田んぼの中の一軒家
(C)Arranged by FUTATSUGI Kozo
イギリス民謡、日本語詞:高田三九三
1 たんぼの中のお百姓家 2 お百姓は嫁さんとる 3 お嫁さんは子どもを生む 4 その子どもにばあやが来る 5 そのばあやは子犬をかう 6 その子犬は猫をかまう 7 その猫はねずみを取る 8 そのねずみはチーズを取る 9 そのチーズはなんにもしない The Farmer in the Dell 1. The farmer in the dell. 2. The farmer takes a wife. 3. The wife takes a child. 4. The child takes a nurse. 5. The nurse takes a cow. 6. The cow takes a dog. 7. The dog takes a cat. 8. The cat takes the mouse. 9. The mouse takes the cheese. 10. The cheese stands alone. (注)mouseをratとしているバージョンもある。 |
2025年の年賀状用に作成。手描きで色付けはPhotopea使用。AIは使っていません。
タイトル下の正方形の絵はAI使用。
《蛇足》 イギリス伝統の童謡・民謡・遊戯歌であるマザーグースのなかでもよく知られた曲の1つ。
とはいうものの、起源はどうやらドイツのようです。
『ラウド・フォークソング・インデックス(Roud Folk Song Index)』という民謡の事典があります。ロンドンの元司書、スティーブ・ラウドが収集・編集した約2万5000曲のデータベースで、英語の文献的裏付けのある曲だけを集めたとされていますから、信頼度はかなり高そうです。
それによると、ドイツの『農夫が馬車で森へ行った(Es fuhr ein Bau'r ins Holz)』という求愛ゲームソングについての1826年の記述が最も古い記録となっています。
この歌がドイツ移民によってアメリカに持ち込まれ、そこからカナダ、オランダ、イギリス、フランス、スウェーデン、オーストラリアなどに伝えられたとされています。
日本には、おそらくイギリスから伝わってきたので、イギリス民謡としておいて問題はないでしょう。
日本語詞の作詞者は、マンドローネ奏者の高田三九三(たかだ・さくぞう、M39- H13)で、童謡などの作詞もしていますが、英米民謡の訳詞者として有名です。
アメリカ民謡の『十人のインディアン』『メリーさんのひつじ』『スイカの名産地』、イギリス民謡の『ロンドン橋』『田んぼの中の一軒家』は、童謡としてよく歌われています。
原詞のタイトルは『谷間の農夫(The Farmer in the Dell)』で、農夫が妻を娶り、妻が赤ん坊を生み、赤ん坊にばあやがつき、ばあやが犬を飼い……と続いていくリレー歌。高田三九三は、これをみごとに日本の農家に置き換えています。
しかし、チーズはないでしょう。彼がこの日本語詞を作った時代には、酪農家を除いて、ほとんどの農家ではチーズを食べる習慣はなかったはず。
私は、ちょっと戦前に足が引っかかった戦後派で、農家の生まれですが、チーズは物語で知っていただけで、見たこともありませんでした。実際に食べたのは、大学を卒業して就職してから何年目かのことです。
生まれも育ちも東京の連れ合いは、子どものときから食べていたといいますから、大都会と農村とでは、生活習慣に大きな違いがあった時代です。
田んぼの中の一軒家なら、チーズではなく、豆腐かお餅にしてほしかったなあ。魚の干物とか干し大根、凍み豆腐とか(音数が合わないか)。
それ以外は快調な日本語詞で、さすが名人という感じです。
原曲の『農夫が馬車で森へ行った』はゲームソングでしたが、《The Farmer in the Dell》も遊戯歌です。遊び方は次のようにします。
歌の聯数が9だとすると、9人のうち8人が手を繋いで円陣を作り、もう1人が農夫役になって、円陣の中心に立ちます。まず全員で1番を歌い、次に農夫役が奥さん役を選んで円陣の中に入れます。次に2番を歌い、歌い終わったら、奥さん役が赤ん坊役を選んで輪の中に入れ、3番を歌います。
これを続けていくと、最後にチーズ役が残るわけですが、次の回ではその子が農夫役になります。
この遊び方はイギリスのもので、日本ではほとんど行われないようです。日本の代表的な遊戯歌は、『かごめかごめ』とか、『とおりゃんせ』『花いちもんめ』あたりになりましょうか。
(二木紘三)
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