stands alone.

(注)mouseをratとしているバージョンもある

2025
2025年の年賀状用に作成。手描きで色付けはPhotopea使用
。AIは使っていません。
タイトル下の正方形の絵はAI使用。

《蛇足》 イギリス伝統の童謡・民謡・遊戯歌であるマザーグースのなかでもよく知られた曲の1つ。
 とはいうものの、起源はどうやらドイツのようです。

 『ラウド・フォークソング・インデックス(Roud Folk Song Index)』という民謡の事典があります。ロンドンの元司書、スティーブ・ラウドが収集・編集した約2万5000曲のデータベースで、英語の文献的裏付けのある曲だけを集めたとされていますから、信頼度はかなり高そうです。

 それによると、ドイツの『農夫が馬車で森へ行った(Es fuhr ein Bau'r ins Holz)』という求愛ゲームソングについての1826年の記述が最も古い記録となっています。

 この歌がドイツ移民によってアメリカに持ち込まれ、そこからカナダ、オランダ、イギリス、フランス、スウェーデン、オーストラリアなどに伝えられたとされています。
 日本には、おそらくイギリスから伝わってきたので、イギリス民謡としておいて問題はないでしょう。

 日本語詞の作詞者は、マンドローネ奏者の高田三九三(たかだ・さくぞう、M39- H13)で、童謡などの作詞もしていますが、英米民謡の訳詞者として有名です。
 アメリカ民謡の『十人のインディアン』『メリーさんのひつじ』『スイカの名産地』、イギリス民謡の『ロンドン橋』『田んぼの中の一軒家』は、童謡としてよく歌われています。

 原詞のタイトルは『谷間の農夫(The Farmer in the Dell)』で、農夫が妻を娶り、妻が赤ん坊を生み、赤ん坊にばあやがつき、ばあやが犬を飼い……と続いていくリレー歌。高田三九三は、これをみごとに日本の農家に置き換えています。

 しかし、チーズはないでしょう。彼がこの日本語詞を作った時代には、酪農家を除いて、ほとんどの農家ではチーズを食べる習慣はなかったはず。
 私は、ちょっと
戦前に足が引っかかった戦後派で、農家の生まれですが、チーズは物語で知っていただけで、見たこともありませんでした。実際に食べたのは、大学を卒業して就職してから何年目かのことです。

 生まれも育ちも東京の連れ合いは、子どものときから食べていたといいますから、大都会と農村とでは、生活習慣に大きな違いがあった時代です。
 田んぼの中の一軒家なら、チーズではなく、豆腐かお餅にしてほしかったなあ。魚の干物とか干し大根、凍み豆腐とか(音数が合わないか)

 それ以外は快調な日本語詞で、さすが名人という感じです。

 原曲の『農夫が馬車で森へ行った』はゲームソングでしたが、The Farmer in the Dell》も遊戯歌です。遊び方は次のようにします。

 歌の聯数が9だとすると、9人のうち8人が手を繋いで円陣を作り、もう1人が農夫役になって、円陣の中心に立ちます。まず全員で1番を歌い、次に農夫役が奥さん役を選んで円陣の中に入れます。次に2番を歌い、歌い終わったら、奥さん役が赤ん坊役を選んで輪の中に入れ、3番を歌います。
 これを続けていくと、最後にチーズ役が残るわけですが、次の回ではその子が農夫役になります。

 この遊び方はイギリスのもので、日本ではほとんど行われないようです。日本の代表的な遊戯歌は、『かごめかごめ』とか、『とおりゃんせ』『花いちもんめ』あたりになりましょうか。

(二木紘三)

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